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毎日新聞│配信日:2018年8月6日│配信テーマ:その他  

<らっこ・アーティスト>ピーター 並行世界の休暇改革


 「働き方改革」なんて国が言ってくるとは思わなかった。そのおかげで余計に会社仕事が増えた。サラリーマンは心から思う。「本当の休みが欲しいんだ!!」と。

 「そうなのよー。私もね、ピーターって名前に“お疲れ様”って言ってやろうと思うの。16歳からのあだ名だよ。66になろうって時まで使うのって後ろめたいっていうか居心地悪いっていうか。でね、大杉(漣)さんやヒデキ(西城秀樹)が亡くなっていくわけよ。こんな生活は50周年が区切りだろう、って思うワケ」。一気に「休業理由」を語る。今年いっぱいをもって、ピーターは「終了」、池畑慎之介も「休止」である。決定である。サラリーマンとしては「うらやましい」が、さて、ファンとしては、どうか。

 「いいじゃん。とにかく遊びたいの」。げっ、芸能界の中では、相当「遊んできた」人のような気がするが。

 「違うのよねー。他人様が入れたスケジュールが手帳にある、ってのが、50年続いているわけよ。手帳の予定が真っ白ってのを1、2年やりたいの。それが延びるも縮むも、自分で決めたいわけ」

 上方舞の人間国宝の長男として生まれ、幼少から厳しく芸をたたき込まれるが、離婚した母に連れられ鹿児島に移る。中学校で家出。原宿で見つかり、これがきっかけで両親復縁。大阪の高校1年の時、再度家出。六本木のゴーゴークラブで「ピーター・パンが踊っている」と話題になり、当時の文化人たちが取り囲むうち、1969年映画「薔薇の葬列」に主演。すぐに「夜と朝のあいだに」で歌手デビューも果たす。以後は映画「乱」をはじめ、舞台、テレビ、バラエティー、何でもござれのハイパーな活動はご存じの通り。仕事に近いエンターテインメントやダンスはもとより、ファッション、食、美しくて楽しいことは、なんでも好きでこなしてしまう。見ての通り、性別不明タレント業も最先端を突っ走る。

 映画「メン・イン・ブラック3」に、時間を超えてパラレルワールドを見通せる宇宙人が登場する。自由に、どの世界でも生きることができる彼は、危険も察知できるが、そのたびに怖い目に遭う。楽しそうであり、かわいそうでもある。

 ピーターか池畑か、男か女か、歌手か俳優かタレントか……「お前は、一体、どの世界の人間なんだ」……。ピーターは、ある種の人々に、50年間こんな問いを突き付けられ続けたと言える。どちらの世界も見える宇宙人には、その問いに意味はない。確かに「そろそろ、いいね」なのだ。8月31日、東京・品川プリンスホテルで50周年記念「ありがとう……そして、さよなら『ピーター』」ショーを開催する。「これまでのすべてを見せるよ!!」。休みの世界はどんなところなのだろう?【川崎浩】

毎日新聞2018年7月28日東京夕刊(3版)掲載 執筆記者:川崎浩

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