[ 画像 ] 今週の音楽記事から 音楽ジャーナリストの眼 毎週月曜更新

新聞記事

毎日新聞│配信日:2018年8月6日│配信テーマ:ジャズ  その他  

<Interview>H ZETTRIO 「ジャズど真ん中」疾走 新アルバムの全国ツアー中


 ジャズは、ジャンル自体に変革や進化を内包する音楽である。過去に学び形式を模倣するスタイルもあるが、それは言うまでもなく訓詁(くんこ)学の姿勢である。勉学には必要だろうが現代のジャズの根幹とは言い難い。過去と違ってこそジャズであろう。

 ピアノのMが青鼻、ベースのNIREが赤鼻、ドラムのKOUが銀鼻、よく言えば象徴的、悪い表現を使えば幼児的な格好で人前に登場し、楽しくも超絶なピアノトリオ演奏を聴かせてくれる「H ZETTRIO(エイチ・ゼットリオ)」は、まさにジャズのど真ん中を突き進んでいると言えよう。

     ■   ■

 「驚かせてやりたいんです」。こう答えたMことヒイズミマサユ機は笑うでもない。ひと月に1作シングルをネット配信で発表し、すぐにライブで演奏する。それを半年間、6作続けた。「盛り上がるでしょう。ワーッて」。曲はほとんどMが作る。普通の譜面は書かない。「構成を示した独特の譜面で、言葉や既存の記号ではなく、音を出して整えていく」のだと言う。それは「音を出せば方向は分かる」(KOU)のだ。「流れに身を任せればいい。だって人間とやっているんでしょう」と、Mは「どこに疑問があるんだ」とばかりにいら立つ。

 すると、NIREが収める。「つまり、方向が見えればでき上がる音楽をやっている。緩さや遊びの部分は、自然に気持ちのいいところに収まるってことかな」

 3人の出自は、世紀末から2015年まで活動した人気インストゥルメンタルバンド「PE’Z」である。華やかなメロディー担当の管楽器を削り、“素”のリズムセクションを自由に打ち出したのがH ZETTRIOなのだ。デビュー翌年にはスイスのモントルー・ジャズ祭に出演し、配信中心の録音発売を行いつつ、ライブは大小問わず出演する。アナログ型なのかデジタル型なのかもつかみにくい。

 「ライブで、赤ん坊から老人まで大喜びする音楽を作っている。発信メディアもこだわらない。いつでもどこでも演奏できる多様性の高いバンドなんです」とNIREが説明するが、ふと、Mが「でも、見る方の質も上がるともっとうれしいね」と、ぽそっと本音も漏らす。先の読めない展開や独特の和音遣い、といって前衛に走らず緊張も与えない。意外性や享楽性、先鋭性……このトリオは理解より共感を求めるのだ。

     ■   ■

 今、CM曲「ホワッツ・ネクスト」などが収められた新アルバム「ミステリアス・スーパーヒーローズ」(アパート・レコード)のツアー中。クライマックスとなる8月18日の東京・日比谷野外大音楽堂の後、同25日に香港、同26日に広州と中国ツアーへ向かう。Mは、その後ソロピアノツアーも控えている。【川崎浩】

毎日新聞2018年7月26日東京夕刊(1版)掲載 執筆記者:川崎浩

ジャズ その他   のテーマを含む関連記事