社長メッセージ

[ 画像 ] 取締役 代表執行役社長 中田卓也

「なくてはならない、個性輝く企業」を目指し、社会の変化を捉える取り組みを加速します

はじめに、COVID-19によりお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、影響を受けられた全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。

2020年から続くCOVID-19による多大な影響をヤマハも免れることはできませんでした。製品群や事業によりポジティブな影響とネガティブな影響の両面がありましたが、とりわけ下期にかけての供給不足に伴い売上が伸びを欠き、2022年3月期を最終年度とする中期経営計画「Make Waves 1.0」の定量目標達成は現実的ではなくなったといわざるを得ません。しかしながら、私たちが進んできた方向性そのものは決して間違っておらず、むしろ予想していた未来がCOVID-19によって想定より前倒しで近づいてきたという感触を得ています。そのため、私たちが掲げてきた各施策をよりスピードを上げて実行していくべきだと再認識しました。

 ポジティブな面では、ステイホームという状況が続き、窮屈な思いをされている方々が多い中で、音楽の果たす役割が大きくクローズアップされる機会となりました。当社の事業では、デジタルピアノやポータブルキーボードといった電子楽器、ギター、アコースティックピアノなどの需要は堅調で、厳しい状況の中でも人々の心を満たすことに貢献できたのではないかと思います。一方、ネガティブな面で最も影響を受けたのはサプライチェーンです。私たちは東日本大震災の経験から、生産・調達の分散を進めてきましたが、全世界で同時にパンデミックが発生し、全ての工場を止めざるを得ない状況は想定していませんでした。需要が高まっているにもかかわらず、十分に商品を供給できなかったことは大きな反省点です。また、震災のような災害は起きた直後の被害が大きく、そこから徐々に回復していきますが、今回のCOVID-19では感染が拡大し続け、収束が見えないという点も大きな違いでした。これを教訓に、今後は在庫保有にメリハリを利かせたり、生産システムに柔軟性を持たせるなど、サプライチェーンに対する考え方を多元的に改め、コストや効率性の追求だけでなくレジリエンシーを高める工夫が必要と感じています。当社は幅広い楽器セグメントを持つため、他社より影響が大きかった分、遠隔化・DX化を素早く実装する必要に迫られ、業界の中では開発・生産・販売面で革新的な手法に先んじて移行できたと感じています。

当社は現在、2020年3月期から2022年3月期にかけて3カ年の中期経営計画(以下、中計)を推進しているところですが、現中計に至る道程を振り返りますと、「YMP125」(2010/4~2013/3)では「経営基盤再構築」を、「YMP2016」(2013/4~2016/3)では「収益力の強化」を、前中計「NEXT STAGE 12」(2016/4~2019/3)ではさらに1段階上の成長ステージに向けて「ブランド力の強化」を、それぞれ図ってきました。そして2019年4月からは、「なくてはならない、個性輝く企業」になるという経営ビジョンの実現に向け、「顧客・社会とのつながりを強化し、価値創造力を高める」ステージと位置付けた「Make Waves 1.0」を始動しています。

 ここからは当社の各主要事業と4つの重点戦略に沿って、2年目を終えた中計の進捗状況をお伝えします。

ー 楽器の種類により業績の明暗が分かれる結果に

楽器事業では、デジタルピアノ、ポータブルキーボードやギターの需要が旺盛でしたが、供給が追い付かず制約を受けました。一方、管楽器は、吹奏楽活動の停止、学校の閉鎖などに伴い、需要が低迷しました。管楽器は呼気を使った演奏法による飛沫感染への警戒感もあり、当面の間は苦戦が続くと想定しています。楽器事業全体で見ると業績はCOVID-19により苦戦を強いられ減収減益となりましたが、その中でも価格の適正化やコストダウンなどの施策は着実に進めることができたと認識しています。新たな価値の創造という点でも、サクソフォンに先進デジタル技術を融合したデジタルサックス『YDS-150』や、小型ながらリアルなサウンドをワイヤレスで実現したギターアンプ『THR30IIA Wireless』など、デジタルとアコースティック技術を融合し感性を組み合わせた当社ならではの個性際立つ商品の開発を進めることができました。

デジタルサックス『YDS-150』
— 苦戦した中でICT機器は今後に期待を抱かせる成長

音響機器事業も、COVID-19の影響は明暗が分かれ、全体では減収減益となりました。サウンドバーなど家庭で使用されるAV機器はステイホーム需要を捉えて好調だったものの、供給不足が響きました。業務用音響機器は音楽イベントの自粛に伴い低迷しましたが、テレワークやリモート会議の普及によりICT機器が大きく伸長しました。私たちは、業務用音響機器とICT機器の技術の融合によって物理的な距離の制約を超えた音・音楽のシンクロを実現し、新たな価値を生み出したいという想いで、これまで技術開発を進めてきました。それが、オンライン遠隔合奏サービス『SYNCROOM』やリモート応援システム『RemoteCheerer powered by SoundUD』として結実し、人の移動が制限される状況の社会ニーズに合致したサービスとして話題になりました。どちらもこれから事業化を目指す段階ですが、COVID-19収束後のニューノーマルにおいても、こうした離れていても人とのつながりを持ちたいという人々の欲求は不変であり、今後も社会のお役に立てると考えています。

リモート合奏サービス『SYNCROOM』
— 車載向けオーディオシステムを出荷開始

部品・装置事業では、自動車用内装部品とFA機器が好調で増益となりました。BtoBでも私たちが得意な「音」の領域で事業拡大すべく、成長市場である車載向けオーディオシステムに注力してきたところ、中国の自動車メーカー複数社で採用が決まり、2020年11月から量産出荷が始まっています。単純にスピーカーを搭載するだけでなく、アンプをはじめ車室内の音に関する多様なソリューションを提供し、かつヤマハのロゴを冠するオーディオを搭載した最先端のEV(電気自動車)が市場に投入されることで、ブランド力のさらなる強化にもつながると期待しています。

吉利グループの「ZEEKR 001」に搭載されるヤマハブランドオーディオ
— リアルとデジタルでブランドを強化

COVID-19の状況下でもリアルとデジタルの両方のアプローチを駆使してお客さまとの接点を増やし、強化しています。国内では銀座と名古屋の直営楽器店を改装し、体験型のブランドショップとしてリニューアルオープンしました。ご来店いただいたお客さまに「ヤマハがおもしろくなった」とSNSで発信していただき、着実に当社のメッセージが伝えられていると感じています。中国ではライブコマースといういわばインターネットを使った対面販売など先進的なマーケティングを行っており、この仕組みは日本や他の地域でも取り入れています。さらに中国では中計目標を上回るペースでリアルの販売拠点も拡大させており、非常に順調に市場浸透が進んでいます。また、インドでも独自のECサイトを構築し来訪者も増えており、好調なスタートを切ることができています。

ヤマハ銀座店ブランド体験エリア「key between people」

 顧客情報基盤(CDP)の構築は国によって進捗度合いは異なるものの、一定の水準までデータの蓄積と部分的な活用が進みましたので、これからは本格的な運用のステージになっていきます。社内向けのYamaha Marketing Universityの開設や、各事業部門でのスキルアップのための講座の開講など、ライフタイムバリュー(LTV)を最大化させていくための土壌づくりも行っています。

 私たちの商品は、実際に弾いたり使っていただくことでその良さを感じ取っていただけることが多いため、リアルの場は今後も大切です。COVID-19においても店舗の強化や店舗数の拡大を進めているのはそうした狙いがあり、ニューノーマルの世界ではリアルとオンラインのハイブリッドのバランスが重要になると考えています。一方で、実際に商品を手に取る機会を経ずにECを通じて購入する購買パターンはこれから間違いなく広がっていきます。そこではブランドに対する信頼感が多くのお客さまにとってよりどころになるはずです。大変ありがたいことにヤマハブランドは現在私たちにとっての強みになっていますが、今後はそれをより一層磨いていかなければなりません。そのために重要なのは継続性です。現在進めている戦略をスピード感を持って実行し続けていきたいと思います。

 ギターもこの状況下においてお客さまの裾野が広がっています。当社のギター事業は欧米での中高級価格帯のシェアに課題を抱えていたことから、2011年に若者向けの『Aシリーズ』を投入し、中級価格帯を強化してきました。米国はじめ主要地域ではこの施策が進捗し、収益性の向上に貢献しています。また、アジアでは当社製品のブランドイメージが高く、シェア拡大と単価の向上が並行して進んでいます。

— ヤマハならではの技術と感性の掛け合わせ

先述したデジタルサックスや、話しかけると歌って会話するコミュニケーションロボット『Charlie™(チャーリー)』などは新たな価値創造の成果といえるでしょう。遠隔会議用ワンストップサウンドソリューション『ADECIA』などもCOVID-19の影響で高まった新たなニーズを捉えた製品で、人々のニューノーマルに向けた柔軟な働き方や快適なコミュニケーションに大きく貢献しています。また、『SYNCROOM』や『Remote Cheerer powered by SoundUD』も、実証実験段階でユーザーに大変喜んでいただくことができました。接触を避けて人と人がつながることができるという、現在の社会課題の解決にもなり、技術精度の向上や不具合の修正などの品質面をクリアすれば、必ずビジネスにつながると確信しています。成長が期待される『車載向けヤマハブランドオーディオシステム』においては、スピーカー、アンプ、信号処理の全てにおいて楽器の音の再現性にこだわった設計と車室内のサウンドに関するさまざまなソリューションにより、車の中で音楽を最高のレベルで楽しむことができる感動体験を提供しています。当社は基礎研究を素材レベル開発から継続して知見を積み重ね続けており、保有する多様な技術と感性を融合することで、ニューノーマルのデジタル社会で新たな価値を生み出せること、お客さまのLTV向上に貢献できることを実感しました。今後も、私たちの強みである技術と感性を組み合わせた新たな価値を生み出すために継続して積極的な研究開発投資を行っていきます。

— 高付加価値による収益性向上を追求する段階へ

中計目標では3年間でネット55億円のコスト低減を掲げており、初年度は20億円と順調に進捗していましたが、2021年3月期は供給不足の中で生産の維持を何よりも優先したため、残念ながら想定通りにコスト低減を進めることはできませんでした。しかし、それでも逆に大きなコスト増加にならなかったことは前向きに受け止めています。前述のように今後はコスト低減一辺倒ではなく、サプライチェーンのレジリエンシーも重視していく方針です。その一方で経費はメリハリを意識しながら強く引き締めており、固定費の引き下げも追求しています。COVID-19を契機に進めているこれらの取り組みは収束後に間違いなく生きてきますので、中長期的には収益力強化を加速していけると考えています。

 価格の適正化に関しては、市場に対して一律に適切な価格に上げるという施策は一巡したので、現在は新たな価値のある商品を提供し、それに見合った対価をいただくという次のフェーズに移ってきています。例えば先述した『THR30IIA Wireless』は、従来モデルの3~5倍の価格にもかかわらず、お客さまに大変好評をいただいています。もちろん部品などのコストの増加もありますが、それ以上に私たちが従来にないコンセプトで新たな価値を付加し、それがお客さまにも評価していただけているのだと思います。高収益な企業の実現に向け、引き続き取り組みの深化を図っていきます。

— サステナビリティ委員会を発足

社会価値の創造が企業価値の向上につながるという考えで事業を通じた社会課題の解決、SDGs 達成への貢献に取り組んできた私たちにとって、2021年3月期は音楽の力を改めて強く感じた1年でした。以前から取り組んでいるスクールプロジェクトの活動は、対面で行えないため滞るのではないかと心配しましたが、実際には強いニーズがあり、中計目標の累計100万人に対して、2年目を終えたところで71万人まで広げることができました。COVID-19の影響がある中で想定以上の成果となりましたが、それだけ人々が音楽を求めていることの証左ではないかと思います。

スクールプロジェクト(新興国での器楽教育普及)

2021年1月には、マネジメントが全社のサステナビリティの取り組み状況を直接モニタリングする機関としてサステナビリティ委員会と、その下部組織として気候変動、資源循環、調達、人権・D&I、社会・文化貢献をテーマとした5つの部会を発足させました。まずは現状のマテリアリティ(サステナビリティ重点課題)を切り口にした議論を行い、グループ全体でサステナビリティへの意識を醸成していきます。マテリアリティは定期的に見直していきますが、その特定においてはよりヤマハらしさを追求し、将来は事業展開の軸にしていきたいと考えています。社会や環境に貢献するという考え方を、これまでの経営にアドオンするのではなく、経営の中心に据えることで社内に発想の転換を起こしたいのです。例えば気候変動問題は、当社の商品に使われている希少木材に大きな影響を及ぼす可能性があります。それに対し、カーボンニュートラルを目指した取り組みによって森林保護や資源の循環に貢献するのはもちろんですが、並行して、希少木材の代替となる素材を開発していくことも重要でしょう。そこで求められるのは私たちが得意とするテクノロジーの力です。当社には、世界の楽器メーカーの中でも率先して、テクノロジーで社会課題を解決していく使命があると私は思っています。経営ビジョンで掲げている「なくてはならない、個性輝く企業」になるためにもサステナビリティの視点がより一層重要になると考えています。

 また、サステナビリティは決して一部の人だけが取り組むものではありません。委員会や部会はあくまで議論し施策を打ち出すのが役割であり、それらの施策を経営陣や従業員が全員で知恵を出し合い、前に進めていくことが大切だと思っています。

当社は2017年に指名委員会等設置会社に移行して以来、社外取締役が過半数となる体制で監督機能を強化してきました。2021年6月の株主総会をもって社外取締役が1名加わり、社内出身の取締役2名に対し社外取締役は従来の6名(2020年6月までの体制と同様)となりました。取締役会の実効性評価は毎年外部専門家を入れて行っており、抽出された課題に対する改善を取締役会で約束し、翌年はそこにフォーカスして実行しているので、毎年着実に改善しています。

 2020年に設けた監査役員という仕組みは、監査委員からも前向きに評価していただいており手応えを得ています。当社の監査委員会は、客観性を向上させ監査機能をより強化するために独立社外取締役のみで構成していますが、常勤監査委員がいないことで情報収集の面で難点がありました。そこで、監査委員会の手足となりながら、かつての監査役の権威も有する立場として、執行役とも執行役員とも異なる監査役員を新設しました。監査委員からは内部監査部のさらなる強化の提言があり、人員や的確な人材を拡充させています。

 加えて、次期後継者および次世代経営者の育成もガバナンスにおける重要なテーマと認識しています。指名委員会では、次期後継者の候補人材をピックアップし評価する仕組みや、客観視するために外部機関への委託を設けて360度評価を行う仕組みを作り、その評価データを蓄積し共有できるようにしました。人材プールは、経営者の次は執行役員クラスなどと順に層を広げており、現在は若手層も社外取締役に評価してもらう段階まで来ています。また、取締役会では、次世代育成プログラムを実施しており、将来の候補人材との議論や対話の場を設けています。次世代経営者には、優れたリーダーシップやグローバル感覚など一般的に求められる素質も要求されますが、それに加えてヤマハらしさを理解できているかどうかも重視していきます。

 リスクマネジメントについては、リスクを分類したリスクマップを作り、現時点でどれだけ対応できているかを数値化して優先順位付けを行っています。リスクマップは毎年見直しを行っており、2021年3月期は調達リスクのレベルの引き上げなどの改定を行いました。これまでは部材調達は当然のようにできていたため損害規模も発生頻度も「小」と見なしていたのですが、COVID-19でサプライチェーンのレジリエンシーの重要性をこれまで以上に痛感し、損害規模は「大」として位置付けました。

 また、コンプライアンスも重要なテーマだと捉えています。当社はハラスメントなどのコンプライアンス違反を決して許さないというメッセージを私から何度も発信し、従業員一人一人のマインドセットから組織風土を醸成すると同時に、強固な体制づくりにも取り組んでいます。ウェブコンテンツによる啓発活動や外部相談窓口の拡充など、国内での取り組みは着実に進んでおり、グローバルでも内部通報窓口の設置が完了し、今後はヘルプラインの周知啓発、マニュアルの整備、継続的な従業員教育など愚直に改善を進めていきます。従業員とのエンゲージメントはますます重要になる現中計の最終年度として、また次の中計のスタートに向けて、2022年3月期に私が特に大切にしたいと考えていることが2つあります。一つは先に申し上げた、サステナビリティ意識の社内全体への浸透です。そしてもう一つは、従業員同士が想いを素直にいい合える、またリスペクトし合える環境を作り上げることです。

 COVID-19は人の働き方を再考させられる機会になりました。リモートワークとオフィスへの出勤については、どちらが良いと決めるものではなく、それぞれの役割や状況に適した方法を選ぶ形が良いと考えています。国内では2020年10月にリモートワークを制度化し、COVID-19が収束してもハイブリッド型を継続していく予定です。また、リモートワークを取り入れることで、従来のメンバーシップ型からよりジョブ型への制度移行も必要となります。一律のルールではなく各国の労働法に沿った柔軟な対応が求められますし、評価方法も変化し、仕事に対して報酬が得られるという仕組みに変わっていくことは間違いないでしょう。人事制度は時代に合ったワークライフバランスの考え方のもと、毎年少しずつ変更してきましたが、新しい人材マネジメントの考え方に基づく新たな制度設計を考えるべき時が来たと思っています。

 仕組みも大切ですが、私がとりわけ重視しているのは従業員とのエンゲージメントです。2020年に行った全従業員向けの意識調査では、6,500名にのぼる実に多くの人が記述式の設問も回答してくれました。私はそれらの全回答を読み、多くの気付きを得ることができましたが、最も大切なのは会話やコミュニケーションであり、それも会社と従業員、上司と部下、同僚など、縦横斜めのさまざまなレベルでのコミュニケーションが必要だということが改めて分かりました。そこで、この1年間で私は世界中の従業員と40回以上(2021年6月末現在)、オンラインでの対話を行っています。また、トップである私が始めたことで、本部長や部長、課長も同様に対話を行うようになってきました。リモートワークになると偶然会って話す機会は減りますが、意識さえすればむしろこれまでより多くの人と話すことができるので、この環境を逆手にとって社内のコミュニケーションを一層活発にしていきたいと考えています。

リモートでの従業員との対話

 多様性が当社の新しい価値創造の源泉となるとの考え方のもと、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の意識を高める取り組みも進んでいます。セミナーをオンラインで開催しているほか、女性の一層の活躍を後押しするため、経営陣と本部長クラスで議論を行う人材開発委員会の中に女性活躍推進部会を設け、女性を取り巻くさまざまな社会的障害を積極的に取り除く取り組みも行っています。こうした施策を打つことで社内の意識も徐々に変わってきていますが、意識改革は一朝一夕に達成できるものでもなく粘り強く全社で取り組んでいく所存です。D&Iは次の中計では、今以上に重要な位置付けになるでしょう。

 現在の中計は残り半年となりました。4つの重点戦略に沿ったさまざまな取り組みは着実に進められている一方、冒頭でも申し上げたように計画目標の達成は難しく、2022年3月期はCOVID-19以前の状態に立て直し、次の中計への準備を固める年になると捉えています。私たちがこの数年間進んできた道は間違っていないという認識のもと、全社戦略の方向性は変えず、より加速させていく方針です。2021年3月期後半の事業環境を見ていると、ビジネスでの人の移動のように、COVID-19が収束しても以前の状態にまで回復しない需要とは異なり、当社の事業については現在落ち込んでいる需要も戻ってくるだろうという実感を持っています。また、楽器業界で大手他社メーカーの再上場もあり、資本市場における注目度の上昇、業界全体の活況化を喜ばしく思います。

 当社が生業としている楽器や音響機器は、生活必需品ではありませんが「人間必需品」だと私は考えています。COVID-19で大変厳しい状況の中でも人々に必要とされていることを実感し、その想いを新たにしました。人間らしく生きたいという世界の人々の根源的な想いにしっかりと応えられるような、心を豊かにしていくモノやサービスを生み出していけば、社会の発展に貢献するとともに、私たち自身もまだまだ発展していくことができるはずです。

 株主や投資家をはじめとしたステークホルダーの皆さまとは、オンラインも活用して対話の機会をなお一層充実させていきたいと考えています。今後とも引き続き変わらぬご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

2021年9月
取締役 代表執行役社長
[ 画像 ] 取締役 代表執行役社長 中田卓也