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読売新聞│配信日:2019年8月5日│配信テーマ:Jポップ  

[STORY]ロックバンド サカナクション(4)届け方をアップデート


 ◇週刊エンタメ 
 「商業ベースの音楽シーンの中をどう泳いで行くか。そのアプローチ自体が表現だと思われたい」(2010年3月)。「僕らが登っているロックの山は、AKB48とかがいるエンタメの山に比べるとすごく小さい。ロックを変えていくため、僕はムチャをしていきたい」(11年9月)——。
 サカナクションのボーカル・ギター、山口一郎の本紙に載ったインタビューを読み返してみると、活動初期から音楽との向き合い方に強い興味を示し、発言してきたことがわかる。劇場やホールが不足する問題、チケットの高額転売問題でも、山口は公の場で発信を続けてきた。
 「僕らって、ある種ただの音楽好きの兄ちゃん、姉ちゃんなんです。外に向かって音楽を発信しているだけで、その発信する先がなくなると困る」
 CDなどの生産は1990年代後半をピークに下降の一途をたどる一方、コンサート市場は盛況。音楽の聴かれ方が多様化する中、サカナクションはライブに6・1チャンネル・サラウンド・システムという最先端の音響を導入したり、映像やデザイン、ファッションの専門家と手を組んだりと、音楽の枠を超えた体験を聴き手に提供し続けている。彼らは音楽をどこに連れて行こうとしているのか。
 「曲を作るだけじゃなくて、システムをアップデート(更新)することも音楽。レコードからCDになり、配信になり、今じゃもうストリーミングですよね。でも僕らは作る側なので、CDが売れようが売れまいが、音楽を作っていくしかない。届け方をアップデートすることが、自分の作品に直結すると思っています」。音源を売って仕事になる時代はやがて終わり、「ファンクラブビジネスになるんじゃないか」と考えている。「応援してもらうためにどんな音楽を作るのか。音楽以外のものをどう伝えるのか。人間というものが、重要になっていく気はします」
 山口は夢想する。「20年後か30年後、自分が音楽をやめて、釣り堀で釣りをしている時、ラジオから流れてくる音楽に嫉妬したい。もしそれがダサいものだったら、自分たちの世代がサボったことになる。そのために今どんなことができるのか考えることって、歌詞を何か月もかけて書くことと同じなんですよね」(文・鶴田裕介)(おわり)

読売新聞2019年7月27日読売新聞記事(1版)掲載 執筆記者:鶴田裕介

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