緊急通報システムは、エアバッグの作動などから事故を検知し、ドライバーが自力で連絡をとれない状況も想定して、車両が位置情報をコールセンターに自動通報するものです。コールセンターはドライバーとの通話を試みつつ、消防などの機関に通報します。救助・救急機関が事故情報を迅速に把握し、より早く治療を開始できるようになることで、救命率の向上や傷害の重傷化防止につながると期待されています。
この取り組みは、ロシアやEU(欧州連合)が先行しています。ロシアではすでに2017年1月、新型車に緊急通報システム「ERA-GLONASS(エラ・グロナス)」を搭載することが義務化されており、EUでも2018年4月、新型車への緊急通報システム「eCall(イーコール)」搭載が義務付けられました。eCallの導入にあたり、欧州委員会は「交通事故現場に到達する時間が40~50%短縮される」「交通事故の死者数が、年間2,500人の規模で減少する」といった効果を試算しています※1。
また2017年11月に、国連欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラム※2で「事故自動緊急通報装置」の国際基準が策定されました。それを受け、2018年7月に国土交通省は同基準を日本国内にも導入し、性能基準を定めています。新型車は2020年1月から、既存の車種は2021年7月から適用される予定です。
- ※1 European Commission, 11/10/2005, Saving travellers’ lives:Commission urges Member States to improve their responses to 112 emergency calls
- ※2 自動車基準調和世界フォーラム(WP29):国連欧州経済委員会(UN/ECE)の下にあり、傘下に6つの専門分科会を有しています。安全で環境性能の高い自動車を容易に普及させる観点から、自動車の安全・環境基準を国際的に調和することや、政府による自動車の認証の国際的な相互承認を推進することを目的としています。(国土交通省資料「WP29概要」)