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読売新聞│配信日:2018年11月5日│配信テーマ:その他  

岡林信康 歩み50年の到達点 記念アルバム、代表曲を新録音


 「フォークの神様」として日本の音楽史にその名を刻む岡林信康が、デビュー50周年を迎えた。記念アルバム「森羅十二象」(ディスクユニオン)では、多彩なゲストを迎え、代表曲を新録音した。(桜井学)
 「作ってきた中から好きな歌を選んで、50年の歩みなり、到達したところを表現しようかと」と制作意図を説明する。過去の共演などで「心に残っているミュージシャン」がゲストとして参加した。アレンジは全てゲスト側に任せた。その結果、おなじみの曲に新たな輝きが加わった。
 貧しい家の子供の思いをつづり「みんな貧乏が悪いんや」と歌う、美しくも悲しい「チューリップのアップリケ」。矢野顕子がやさしいピアノとコーラスをつけ、切なさが際立った。ロックバンド、サンボマスターがバックを務める「それで自由になったのかい」は、給料が増えて多少ぜいたくができたとしても、それがなんだと訴え、「あんたの言ってる自由なんて ブタ箱の中の自由さ」と言い放つ。サンボのタイトな演奏が全体を引き締める。
 他に京都フィルハーモニー室内合奏団や坂崎幸之助、ジャズピアニストの山下洋輔との共演曲もある。どの曲でも70歳を超えた岡林の声に力がみなぎっている。
 1968年、労働者の生活を歌った「山谷ブルース」でレコードデビュー。翌年、初アルバム「わたしを断罪せよ」を発表。社会の矛盾をテーマにしたリアルなフォークが、若者を熱狂させた。その後ロックに移行し、伝説のバンド、はっぴいえんどがバックを務めたこともある。70年代に入ると、京都府の山村で暮らし、音楽業界と距離を置いた。「フォークの神様」のイメージでとらえられることに息苦しさを感じていたのだ。「檻(おり)の中に閉じこめられていて、脱出したかった。自然の中で暮らし、動物的な本能を呼び覚ましたかった」
 そこで本人も予期しなかった「演歌」の魅力に目覚める。美空ひばりが岡林の作品を取り上げ、大きな話題となった。「演歌なんてそれまで敵みたいなもんでしょ。嫌いだったけれど、田植え、稲刈りしているうちに好きになっていったよね。心地よくて」
 その後も音楽的な変遷は続いていく。「自分の作ったものをぶっ壊して、全く関係ない新しいことをやってしまう」と笑う。「オヤジもそうだったんです。田舎を飛び出して、キリスト教の牧師さんになったんだからね。なんかそういう遺伝子を受け継いだのかも」
 12月19、20日、東京・EXシアター六本木で公演。50周年記念ツアーの締めくくりとなり、両日とも山下洋輔スペシャル・カルテットがゲスト出演する。(電)03・3585・6178。

読売新聞2018年11月 1日読売新聞記事(1版)掲載 執筆記者:桜井学

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