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読売新聞│配信日:2018年12月3日│配信テーマ:その他  

YMO結成40周年 テクノが音楽界変えた


 ◇週刊エンタメ
 日本のみならず世界で活躍したイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)。今年は結成40周年にあたり、編集盤などがリリースされている。音楽界に大きな足跡を残したYMOの歩みを振り返った。(桜井学)
 ■世界進出へ
 YMOは、日本語ロックの先駆けとされるバンド、はっぴいえんどなどで活躍した細野晴臣が、海外でも話題となったサディスティック・ミカ・バンドで成功した高橋幸宏、東京芸大で学びスタジオミュージシャンとして知られていた坂本龍一に声をかけて、1978年に結成。細野には、米国の音楽家、マーティン・デニーの曲をコンピューターを使ってディスコ風にアレンジして世界で売る、という構想があったという。
 YMOを世に送り出したアルファレコードを設立した作曲家の村井邦彦は「細野君に対する絶対的な信頼があった」と振り返る。細野はそれまで村井が携わってきた荒井由実らの作品に参加しており、「プロデューサーとして好きなレコードを作って」と村井が依頼。それがシンセサイザーを駆使したYMOの初アルバム「イエロー・マジック・オーケストラ」につながったのだ。
 しかしテレビゲームの音を模したサウンドで始まるアルバムは、セールス面で苦戦した。「それまでにない音楽だから、どういうカテゴリーに入れていいか、レコード屋さんも困っちゃう。ロックでもジャズでもないし」
 そこへ好機が訪れた。アルファが契約していた米国のレーベル、A&Mがこの作品を気に入り、海外での発売が決まったのだ。さらに米国のバンド、チューブスの前座としてロサンゼルス公演の話が持ち上がった。村井はその費用を捻出。ステージは大いに盛り上がり、その様子が日本でも報じられるとYMOに対する関心が高まった。
 2作目の「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」は、「ライディーン」などキャッチーな楽曲を収録。その音楽はテクノポップなどと呼ばれ、国内でもYMO旋風を巻き起こした。
 ■様々な影響
 YMOに詳しい編集者、ライターの吉村栄一は「歌謡曲全盛の時代にそれと異質なものを作って、ヒットさせたのが最大の功績。こういう音楽があることを全国津々浦々、小学生にまで伝えた」と語る。毒のあるコントを交えた「増殖」、実験的ポップの金字塔「BGM」「テクノデリック」——。彼らは常に新しい音楽を提示した。シングル「君に、胸キュン。」では「テクノ歌謡」と言える作風に取り組んだ。細野は松田聖子や中森明菜らにも楽曲を提供。アイドルソングにテクノの感覚を持ち込み、ヒットさせた。
 「ある意味、日本の音楽界を変えたと思う」と吉村。「メンバーの活動は思想やデザインなどと結びつき、80年代の文化の潮流を作った」とも指摘する。「赤い人民服」と呼ばれた初期の衣装をはじめとするファッションや斬新なジャケットデザインも刺激的だった。メンバーは哲学者や美術家とも交流し、担当したラジオ番組では、クラシックから海外のニューウェーブまで紹介。幅広く文化を伝えた。
 40周年を機に、ソニー・ミュージックダイレクトは、テイ・トウワ選曲による編集盤「ノイエ・タンツ」を発売。過去のアルバムの再発売プロジェクト「YMO40」も展開し、特設サイトの内容を充実させていく。また、来年1月にはメンバー3人が出演する「細野晴臣イエローマジックショー2」がNHKで放送される。1月1日午後2時半からBS4K、同2日午後11時半からBSプレミアム。
 
 ◆「YMOは過渡期の音楽」 高橋幸宏
 メンバーの高橋幸宏に聞いた。
 「最初、無機的な音楽と言われたんです。コンピューターを使うからだろうけど。“ピコピコ”とか」と苦笑する。「細野さんもよく言ってますが、YMOの音楽は過渡期の音楽だったと思う」。国際化やコンピューター技術の進展など、様々な物事が大きく変化していた時代。それらが彼らの音楽が生まれた背景にある。
 高橋は結成以前にサディスティック・ミカ・バンドで海外公演の経験があり、「それがワールドツアーで役に立った」と言う。「赤い人民服」は高橋の考案で、世界進出に際し、観客に強い印象を残したいとの思いがあった。
 今後はどうなるのだろうか。「YMOはそのまま残しておけばいいんじゃないですか。この前も3人で集まったし、お正月の番組もあるし」。ファンの期待は高まるばかりだ。
 
1978年 結成。アルバム「イエロー・マジック・オーケストラ」発表
  79年 アルバム「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」発表。第1回ワールドツアー
  80年 ライブ盤「パブリック・プレッシャー」、スネークマンショーを迎えた「増殖」発表。第2回ワールドツアー
  81年 アルバム「BGM」、「テクノデリック」発表
  83年 シングル「君に、胸キュン。」発表。12月の公演をもって“散開”
  93年 “再生”を発表。アルバム「テクノドン」発表。東京ドーム公演
2007年 テレビCMにYMOとして出演。シングル「RYDEEN 79/07」を配信リリース
  08年 英国、スペインで公演
  11年 米国公演。フジロック・フェスティバル出演
  18年 細野の英国公演に、高橋、坂本が参加

読売新聞2018年11月24日読売新聞記事(1版)掲載 執筆記者:桜井学

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