[ 画像 ] 今週の音楽記事から 音楽ジャーナリストの眼 毎週月曜更新

新聞記事

読売新聞│配信日:2018年12月24日│配信テーマ:Jポップ  

[評]椎名林檎公演 エンタ追究 20年の進化


 デビュー20周年を迎えた椎名林檎は平成30年の今年、40歳になった。色々とキリのいい年を記念したツアーを国内4か所で行った。その名も「(生)林檎博’18 —不惑の余裕—」。巻き舌の歌唱、拡声機で叫ぶパフォーマンスで世に出たロックスターは、今や全方位型エンターテイナー。歌とバンド演奏を中心に、映像、ダンス、オーケストラとあらゆる要素が盛り込まれ、ライブというよりショー。まさに博覧会だった。
 冒頭からド迫力。発表当時、看護師姿で歌うミュージックビデオが話題を集めた「本能」で、ゲストのMummy—Dが披露するラップが最高潮に達した瞬間、当時と同じく派手にガラスを割ってステージに“降臨”。王冠にギラギラ光る金のガウン。その立ち振る舞いはまさに女王だ。
 歓楽街のネオンを模した映像を背に歌う初期の名曲「歌舞伎町の女王」は、20年前の若き女性のそれよりも、つやっぽさも説得力も、全てが上回っていた。オペラのように劇的な「人生は夢だらけ」は、まるでクイーンのフレディ・マーキュリー。ロックンロール調にアレンジしたフィンガー5の「個人授業」、アニメ「さすがの猿飛」のオープニング「恋の呪文はスキトキメキトキス」と、カバー曲の選曲も予想を裏切る。
 ほとんど話さず、歌唱に集中する筋肉質な内容だったが、終盤、「20年、この名前でやり続けるとは思わなかった。もっとぽつねんとしていると思いました。感無量です」とつぶやくように語った。確かに20年前、あの強烈な個性を放つ存在がここまで大衆に受け入れられることを想像した人は、どれだけいただろうか。
 もちろんそれは、音楽家として自身も予想していなかったであろうほどの進化を遂げたから。2時間に満たない公演はそのジェットコースターのような展開から、体感としては一瞬だった。娯楽とは何かということを追究し続けた歌い手の集大成を見た。(鶴田裕介)
 ——11月22日、さいたまスーパーアリーナ。

読売新聞2018年12月13日読売新聞記事(1版)掲載 執筆記者:鶴田裕介

Jポップ   のテーマを含む関連記事