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知的財産

経営層や研究開発部門などと連携をとりつつ、
グループの知的財産戦略を推進する

知的財産部は、「知的財産の獲得、保護、活用に加え、高い専門性を駆使し新たな価値創造の実現を牽引する」というミッションのもと、ヤマハグループにおいて、経営層や研究開発部門などと連携して、知的財産戦略を推進しています。

主な業務としては、次のようなものが挙げられます。

  • 自社・他者(企業・個人)の知的財産の分析
  • 自社の知的財産(特許・意匠・商標など)の権利取得手続および保全
  • 他者の知的財産権(特許権・意匠権・商標権・著作権など)のクリアランス
  • 知財係争・訴訟への対応(模倣品対策を含む)
  • 知的財産に関わる契約への対応(契約相談、契約書の審査・作成など)
  • グループ内における知的財産教育・啓蒙


知的財産部には現在、60数名が所属しています。そのうち約半分のメンバーは部門のオフィスで仕事をしていますが、残り半分のメンバーは、開発や設計部門がある棟などに常駐して、特許、意匠から著作権まで知財全般に関する相談事に即応できる態勢をとっています。日々の仕事では、開発者等が考えたアイデアやデザインなどを強く広い権利として取得するための業務を行うほか、他者権利のクリアランスや他者との協業・契約など開発部門からの各種相談に対して助言などを行っています。また、こちらから開発部門等に出向き、開発戦略に即した知財情報を適宜提供することで、より良い開発の促進に努めています。知的財産部員は社内における専門家として提言する立場にあるので、社会や技術の動向、そしてヤマハグループ全体を俯瞰しながら、法律・技術・語学など幅広い知識とスキルを駆使して、ヤマハを正しい方向に導く責任があります。

また、ヤマハの売上の約7割を海外が占めるという現状を踏まえ、日本だけでなく海外でも積極的な特許、意匠、商標の出願を行うなど、知財活動のグローバル対応を加速させています。米国・欧州・中国といった大きな市場はもちろん、インド・ASEANといった成長市場も、ヤマハの事業戦略に沿って、重要エリアとして視野に入れています。
訴訟・係争対応は、販売差止めや損害賠償など事業に大きく影響します。そのため、例えば、自社の特許権をどこの国でどのように活用(訴訟やライセンス)するべきか、また、ヤマハが提訴された場合はどのようにしてリスクを最小限に抑えるか等、それぞれのケースに応じた訴訟戦略・戦術が求められます。対応しているときは常に必死ですが、それだけに望ましい結果を手にして事業へ貢献できた時の喜びは大きいです。
世界中に出回っている模倣品対策も重要な問題です。模倣品対策はコストと手間がかかりますが、模倣品の氾濫を放置することはブランド価値の毀損につながります。ヤマハの経営方針である「ブランド価値向上」に密接に関わってくるため、費用対効果を考慮しつつも、対策を講じ続ける必要があります。

部門の相関図

[ 画像 ] 部門の相関図

法律・技術・語学の知識に加え、
論理的な思考力とコミュニケーション能力が大事

知的財産部の部員は、新卒からの配属・他部門からの異動・キャリア採用のメンバーでバランスよく構成されており、お互いの長所を発揮してサポートし合っています。特許など技術の権利化においては技術の本質を理解することが重要なので、担当する社員は技術開発系が中心ですが、技術や製品への関心や意欲を活かして活躍する企画管理営業系メンバーも少なくありません。

ひと口に知的財産といっても、特許・意匠・商標・著作権のように各法律で異なる知識とスキルが要求されます。法律・技術・語学・論理思考力など、どの知財分野においても必須となる知識やスキルを習得していくとともに、それぞれの分野の専門力を磨いてもらっています。たとえば特許においては、権利化手続きという基礎的な業務から担当してもらい、その後、応用的に特許係争や特許ライセンス契約などの担当に進んでもらいます。知識・スキルの習得にあたっては、OJT制度ほか、社内外の研修にも積極的に参加してもらっています。中には、自発的に弁理士や知的財産管理技能士などの資格を取得する社員もいます。海外企業との訴訟や係争にも対応できる人材育成のため、米国の法律事務所にトレイニーの派遣も行っています。

そして知的財産部員として非常に重要なのは、コミュニケーション能力です。開発や企画、営業などの現場に寄り添い、それぞれの現場が何をしたいのかを察し、知的財産を活用してその実現を支援することが大切です。各部門を陰で支える立場でありつつ、意志をもって価値創造を牽引する、プロデューサーのような働きが期待されています。

これからの知的財産の仕事は、
「新しい価値創造」に積極的に関与することが求められる

これからの時代の経営は、有形資産よりも知的(無形)資産がさらに重視されるようになり、ヤマハでもブランド価値向上を経営方針としています。 従来の知的財産部の業務は、開発部門が創造した成果を権利化して保護することが最大のミッションでした。しかし今後は、経営方針や価値創造活動に積極的に関与していくこと、すなわち、自社・他者の知的財産の分析を介して、経営層や開発部門に提言をしていくことが重要となっています。

ヤマハの事業の中心である楽器や音響機器は、製品のコモディティ化(一般化)が進んでいる分野であり、お客様に新たな顧客体験を与えられるヤマハの強みや個性が表れている技術や機能を見極めることが重要になります。知的財産部は、他者の特許情報など最新動向を調べる中で見えてくる「ヤマハが取るべき戦略や方向性」を経営層や開発部門に伝え、道しるべを提供する動きを本格的に進めています。その先には、イノベーションが待っています。

ヤマハが「カジュアル管楽器」という新しいコンセプトで世に出した「Venova(ヴェノーヴァ)」は、リコーダーに近い簡単な指使いでサックスのような音色の出せる、新発想の楽器です。分岐管理論に基づいた独自構造の技術や、グッドデザイン大賞を受賞した蛇行形状などが主な特徴ですが、知的財産の各要素が詰まった製品でもあります。技術思想は特許で、外観デザインは意匠で守っているほか、商標も登録し、演奏用の楽譜の著作権もケアしてあります。「ヤマハが世の中に提示する新しい価値を、知財活動が支える」ありようが具現化された、非常にシンボリックな製品です。