SPECIAL FEATURE 02
インドにおける成長戦略とヤマハの価値創造の取り組み

世界経済の中で最も潜在成長性が注目されている大国・インド。2019年6月、当社はこれまでの営業拠点に加えてチェンナイにインド初となる生産工場を設立し、本格的にインドでの事業活動をスタートしました。開発・生産・販売、そして音楽普及という当社の持つ総合的な強みを、いかに社会価値の創造を通じて企業価値の向上につなげていくか。ここでは、インドにおける当社の中長期戦略についてお伝えします。

未知なるポテンシャルを秘めたインド市場

2020年の推定人口約13億人、25歳以下の若年層が約半数を占めるインドは、国連が発表した世界の人口推計によると、2030年までに現在1位の中国を抜き、世界最大人口の国家に躍り出るといわれており、生産・消費の両面でさらなる成長が期待される巨大マーケットです。2014年に発足したナレンドラ・モディ政権では、「Make in India」、「Skill India」などの政策を推し進め、輸入から国内生産への切り替え、経済改革、製造業振興による雇用の創出が活発化しています。加えて、インドは中近東やアフリカへのアクセスが良く、地理的アドバンテージもあり、昨今、世界の多くの企業がインドに進出しています。

成長への基盤構築
地産・地消を目指した生産・販売一体拠点の展開と顧客接点の拡大

当社は、2008年に設立した販売現地法人「ヤマハ・ミュージック・インディア(YMIN)」に続き、2019年にチェンナイに自社生産工場を設立しました。販売だけでなく、現地での生産を担う製販一体のオペレーションで、拡大するインド国内市場をはじめ新興国向けの商品を一貫して生産・販売できる体制を整えました。

チェンナイ工場では、主にインド国内向けおよび新興国向けの普及価格帯ポータブルキーボード(以下、PK)やアコースティックギター、PA機器などを生産しています。当社が中東・インド・中国などエスニック音楽コンテンツが必携の国々向けに導入しているPK「地域専用モデル」シリーズ。その一つであるインドモデル『PSR-I500/I400』(2019年発売)は、チェンナイ工場で生産されている地産・地消のオールインドモデルで、インドの各地方で親しまれている音楽コンテンツを搭載しています。

一方で、世界第7位の広大な国土を有するインドにおいては、顧客・社会とのつながりを強化し、顧客接点を拡大することが重要です。そのため、販売網においては、小売店を通じたダイレクトな販売に重きを置きつつも、店舗へのアクセスが限られているお客さまやEC需要の増加を見込み、オンラインでの販売網整備も進めています。広大な市場において、IT環境や生活インフラの状況も地域によって異なるため、地域ごとに戦略を立て、将来を見据えた顧客接点の拡大と価値訴求を進めています。

[ 画像 ] インド チェンナイ工場地図
[ 画像 ] チェンナイ工場

チェンナイ工場

[ 画像 ] チェンナイ工場で働く従業員

チェンナイ工場で働く従業員

[ 画像 ] インドモデル『PSR-I500』

インドモデル『PSR-I500』

チェンナイ工場で作られるポータブルキーボード『PSR-I500/I400』

インドの各地方で親しまれているポップスや伝統音楽をこれまで以上に楽しめる楽器を目指したポータブルキーボード。搭載される音色の拡充や自動伴奏機能の強化を図ったほか、メニューやコンテンツリストを地域の音楽主体に並べ替えるなど、細かい工夫を盛り込みました。クイックサンプリング機能で独自の音作りを楽しんだり、USBメモリを介して気に入った演奏をSNSでシェアするなど、新たな音楽の楽しみ方も提案し、インドの人々から好評を得ています。

PSR-I500 紹介動画

中長期での価値創造
インドにおける事業を通じた社会価値の創造で市場拡大の種をまく

インドは、伝統音楽のほか、映画音楽や現地のポピュラーソングをはじめとした音楽鑑賞など、日常的に音楽に親しんでいる国である一方、学校の義務教育に器楽教育が導入されていないため、楽器を演奏した経験がない国民がほとんどを占めています。
そこで、新興国を中心に展開している器楽演奏体験をサポートする「スクールプロジェクト」を、2018年からインドにも導入しました。私立小学校を中心に、手軽でなじみやすく初めての楽器演奏に適したリコーダーを使った器楽教育の機会を提供。2019年3月期に44校、2020年3月期は81校を加え、2020年4月現在では、合計125校に展開しています。これまで楽器に触れる機会に恵まれなかったインドの子どもたちに器楽演奏の楽しさを伝え、子どもの豊かな成長を促す支援を行いながら、ヤマハブランドに親しみを持ってもらうことでインドでの市場拡大につなげます。

インドでのスクールプロジェクト

インドでのスクールプロジェクト

スクールプロジェクト概要 ~楽器演奏の楽しさを子どもたちに伝える~

地域に根差した価値創造で成長を図る

当社は、早くからモノづくりの生産拠点を海外に置き、現地生産・販売による現地の文化に寄り添った事業活動を進めてきました。また、音楽普及事業をグローバルに展開し、世界の人々に楽器を演奏する楽しさや、音楽を学ぶ喜びに触れる機会を提供する中で、新たな需要を創造し、事業拡大を実現してきました。こうした長年の経験やノウハウをもとに、新たな市場インドにおいても、お客さまとのつながりを大切にしながら、事業活動を通じた社会価値を創造するとともに、企業としての成長を推し進めていきます。