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音楽ライター記事

ライター:山崎│配信日:2015年6月4日│配信テーマ:洋楽  

ホークウィンドがライヴ名盤『宇宙の祭典』を完全再現。2014年ライヴ映像作品『Space Ritual Live』が登場


2015年4月に行われたホークウィンドの来日コンサートは、誇張でなく“歴史的”な公演だった。イギリスのスペース・ロックを代表するバンドとして、サイケ、メタル、パンク、プログレ、トランスなどさまざまなジャンルに影響を与えてきた彼らがデビューから35年目にして、初めての日本上陸。2011年4月にも来日が決定しながら東日本大震災で中止となり、“船長”と呼ばれるギタリスト、デイヴ・ブロックが73歳ということを考えると、もはや彼らが日本でプレイする可能性は潰えたかと思われた。

日本公演が実現したというだけで既に奇跡だったのだが、その内容がまた素晴らしいものだった。現在でも精力的にツアー活動を行っている彼らゆえ、演奏はタイトなものだったが、ステージ背後のスクリーンに映し出されるサイケデリックなヴィジュアルが幻想的なトリップ感を煽りたて、時空の歪みすら起こすことになった。

11日・12日にライヴが行われたが、演奏曲目を半分以上入れ替えて、初日には「ハッサン・イ・サバー」、2日目には「アソールト&バッテリー」そして彼らの代表曲「シルヴァー・マシーン」がプレイされるなど、会場を訪れた観衆は涙と汗と脳内物質を同時に流しながら歓喜の叫び声を上げたのだった。

そのスリルと興奮を何度でも再体験することが出来るのが、2015年にリリースされた『Space Ritual Live』だ。

2014年2月22日、ロンドンのシェパーズ・ブッシュ・エンパイアで収録されたこのライヴは、1973年に発表されたライヴ・アルバムの名盤『宇宙の祭典』を完全再現するという趣向の作品。2CD+2DVD(CDとDVDは同内容)、2CD+1DVD(DVDはライヴ後半、『宇宙の祭典』再現パートのみ収録)という2フォーマットでリリースされた。

日本公演の1年2ヶ月前に行われたライヴだが、バンドのラインアップはデイヴ・ブロック(ギター、ヴォーカル、シンセ)、ミスター・ディブス(ヴォーカル、ベース、エフェクト)、ティム・ブレイク(テルミン、シンセ)、リチャード・チャドウィック(ドラムス)、ナイアル・ホーン(ベース)、デッド・フレッド(キーボード、バイオリン)という、来日メンバーと同じ編成だ。

ライヴ前半は新旧取り混ぜた選曲で、最新アルバム『スペースホークス』(2013)のオープニングを飾った「シーズンズ」からスタート。「リーファー・マッドネス」「スピリット・オブ・ジ・エイジ」など1970年代中盤、『カリスマ』レーベル在籍期のナンバーが意外と多いが、バンドの演奏は熱気に満ちたもので、2千人の観衆も盛り上がっている。

だが、このライヴのハイライトは後半、『宇宙の祭典』完全再現だ。『Space Ritual Live』ではアルバムの曲順に「ボーン・トゥ・ゴー」「オルゴン・アキュミュレーター」「マスターズ・オブ・ザ・ユニヴァース」など名曲の数々をプレイする。オリジナル『宇宙の祭典』から40年以上が経ち、ロバート・カルヴァートやニック・ターナー、レミーなどの強烈な個性を持ったメンバーが脱退したため、きっちりと丁寧に演奏しているが、元々の音楽が極濃スペース・ロックであること、ステージ背後のスクリーンに映し出されるヴィジュアルが映像にスーパーインポーズされることで、アシッドな精神高揚を得ることが出来る。

このスペシャル・ライヴにはゲストとして、元ソフト・マシーンのジョン・エサリッジが参加。「ロード・オブ・ライト」と「スペース・イズ・ディープ」でギターを弾いている。本能に訴えかけるタイプのホークウィンドの音楽と、超絶テクニックを誇るエサリッジのギターが呼応しあい、新たな宇宙空間が脳内に拡がっていく。

オリジナル『宇宙の祭典』の頃、ホークウィンドのライヴには女性ヌード・ダンサーのステイシアが参加していたが、今回も身長の高い竹馬プリンセスや全身に電球をつけた黒子タイツダンサーなどが登場した(ただし服は着ていた)。

2時間オーバーのライヴ・パフォーマンスは宇宙の探求の旅であり、日本公演をエクスペリエンス出来た人も、出来なかった人も、本作によって向こう側の世界に投げ込まれるに違いない。

デイヴ・ブロックは『宇宙の祭典』再現ライヴについて「あれは1回だけ。もうやらない」と語っているが、ぜひもう一度日本を訪れて、ステージでの完全再現を実現させて欲しいというのは、日本のホークウィンド・ファンの総意だろう。


2015年6月 4日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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