Vision
歴代のデザイン研究所所長が
ヤマハデザインについて語ります。
現ヤマハデザイン研究所所長
川田 学
在任:2008 -
期待を超え、感動に繋がるデザイン
デザイン研究所はヤマハのなかで唯一「研究所」という名を残す、少数精鋭のインターナショナルな組織です。その名称は「価値とは何か」「意味とは何か」を探究し続ける取り組みの表れであり「価値が価値になる瞬間」や「意味のイノベーション」を大切にしています。
ヤマハのデザインは「音・音楽の力で、人々の個性輝く未来を創る」という経営ビジョンと深く結びついています。デザイン研究所の使命は、このビジョンを製品やサービス、体験として具現化し「期待を超える価値」を生み出すことにあります。楽器で演奏家の感性に応え、音響機器ではエンジニアの信頼を獲得し、音楽を愛するすべての人に心震える瞬間を届ける。見えない音や音楽を扱うからこそ、感情に響くディテールと「本当に伝わり、『ともに』創り得ているか」を問い続ける姿勢を重視しています。価値のやり取りを支えるためには、デザイナーが自らのアイデンティティを鍛えることも必要不可欠です。
本質を押さえ、革新的で、美しく、でしゃばらず、社会的責任を果たすデザイン。それが、デザイン研究所が掲げている理念です。矛盾するようなキーワードが並びますが、相反する要素のなかに解を見つけ出すことこそ、デザインの醍醐味でしょう。これらの理念はデザイナー一人ひとりが自分なりの解釈や表現を導き出すための問いであり、個性を尊重しながら共通の問いを共有することでヤマハらしさが生み出されています。
デザインとは「思いをカタチにする」こと。それは社内の各部門が有する様々な企画意図や設計思想を編み上げ、適切に表明すること。カタチは立体物の造形にとどまらず、ソフトウェアや空間、ストーリーやコンセプトなど体験可能なあらゆるものに及びます。その際に最も重要なのは、ディテールへの徹底したこだわりです。細部に宿る精度こそが、思いが本当に相手に伝わるかを左右するからです。また、デザインは一方通行ではなく、伝わって初めて意味をもちます。デザイナーの独りよがりになっていないか、「伝えたいこと」と「伝わったこと」が一致しているかに心を砕く。デザインは「コミュニケーション」であり「意味づけ」であり「思いやり」だともいえます。デザインそのものだけでなく、デザインは何をすべきかを研究し続ける組織であり続けたいと考えています。
1987年に制定された
ヤマハデザイン理念
INTEGRITY
本質を押さえたデザイン
本質を押さえたデザイン
INNOVATIVE
革新的なデザイン
本質を押さえたデザイン
AESTHETIC
美しいデザイン
美しいデザイン
UNOBTRUSIVE
でしゃばらないデザイン
でしゃばらないデザイン
SOCIAL RESPONSIBILITY
社会的責任を果たすデザイン
社会的責任を果たすデザイン
元ヤマハデザイン研究所所長
高梨 廣孝
在任:1969 - 1996
「ヤマハらしさ」を表現するデザイン
ヤマハ株式会社にデザイン部門が誕生したのは1963年でした。当時は「デザイン」というとまだ輸入品というイメージが強く、国内で自社にデザイン機能を持つ会社はまだ多くありませんでした。そんな中で、それまで外部に依頼していたデザインを徐々にインハウスで手がけていったのは「ヤマハらしさ」を表現するデザインを、自らの手で確立する必要があると考えたからです。国内外の錚々たるデザイナーたちとのコンペティションで切磋琢磨し、ヤマハ初のエレキギターのデザインではトップアーティストのもとに何度も足を運んで貴重なアドバイスをいただきながらデザインするなど、さまざまな経験を積みながら徐々に実力を蓄えていきました。デザインは主観的なものであり、ひとりひとりのデザイナーの感性を大切にしなければなりません。同時にヤマハというブランドのもとで世の中に出ていく製品には、共通した明確なアイデンティティが必要と考え、1987年にデザインフィロソフィーを制定しました。このフィロソフィーは今もヤマハのすべてのプロダクトに宿っています。
元ヤマハデザイン研究所所長
吉良 康宏
在任:1996 - 2008
歴史を尊重しながら新しい楽器を創造する
楽器は音楽の変化とともに常に進化を続けています。80年代、デジタル音源の登場によって、楽器の形状デザインの自由度は飛躍的に高まりました。無限の可能性を前にした時、私たちが最も大切にしたのは「楽器や音楽の永い歴史を尊重した上で、次の時代に向けた新しい楽器を創造する」という姿勢でした。楽器は単なるモノではなく、人との関係性が非常に重要な道具です。例えばウインドMIDIコントローラー「WX7」は、デジタル技術によって楽器の存在を最小限まで削ぎ落とすことで今まで以上に演奏者をクローズアップしました。モノ中心ではなく、人を軸としたモノ作り。それは時代が変わっても決して変わることのない、ヤマハデザインのコンセプトです。