コンサートホールで演奏中の大規模な吹奏楽団。指揮者を中心に木管楽器、金管楽器、打楽器、弦楽器が配置され、観客席も一部見える。

全2,336席完売で迎えた節目のステージ ── ヤマハ吹奏楽団、第60回記念定期演奏会

2026年6月20日、アクトシティ浜松 大ホールで、ヤマハ吹奏楽団の第60回記念定期演奏会が開かれました。チケットは当日券を含め、全2,336席分が完売。演奏が終わるたびに、会場には大きな拍手が広がり、60回という節目を迎えた楽団の歩みと、音楽を楽しみに集まった人たちの思いが重なり合う一日となりました。


  1. 満席の客席が耳を澄ませた、記念の幕開け
  2. ゲストと新曲が彩った、60回目のステージ
  3. 客席から届いた、憧れと期待の声
  4. 学校へ、工場へ。音楽が日常に近づく時間
  5. 60回の歩みを、次の音へ

満席の客席が耳を澄ませた、記念の幕開け

華やかなファンファーレが響き、続いて色彩豊かなバレエ音楽が大ホールを満たしていきます。客席に集まった2,300人を超える来場者は、音の行方を追うように静かに耳を澄ませました。
幕開けを飾ったのは、古代エジプトを舞台にした歌劇「アイーダ」の「凱旋行進曲」。1871年にカイロで初演されたこの作品の堂々とした響きが、記念演奏会の始まりを晴れやかに告げました。
ステージに立つ団員にとっても、満員の客席を前にした演奏は特別な時間です。演奏後には「これほど多くの人の前で演奏でき、会場がうねるような拍手に包まれて幸せです」という声も聞かれました。音楽を届ける喜びと、聴き手から返ってくる熱量。その両方が、会場全体を一つにしていました。

ゲストと新曲が彩った、60回目のステージ

この日のステージには、日本を代表するクラシック・サクソフォン奏者の上野耕平さんがゲストとして出演しました。伸びやかな音色と吹奏楽団の豊かな響きが重なり、客席には、息をのむような瞬間が何度も訪れました。
また、60回目の節目にふさわしく、新たな作品も披露されました。常任指揮者の中井章徳さんが、作曲家の酒井格さんに「YAMAHAのつづりに含まれるAAHA(ラ・ラ・シ・ラ)の音列を題材にしてほしい」と依頼して生まれた「ブルックナーの鐘」です。
楽団の歩みを感じさせる題材をもとにしながら、初めて鳴り響く音楽として客席に届けられた同曲。過去を振り返るだけでなく、これからの演奏活動へ向かう節目として、演奏会に新しい表情を添えました。
メインプログラムを締めくくった「ローマの祭り」の後には、大きな拍手が波のように広がりました。その拍手は、演奏への賛辞であると同時に、60回続いてきた定期演奏会への祝福のようでもありました。

[写真] 演奏中のホルン奏者5人が座っている。黒のフォーマル衣装で、譜面台と楽器が並び、オーケストラの一部として演奏している様子。
[写真] オーケストラの演奏風景、指揮者が前に立ち管楽器奏者が多数並んでいる。演奏者はフォーマルな服装で、トランペットやフルートなどさまざまな楽器を演奏している様子が見られる。
[写真] 演奏会のステージでサクソフォン奏者の上野耕平さんが立って演奏している。複数の演奏者が並び、後方にはピアノや他の楽器奏者が配置されている。
サクソフォン奏者の上野耕平さんと共演

客席から届いた、憧れと期待の声

終演後、来場者アンケートには1,000件を超える声が寄せられました。10代から80代まで、幅広い世代の言葉からは、演奏を聴いた人それぞれの心に残ったものが伝わってきます。
「豊かな響き、力強い音。私もそんな音に近づきたいと思いました」と話した10代の来場者にとって、この日の演奏は、これから自分が目指したい音を思い描くきっかけになりました。30代の来場者からは「泣きそうなくらい感動しました」という声もあり、その一言は、演奏者にとって大きな励みになりました。
「ヤマハ吹奏楽団の音を全国へ広げてください」「日本トップクラスの演奏を聴くことができてよかったです」といった期待の言葉に加え、「浜松の名を高め、音楽愛好家を育てている役割は大きいです」という80代の来場者の声も寄せられました。
演奏会は、ただ音楽を鑑賞する場にとどまりません。聴いた人の憧れを育て、地域の誇りを感じる機会にもなります。客席から届いた一つ一つの声が、楽団にとって次の演奏へ向かう大きな励みになりました。

[写真] ホール内で多くの観客が舞台に向かって拍手している。観客席は複数の階層に分かれ、温かみのある照明と木目調の内装が特徴的。

演奏会を楽しむ2300人超の来場者

[写真] オフィスの窓際に置かれた大量の書類。1000件を優に超えた来場者アンケートの用紙。

演奏を聴いた人それぞれの心に残ったものが伝わってくる、来場者アンケート。その数は1000件を優に超えた

学校へ、工場へ。音楽が日常に近づく時間

今回の演奏会に多くの人が足を運んだ背景には、ステージの外で続いてきた地道な活動があります。ヤマハ吹奏楽団は、地域に根差した楽団として、学校で音楽に取り組む生徒たちや、楽器づくりに携わる人たちとの接点を広げてきました。
2025年度からは、浜松市内の中学校・高校で、中井さんによる音楽指導が行われています。7月9日現在、静岡県立浜名高校や浜松市立南部中学校など計7校、233人が受講しました。
参加した生徒からは「普段は体験できないようなレッスンを受けられてうれしかった。課題が明確になった」「どんな表現をしたいのか、どう吹いてほしいのかが強く伝わってきて、自分もそれに乗りたい、周りと合わせたいという気持ちが自然に湧き上がってきた」といった声が上がっています。
音楽に向き合う生徒たちにとって、プロの指揮者から直接言葉を受け取る時間は、自分の音を見つめ直す機会になります。指導者からも「新たな発見があった」と感謝の言葉が寄せられました。
一方、ミドルクラスからカスタムクラスの管楽器づくりを担うヤマハ豊岡工場では6月、休憩時間を利用したサンクスコンサートが3回開かれました。木管五重奏、クラリネット四重奏、金管五重奏など、工場で働く人たちのすぐそばで音楽が鳴り響きました。
管楽器づくりに携わる人にとって、自分たちの仕事がどのような音色となって人の心に届くのかを実感できる時間です。演奏する人、聴く人、つくる人。それぞれの日常が音楽を通じて近づいたことも、今回の演奏会への関心の広がりにつながりました。

[写真] 吹奏楽部の練習風景、学生たちが楽器を演奏し指導者が指示を出している様子が見られる。教室内で楽譜スタンドや楽器が整然と配置され、集中して演奏に取り組む姿が特徴的。

今年6月に浜松市立富塚中で行った中井さんによる音楽指導

60回の歩みを、次の音へ

楽団幹事長の宇江原さんが、フォーマルな服装で演奏会でバスドラムを演奏している。演奏中の集中した表情と楽器の大きさが強調されている。

楽団幹事長で打楽器を担当する宇江原さん

ヤマハ吹奏楽団幹事長で打楽器を担当する宇江原駿さんは、当日のステージを振り返り、「満員の客席を前に、喜びと緊張を感じながら演奏会に臨みました。団員一同の努力が実り、温かな拍手に大きな励みをいただきました」と話します。

60回という節目は、これまでの歩みを確かめる時間であると同時に、次の一歩を考える出発点でもあります。宇江原さんは「60回の歴史に感謝し、今後も地域に親しまれる吹奏楽団を目指します」と続けました。
会場を満たした拍手は、その日限りの余韻にとどまりません。演奏に憧れた生徒の次の練習へ、楽器をつくる人の仕事への誇りへ、そして地域で音楽を楽しむ人たちの期待へとつながっていきます。
節目の夜に響いた音は、これからも浜松のまちで、人と人とを結びながら、新しい音楽の時間を育んでいきます。


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