スピーカー用素材技術

音響機器における素材開発

スピーカーをはじめとする音・音楽の再生機器は、様々なシーンで使われており、それぞれのシーンに応じた「音質」が求められます。例えば、オーディオスピーカーで音楽を聴く場合は、フラットで歪みが少ない音質が好まれることが多いのに対し、電子ピアノのスピーカーから自分の演奏音を聴く場合は、レスポンスや音抜けの良さが重視されることがあります。このように、シーンごとに異なる音質要求に応えるため、ヤマハではスピーカーの各部品の素材を研究しています。音を放射する振動板だけでなく、その外周を支持するサラウンドや、電気信号から機械振動への変換に携わる磁気回路部品に至るまで、音質に大きく影響するスピーカー部品全般を研究対象としています。

科学的根拠に基づく素材開発

スピーカーの「音質」を操作するためには、使用する部品の素材物性が振動・音にどのように影響を及ぼすか、原理を捉えていくことが重要です。ヤマハでは、素材の各種物性計測からスピーカーの振動・音響計測、感性工学手法に基づいた音質評価まで、一連の計測・評価を実施し、素材物性と音質の関係性を科学的に紐解きながら、素材開発を進めています。

複合材振動板

振動板に使用する素材の場合、一般的に比弾性率(弾性率/密度)と内部損失の両方の物性が、共に高いことが望まれます。しかし、この二つの物性はトレードオフの関係にあり、両者のバランスによる音作りが振動板素材開発のカギとなります。ヤマハでは、内部損失の高い樹脂に硬いフィラーを複合化させるアプローチで、振動板に適した素材物性設計を進めています。
さらに近年では、フィラーの形状や添加量による物性制御にとどまらず、樹脂素材の結晶化度や結晶配向、フィラーと樹脂の界面密着など、よりミクロな視点での音質設計にまで踏み込んでいます。 また、設計した振動板を安定的に製造するためには、フィラーを均一に分散させる混練技術、薄い振動板を精密に成形する技術を駆使する必要があります。これら要素技術を自社で確立することで、ヤマハ独自の振動板素材を造り出すことに成功しています。

高制振サラウンドゴム

振振動板の周囲にあるサラウンドの場合は、振動板のピストンモーション*1 に対して追従する機能が求められます。また、振動板の分割振動*2 を抑制する制振機能を持ち、分割振動帯域で周波数特性が乱れるのを防ぐという重要な役割も担います。
こうした機能を実現するために、素材物性としては粘弾性特性(硬さや制振特性)が重要な指標となり、特に制振特性がスピーカーの音質に大きく影響することが分かってきています。私たちは、これまでの研究の成果を踏まえて、サラウンドのベース素材となるゴムや機能性添加剤などの配合を工夫することで、粘弾性特性を制御し、周波数特性の乱れを抑制できる高制振サラウンドゴムを実現しています。

多様化するニーズへの対応

かつては、オーディオルームに大きなスピーカーを置いて音楽を楽しんでいました。現在、音楽コンテンツは気軽に持ち運べるようになり、音楽を楽しむ環境や、求められる音質の多様化が進んでいます。ヤマハでは、変化を続ける世の中のニーズに柔軟に対応するため、これからも科学的根拠に基づく素材研究を進めていきます。

関連項目

技術搭載製品

 TOYOTA社のセンチュリープレミアムサウンドシステムに、ヤマハで開発した複合材料振動板の1種が採用されています。