木と人と音楽のあしたを、
いまの選択から変えていく。

一本の木の断面と、その木材から生まれた楽器を手にする人々

EVERY NOTE
HAS A ROOT
まずは、いま、楽器の向こう側に
目を向けてみる

私たちが何気なく鳴らす一音一音は、世界中の森と、そこで働く人たちの時間の積み重ねから生まれています。世界の森林は、地球の陸地の約3割を占めるほど広がっていますが、その一方で、いまもなお減少が続いていると言われています。楽器づくり使われる木は、音の響きや見た目にこだわるからこそ、節がなく、割れがなく、木目が美しい「一番いい部分」だけが選ばれます。ヤマハが使う木材も、世界各地の多くの樹種の中から厳しく選ばれ、その結果、楽器には使われない部分や品質基準を満たさずにはじかれてしまう部分がどうしても生まれてしまいます。

けれど、それらは本来、同じ一本の木から生まれた、大切な資源です。だからヤマハは、単に「森を大切にしよう」と語るだけではなく、木がどこで育ち、どのように伐られ、どの部分が使われ、何が使われずに残っているのか──そのプロセスに目を向けるところから始めています。

森で伐採された丸太
楽器づくりのために厳選される過程で削ぎ落された一部の木材の「未利用材」

一本の木に宿る時間と、そこに関わる人たちの生活や文化に向き合いながら、
どうすれば資源を無駄にせず、音楽の喜びを未来につないでいけるのか。
その問いを正面から考えることが、私たちの“はじまりの一歩”だと考えています。

MUSIC FOR GENERATIONS 次に、音といのちが
続いていく未来を描く

私たちが思い描く未来は、“自然と音がともに息づく世界”です。木々が豊かに育ち、その恵みを丁寧に活かしながら、次の世代へ音の文化をつないでいく。将来に向けて、ヤマハでつくる楽器に使う木材を、持続可能性に配慮したものにしていくことをめざしています。希少な樹種については、使うだけでなく育てることで、原産国での森林保全が根づき、資源を守りながら音楽文化が続いていく世界を理想としています。

私たちが目指す「豊かさ」は、自然の緑が残っていることだけではありません。原産地のコミュニティが健やかに発展していくこと、楽器をつくる人たちの技術が受け継がれていくこと、演奏する人・聴く人が音楽を通じて心豊かになれること。その積み重ねが、次の世代の森林を育て、また新しい音楽の可能性を生んでいくとヤマハは考えています。もちろん、そこに向かう道のりは、決して簡単ではありません。資源の制約や気候変動、産地の経済・教育など、ひとつひとつ向き合うべき課題があります。

木材の産地で原木に向き合う人々
ギターを奏でる様子

自然から託された恵みを、一度きりで終わらせず、次の世代へ手渡していくために。
ヤマハは、自然環境と人の暮らし、楽器と音楽文化のすべてが
長く続いていく未来を見据えながら、一歩ずつ取り組みを進めていきます。

ONE NOTE
AT A TIME
そして、日々の行動で未来を育てる

未来は願うだけでは変わりません。だからヤマハは、日々の小さな行動を積み重ね、音づくりの未来を着実に育てています。
具体的には、以下のような取り組みを進めています。

産地で管理される木材

この木材は、どこから来たのか?

楽器に使う素材が、どこで育ち、どのように伐られたのか。ヤマハグループでは、そうした出どころを確認する「木材デューディリジェンス」という仕組みを整えています。さらに2023年には、国際的な環境団体 Preferred by Nature と連携し、ヤマハ独自の新しい基準も策定。サプライヤーと一緒に現地調査を続けながら、この基準に合った素材の調達を少しずつ増やしています。

通常プラスチックから作られる電子ピアノの鍵盤を、クラリネットなどに使用される希少木材グラナディラの未利用材を鍵盤に活用したTORCH T01

少ない資源でも、いい音を

限りある資源に頼りきりにならないように、ヤマハは新しい素材や加工技術の開発にも挑戦しています。たとえば、木材の経年変化と似た変化を短い時間で起こし、音の鳴りをよくする独自技術「Acoustic Resonance Enhancement(A.R.E.)」。この技術は、処理の過程で薬剤などを一切使用しない環境にやさしい方法で、豊かな響きを引き出すことをねらっています。
また、楽器づくりの過程で生まれる未利用材を特殊な方法で加工し、流動性を持たせることで、素材として扱いやすい状態にし、音や手ざわりといった特性を活かしたまま成形する「流動成形技術」も開発中。これまで楽器には使えなかった部位にも目を向けながら、「どうすれば限られた資源で、いい楽器がつくれるか」を探る試みが始まっています。

タンザニアの人々が森を管理する場面

産地は、資源を育てる仲間です

希少な素材を、使って終わりにしないために。ヤマハは「おとの森」プロジェクトとして、グラナディラやアカエゾマツ、インドローズウッドなどを対象に、国内外で植林や森林管理の支援を行っています。資源を回復させる取り組みとあわせて、「どうすれば無駄なく使い切れるか」という技術の研究も進めています。
また、おとの森の一環として、人と自然の関わりを考える「木育」活動も行っています。「楽器の木展」などを通じて、楽器に使われる素材に触れ、その背景にある地域や仕事に思いをはせてもらう機会をつくっています。

さまざまな楽器に用いられる未利用材をパッチワーク状に配したアップサイクリングギターの「1stプロトタイプ」

まだ使われていない、もうひとつの可能性

楽器の製造では、音の響きや見た目にこだわるからこそ、どうしても使われない部分が生まれます。ヤマハは、そうした未利用材にもう一度目を向け、新しい形で活かすことにも挑戦しています。未利用材を使った電子ピアノやクラリネット、アップサイクリングという発想でつくられたギターなど、「本来なら見過ごされていたかもしれない素材」に、もう一度ステージを用意するような楽器づくりを進めています。

TAKE THE STAGE 最後に、手と手を取り合い、
音を未来へつなぐ

音づくりの未来は、一人では育てられません。森を知る専門家、木材を届けるサプライヤー、調達を支える国際機関、工場で音を生み出す職人、研究開発を担う技術者——多様な人々の情熱が集まり、ひとつの楽器が生まれます。

おとの森プロジェクト 仲井一志

おとの森プロジェクト 
仲井一志

楽器づくりのための木材資源が枯渇する。だいぶ前からそう言われていて、木材に代わる材料の開発を続けてきました。しかし、本物の木には天然材料の良さがあり、その良さを未来の人たちにも届けたいと思いました

研究開発統括部 松田秀人

研究開発統括部 
松田秀人

ほかの木材にはどんな特性があるのか、どの木材を使うと、どういう味わいが生まれるのか──そんな研究を重ねていけば、“木材と設計のセット”も当たり前ではなくなり、あらゆる木材でギターをつくることが可能になるかもしれない

B&O事業部 B&O開発部 杉村亜寿美

B&O事業部 B&O開発部 
杉村亜寿美

ヤマハの楽器の多くは木材でつくられており、その製造過程では想像以上の木材ロスが発生しています。それらを上手く活用する方法を見出せれば、ものづくりのコストを削減し、事業のサステナビリティを向上させることができるはず

楽器・音響生産本部 調達技術部 三村浩一

楽器・音響生産本部 調達技術部 
三村浩一

その木材が違法に伐採されたものでないかどうか。それらを確かめることは容易なことではありませんが、現地のパートナーを訪問するなどして、企業としての社会的責任を果たしたいと考えています。

いつか、あなたの手に渡る一台の楽器が、
この挑戦の先につながっている存在であることを願って。
ヤマハはこれからも、歩みを止めることなく進み続けます。

木材の状態を確認するための森林調査
ピアノやギター、マリンバなどの楽器の製造工程、森づくりから出る未利用材を使って、自分だけのオリジナルを手作りしたカスタネット
アップサイクリングギターのプロトタイプ制作の様子