水族館との協働で考える、森林と生きもののつながり―アメリカビーバーから学ぶ「自然とともに育つ環境」 ―
楽器と木のつながりを、もっと身近に感じていただきたい──。
おとの森活動では、森、ものづくり、地域社会、そして音楽を楽しむ人々が相互に繋がり、持続可能なサイクルを生み出すことで、木を使った楽器、音楽文化の継承と発展を目指しています。森から生まれる木の価値、そして木を使う文化を、より多くの人々に、そして次の世代に引き継いでいくために、木育にも力を入れています。
木は楽器を作るための材料であると同時に、森から生まれた自然の産物であり、楽器づくりは森を介して地球上のあらゆるものと繋がった存在であることを、体験を通じて伝える取り組みの一つとして、横浜・八景島シーパラダイスとの協働による体験型環境ワークショップを実施しました。
「森の建築家」アメリカビーバーという存在
横浜・八景島シーパラダイスを運営する株式会社横浜八景島は「すべての生きものがかかわる地球環境を守ることに貢献する」をコンセプトに、展示や体験を通じて、自然の生きものへの関心を楽しく育むきっかけ作りを行っています。
ワークショップ企画のきっかけは、横浜・八景島シーパラダイスで展示を開始したアメリカビーバーでした。ビーバーは「森の建築家」とも呼ばれ、ダムや巣を作ることによって水位を安定させ、湿地を生み出します。その結果、水辺の生きものにとっての生息地を作り、周囲の自然環境に影響を与える生態を持つ動物として知られています。
自分だけでなく周囲の多様な生態系を支えるビーバーの生態と、楽器づくりという切り口から森と人との繋がりを見出すおとの森活動とのテーマの親和性に、横浜・八景島シーパラダイス、そしておとの森プロジェクト双方が魅力を感じ、本企画がスタートしました。
木に触れ、生きものを知る体験へ
ワークショップは、2日間実施し、横浜市内を中心とした小学生計約40名が参加しました。
ワークショップの前半では、ピアノやマリンバの製造工程から生まれた未利用材を活用し、カスタネット作りを行いました。児童たちは実際に木に触れながら、木の種類や組み合わせによって音が変わることを体験していきます。
「木によって音が違う」「同じ素材でも、作る人によって響き方が変わる」
といった発見があり、素材としての木の面白さ、ものづくりを体感する時間となりました。
カスタネット制作を行う参加者の子供たちとサポートするスタッフ
完成した手作りカスタネットの音を確かめる子供たち
後半は、アメリカビーバーの観察を通じて、生きものの営みを学ぶ時間です。
なぜ木を切るのか、どのように環境をつくっているのかを知ることで、生きものの行動が水辺の環境を変え、森全体の生態系へとつながっていることを感じ取っていきました。
飼育エリアでビーバーの生態を解説するスタッフと熱心に聞き入る参加者たち
ビーバーの作る巣についての説明をするスタッフ
体験から生まれる「自分ごと」の環境意識
最後は、森林やビーバーに関するクイズの後、作ったカスタネットで横浜・八景島シーパラダイスオリジナルのビーバーソングを演奏しました。
参加した子どもたちからは、「ビーバーの暮らしや性質がわかった」「いろんな色の木があり、音が色々違っていて面白かった!ビーバー可愛かった」といった声がありました。
ワークショップを通して、自然や森林を身近に感じる時間となりました。
横浜八景島担当者 コメント
「子どもたちが、実際に木に触れながらものづくりをする機会は、思っている以上に少ないと感じています。今回は、普段なかなか触れることのない“生の木”を使い、楽器を作り、さらにその楽器で演奏までできるという、0から1の体験をしてもらうことができました。作ったもので音を鳴らすまでの一連の体験は、子どもたちにとっても印象深いものになったと思います。
自然とともに未来を育てるために
人が木を使って楽器を作り、ビーバーが木を使って自身の居住環境を作る。
立場は違っても、どちらも自然と関わりながら現在、そして未来を形づくっています。ビーバーが居住環境をつくりながら周囲の生態系と共に生きるように、楽器づくりもまた、木を育て、森を育て、地域社会、そして地球と共に生きていくことができるはずです。
生物多様性の保全や森林環境の維持は、一度守れば終わるものではなく、今日やれば明日結果が出るようなものでもありません。
人と自然、生きものと暮らしが関わり続ける中で、より良い状態へと日々一歩ずつ進んでいくことで、長い時間をかけて少しずつ更新されていくものです。
おとの森活動はこれからも、さまざまな活動を通じて、自然と共に育つ楽器づくり、音楽文化、そしてそれに関わる社会のあり方を考え、森と人、木と楽器の繋がりを伝えていきます。