SPECIAL FEATURE 03
「音」と「ネットワーク」技術で新しい形の
『遠隔コミュニケーション』を提案

COVID-19の世界的な感染拡大は、人々のコミュニケーションのあり方を大きく変えました。働く環境においても、在宅勤務やテレワークの導入が世界規模で進み、場所にとらわれない多様なワークスタイルが、今後ますます普及・定着するものと見られています。
ヤマハでは、かねてより働き方改革を後押しするソリューションとして、快適なテレビ会議やウェブ会議を実現する音環境製品の拡充を図ってきました。長年にわたって培ってきた音とネットワークの技術・ノウハウを結集して、新時代に不可欠な遠隔コミュニケーションを提案しています。

CASE STUDY 01
社会ニーズの高まりを支える遠隔会議システム

テレビ会議やウェブ会議などの遠隔会議は、在宅勤務や多様な働き方を実現する上で、今やなくてはならないコミュニケーション手段の一つとなっています。また、オフィスの会議室においても、会議参加者同士が適切な距離を保つための柔軟なレイアウト変更や、参加人数や目的に応じた会議室の効率的な運用、快適な音空間の導入など、ニーズが多様化しています。そこで注目されているのが、ヤマハが持つ音を原点に培った技術とネットワーク技術が融合した、「遠隔会議ソリューション」です。

2021年1月に発売した遠隔会議用ワンストップサウンドソリューション『ADECIA』は、多様化するニーズに応え、高品位で快適な遠隔コミュニケーション空間を簡単かつ柔軟に導入・開始・運用するための、シーリングアレイマイクロフォンとプロセッサーを中心に構成した、中規模会議室向けシステムです。話者の発言をキャッチして周りの雑音を抑制する「マルチビームトラッキング」により、高品位なコミュニケーションを実現します。また、同年6月には、遠隔会議スタイルの多様化を後押しする製品として、手軽な設置が可能なテーブルトップアレイマイクロフォン『RM-TT』を発売しました。独自の音声信号処理技術により複数人数の発言に対応し、会議の様子をそのまま遠隔地に届けるほか、遠隔会議を行うのに必要な機器と機能を全て備えているため、設備導入を検討する際の機器構成や施工、音響調整といった課題を解決します。

その他にも、小規模会議用のユニファイドコミュニケーションスピーカーフォン『YVC-200』『YVC-330』から中大規模会議向けのユニファイドコミュニケーション マイクスピーカーシステム『YVC-1000』まで、会議の規模や用途に応じたラインアップを備え、騒がしいオープンスペースでも静かな会議室でも高音質で快適な遠隔コミュニケーションを実現するための多彩な製品を提案しています。

[ 画像 ] 遠隔会議用ワンストップサウンドソリューション『ADECIA』

遠隔会議用ワンストップサウンドソリューション『ADECIA』

[ 画像 ] 『YVC-330』の使用事例

『YVC-330』の使用事例

CASE STUDY 02
音のヤマハだから実現できるソリューション提案

一方、遠隔会議の普及に比例して、重要な会話や他人には聞かれたくないプライベートな会話に配慮を求める音問題の顕在化が急増するという社会的ニーズが高まってきました。

当社のスピーチプライバシーシステム『VSP-2』は、人の声を素材に独自開発した合成音「情報マスキング音」を使用し、「音」で会話の中の音声情報をカモフラージュして会話を包み隠すシステムです。会議室間やオープンスペースの打ち合わせ場所などから周囲に漏れる会話の内容を分かりづらくし、スピーチプライバシーを快適に守りながら安心して会話ができる環境を作り出しています。

* 会話の内容が第三者に漏れ聞こえてしまうことを防ごうという考え方。医療施設・オフィス・金融・行政機関・福祉施設などで、会話から漏れてしまうプライバシー・機密情報を守る取り組みが始まっています。

[ 画像 ] スピーチプライバシーシステムのイメージ図

スピーチプライバシーシステムのイメージ図

CASE STUDY 03
オフィスの音環境問題の解決に向けた実証

他業種の企業と協力して、社会課題を解決するためのさまざまなソリューション開発のための実証にも取り組んでいます。

2020年12月、当社はNECネッツエスアイ(株)様(以下、NECネッツエスアイ)、イナバインターナショナル(株)様(以下、イナバインターナショナル)と共同で、オフィスにおけるウェブ会議の音環境問題の解決を目指したお客さま参加型実証を実施しました。現状、遠隔会議時における音環境問題に対応するためには、コストと時間をかけてオフィスレイアウトの見直しを行う必要がありますが、もっと手軽な方法で課題を解決したいという声を受け、ウェブ会議に適した環境をお客さまに素早く提供し、お客さまの働きやすさと生産性向上に貢献することを目的として行われました。イナバインターナショナルの吸音性の高い可動式のパーテーションと当社の最先端の音響技術とを組み合わせた新しいオフィスレイアウトに、Zoomをはじめとしたウェブ会議システムとオフィス環境提案に数多くの実績を持つNECネッツエスアイの技術を組み込んだ、業種の枠を超えた検証が進んでいます。

CASE STUDY 04
音とネットワーク技術の融合で広がる、遠隔コミュニケーションの可能性

コロナ禍は、仕事だけでなく日常のあらゆる対面コミュニケーションに影響し、人々の音楽活動やスポーツイベントなども制約を受けることになりました。当社の遠隔コミュニケーション技術は、このような制約に対し新たなソリューションを提案しています。

その一つである『SYNCROOM』は当社が独自に開発した遠隔合奏技術『NETDUETTO®』を採用した、離れた場所からリアルタイムに音楽セッションを楽しめるアプリケーションです。既存のIP電話やウェブ会議システムでは避けられなかった「音の遅延」を、音楽合奏に許容される範囲まで小さくしました。演奏中もオーディオの遅延幅を監視し、快適で自然な合奏を実現します。『SYNCROOM』の前身となる『NETDUETTO β』は、コロナ禍以前より場所にとらわれずにセッションできる遠隔合奏ツールとして利用者を拡大してきましたが、現在では『SYNCROOM』を活用して文化祭の音楽ステージをウェブ開催したり、リモートセッションのライブ配信をしたりするなど、さらに幅広いシーンで音楽の楽しみを支え利用者を増やすとともに、関連製品の販売にもつながっています。

『Remote Cheerer powered by SoundUD』は、スマートフォンをタップするだけで、競技スタジアムなどに、離れた場所から声援を届けることができるリモート応援システムです。スタジアムのスピーカーから拍手や歓声を流したり、ファン同士が交流できるバーチャル空間を提供しています。無観客試合などでスタジアムに行くことができないサポーターやファンの方、病気やケガで入院されている方などがリモート応援できるようになり、サッカー、野球、バスケットボール、ラグビー、アメリカンフットボール、プロレス、陸上などの試合で活用されています。

また、音楽イベントに関わる全ての方に注目されているのが、次世代ライブビューイング『Distance Viewing』です。『DistanceViewing』の一番の特徴は、アーティストのライブパフォーマンスを音響データや映像データ、照明データとして記録し、離れた場所にあるライブ会場で忠実に再現できることで、前述の『Remote Cheerer powered by SoundUD』と連携すれば、ファンの声援を現場に届けることもでき、ライブ特有の一体感を演出します。コロナ禍により大人数でのイベント開催や遠隔地への移動が制限される中、感染拡大対策と動員・収益回復を両立する手段として期待が集まっています。

音楽やスポーツを通じた仲間との新たな過ごし方や、これまでになかったイベントの楽しみ方を創出し、より多くの人々のつながりを実現する遠隔コミュニケーション技術は、これからさらに需要が高まることが予想されます。当社は音に関する豊富な知見とネットワーク技術でさまざまなソリューションを提案し、SDGsの理念に沿った持続可能な社会の実現に事業を通じて貢献していきます。

[ 画像 ] オンライン遠隔合奏サービス『SYNCROOM』

オンライン遠隔合奏サービス『SYNCROOM』

[ 画像 ] 次世代ライブビューイング『Distance Viewing』

次世代ライブビューイング『Distance Viewing』