江戸の洋琴
2021 -
千葉大学デザインコースとの産学共同で和家具様式のピアノをデザイン。
プロジェクト概要
もしも、江戸時代にピアノが日本で独自に進化したならば、ピアノはどのような姿になったでしょうか。
江戸時代の墨田界隈は、家計を助けるために武士がものづくりをしながら暮らすといった内職が盛んな地域でした。現在でも、その名残が町工場や伝統工芸として存在しており、その知見を、このたびの研究や考察にも活かしています。そんな江戸の下町で日本らしく架空の進化を遂げた幻のピアノを制作しました。
ヤマハデザイン研究所は、2021年より千葉大学工学部総合工学科デザインコース(墨田サテライトキャンパス)との産学共同研究を進めてまいりました。その一例である本プロジェクトがテーマとして取り上げたのは「日本独自のピアノの進化」です。ピアノが日本に伝来したのは、ヤマハの創業者である山葉寅楠が誕生した時代に近い幕末の頃といわれていますが、その後ピアノはその姿が極端に変わることはなく、当社でもヨーロピアンスタイルのピアノを製造し続けてきました。
そこで本プロジェクトでは「もしも鎖国時代にヤマハとピアノが存在したら、江戸の生活様式の中で進化を遂げたピアノはどのような姿がありえたか?」という思考実験を行いました。架空の世界を前提にした作品を、千葉大学デザインコースの学生とともに行った綿密なリサーチに基づいて制作しています。この活動を通して見えてきたのは、限られた物で豊かに生きる江戸の下町の生活の知恵と文化でした。
また、文化面のサステナビリティを重視することが環境面のサステナビリティに回帰するということを再認識するに至りました。SDGsへ向けた具体的な成果に関心が集まる今日ですが、また違った文化的視点からのサステナビリティの研究成果を提示します。
制作協力:みやび行燈製作所/株式会社間中木工所/有限会社創藝
※当プロジェクトに登場する作品は、ヤマハデザイン研究所のデザイナーが、千葉大学デザインコース(墨田サテライトキャンパス)にて授業を行った際のテーマと学生による作品を原案としています。
作品紹介
音籠
江戸時代にも風情のある虫篭に季節の虫を入れてその鳴き声を愉しむ風習がありました。虫の音を声のように感じるというのは日本独特の情緒だそうです。音と動きを同時に楽しむことができます。
原案:塙哲平
音影絵
障子は古くから江戸の暮らしに欠かせないものであるばかりではなく、光と気配だけをやわらかく伝えることから、影絵の舞台としても親しまれていた様です。もしそこに音楽が加わったなら、その影絵で紡がれる物語は一層深まったのではないでしょうか。二人で向かい合って影の動きと音楽で戯れます。
原案:中川景太
岡持琴
岡持は現代でも使われている料理や食器を運ぶ道具です。その名前の由来には諸説ありますが、「傍ら」を意味する小処(おか)や「宅外」を意味する外(ほか)」からとされています。大きな持ち手がいつも傍らにあり外へと持ちだすことを促し、様々な場所で季節の変化を感じながら演奏する機会を創ります。
原案:丸山新世
弾き箪笥
桐箪笥の元祖は、下町の火事の際、物をまとめて運ぶための知恵として生まれたと言われています。「祝いごとに箪笥を贈る」という文化にも着目し、子どものための大切なものをしまう小さな箪笥の引き出しに、知育玩具としての鍵盤をあしらいました。
原案:坂井千隼
音机
狭い長屋では、必要最低限で合理的な家具が重宝されたそうです。文机に鍵盤を仕込み、脚のシルエットには寺子屋机の様式を取り入れました。もしも江戸の町にヤマハの楽器店があったなら、新しい音楽の楽しみ方を広めるために、寺子屋音楽教室を開いていたでしょうか。
原案:新井律
透き間
狭く開放感のある長屋では、空間を上手に切り替えるための道具として間仕切りが重宝されたそうです。部屋の中央に置くのに相応しい間仕切りをピアノにしました。縦に並んだ音板の隙間を通して向こう側の気配や周りの空間を感じながら演奏するという体験価値を提案します。
原案:坂井千隼























