アフリカン・ブラックウッド

クラリネットやオーボエに使う貴重な木を村の人たちと共に未来に届ける、
日本から遠く離れたアフリカのタンザニアでサステナブルな森づくりが進んでいます。

[メインビジュアル] アフリカン・ブラックウッド

アフリカン・ブラックウッド African Blackwood

学名:Dalbergia melanoxylon
IUCNレッドリスト Near Threatened
ワシントン条約 CITES 附属書II 掲載種

音楽、楽器業界では「グラナディラ Grenadilla」と呼ばれ、クラリネットやオーボエ、ピッコロなどの木管楽器の管体に広く使われています。管体には主に心材が使われ、この心材は、数ある楽器用木材の中で最も重く(気乾密度1.1~1.3 g/㎤)、最も特徴的な木材です。その名前の由来の通り黒色の材色が特徴的で、カキノキの一種である黒檀(Ebony)と混同されることがありますが、本来は楽器用木材として名高いローズウッドの一種(Dalbergia spp.)で、ローズウッドの特徴である紫系の色調を含んだ黒紫色の材色を呈します。
東アフリカのタンザニア、モザンビークを中心に、セネガル、ナイジェリア、ケニアなど、アフリカ大陸のサブサハラ南部に広く分布しています。主な産地はタンザニア南部とモザンビーク北部です。タンザニアの第1言語であるスワヒリ語ではMpingoと呼ばれ、タンザニアの国木(National Tree)に指定されています。

材面写真
製品の写真

プロジェクトの概要

アフリカン・ブラックウッドを持続的に使えるサステナブル資源にしていくため、タンザニアの現地NGO(Mpingo Conservation & Development Initiative:MCDI)との協働により、住民参加型の森林経営による資源保全を進めているプロジェクトです。本プロジェクトは国際協力機構(JICA)や林野庁など数々の事業に採択され、地域社会と一体となった資源保全の実現向け、おとの森活動を象徴するプロジェクトとして進行中です。

プロジェクト対象地域

タンザニア リンディ州

タンザニア リンディ州

FSC認証と住民参加型森林

MCDIと地域農村はコミュニティ単位での森林管理を行い、世界的な森林認証であるFSC認証を参画コミュニティ全体で取得しています。現在、その対象地は16の農村で約300,000 haに及びます。森林認証を取得した農村は、それぞれの森林から樹木を伐採し、買い手がつくことにより得た利益を農村の公共事業と森林管理に割り当てています。

コミュニティ森林
コミュニティ森林
森林での生態調査の様子
森林での生態調査の様子

成長と主な用途

森林から伐採されたアフリカン・ブラックウッドは、そのほとんどが木管楽器用に製材されます。枝分かれによる節、成長時の割れが多く、木管楽器に適した品質を得るために製材時の歩留まりは10%以下に留まります。楽器好適の品質と量を確保するため、森林では多くの個体が1年間で伐採されていきます。成長時に節が多いのは、森林の中でアフリカン・ブラックウッド太陽光を求めてあらゆる方向に枝を伸ばすためです。また、重硬である木材に育つため、成長時に内部に歪が蓄積しやすく、また林内で火災が頻発することで樹幹が損傷を受けて割れが多く入ります。このような特徴は、木を使う側としては問題になりますが、生き物として樹木が過酷な環境で生き残るための生存戦略なのです。

アフリカンブラックウッドの成木
アフリカンブラックウッドの成木
原木の断面
原木の断面

資源を残すための植林技術の導入

森林における木材資源の回復は、樹木の天然更新と成長速度に依存します。しかし、アフリカン・ブラックウッドは100年以上の成長期間を要し、天然更新が進みにくい傾向にあります。そこで、天然更新を促進するために、植林技術の研究開発、技術導入を進めてきました。森林内のギャップと呼ばれる林冠の開いた空間に、皆伐などの林地造成をせずに植林する林内植栽(エンリッチメントプランティング)手法を採用し、1年サイクル、かつ植栽後のメンテナンス不要の植栽技術として、現在4つの村で植栽活動を進めています。

アフリカンブラックウッドの植林
アフリカンブラックウッドの植林
村に設置した苗畑
村に設置した苗畑

木を効率良く使うための成形技術 WFM

アフリカン・ブラックウッドを製材すると、その90%近くは製材工場に未利用材として放置されます。ヤマハと京都大学との共同研究から生まれたアフリカン・ブラックウッドの木材流動成形技術(WFM:Wood Flow Molding)は、アフリカン・ブラックウッドの性質を引き継ぎ、節や割れを問わず木材を3次元成形するものです。希少木材の性質を引き継いだまま、今まで用途がなかった木材を効率よく新たな楽器に変えるという、総合楽器メーカーのヤマハだからこそできる、森林のことを考えた木材加工技術です。

電子ピアノ TORCH T01
電子ピアノ TORCH T01
WFMを実装したTORCH T01の鍵盤
WFMを実装したTORCH T01の鍵盤

農村社会での変化

このプロジェクトを通して、農村では様々な変化が生まれました。農村で伐採された原木に買い手がつき、村の公共事業に割り当てる予算が大きくなったことでゲストハウスや井戸、公共のトイレ、集会所の新設など生活に必要なインフラが整えられています。また、植林活動を継続することで、樹木を育てる、未来のために森林保全を考える人が増えています。活動を継続することこそ、未来に繋がる架け橋なのかもしれません。

村の小学校の開校式で新しい制服を受け取る小学生たち
村の小学校の開校式で新しい制服を受け取る小学生たち
村の中学校に新しく蓄電池が導入された
村の中学校に新しく蓄電池が導入された