Design Insights
WLX333/WLX232
2026 / WIRELESS LAN ACCESS POINT
GOOD DESIGN AWARD
見せることで性能を引き出す、
Wi-Fi 7対応無線LANアクセスポイント。
Wi-Fi 7に対応するため、アンテナ配置や内部構造、筐体意匠を一体で設計しました。性能と外観の両面から導かれた姿です。
無線LANアクセスポイントは天井の柱裏などに隠されてしまうと本来の性能を発揮できません。
隠したいものから隠す必要のない存在にすることで、電波性能を最大限に引き出せると考えました。
双曲線に近似する一つの曲面で天面を構成。
対角に配置されたアンテナ部品に必要な厚みを確保しながら、それ以外を薄く仕上げることで軽やかなフォルムを実現しています。
回転対称形の曲面も、斜めに並ぶLEDも、特定の向きを示さないための選択です。
全方位に等しく電波を届ける性格を、造形そのもので表しています。
スケルトン空間では、躯体、配管、あらゆる要素が素材の質感のまま存在しています。
透過する樹脂やその奥に覗く内部の構成部品が、それらのひとつとして馴染むことを狙いました。
- Ryo Suzuki
- Designer
- Yamaha Design Laboratory
黒子を、表舞台に。
WLX333/WLX232は、ヤマハとして初めてWi-Fi 7に対応した無線LANアクセスポイントです。接続台数などスペックが異なる2機種を、共通の造形言語で展開しています。クラウドサービスやオンライン会議の普及により、無線LANは単なる通信設備ではなく、業務体験や空間体験を支える重要なインフラへと役割を広げました。しかし業務用の無線LANアクセスポイントは、「隠したい設備」として扱われることが多く、天井の柱裏や机の陰に設置され本来の電波性能を発揮できていないことも少なくありません。プロダクト自体が見せたくなる佇まいであれば、機器は適切な場所に置かれ、性能を発揮することができます。そこにデザインで取り組むべき課題があると考えました。
開発当初、メンバーで共有したのは、Wi-Fi 7の性能や信頼性を感じさせたい、それでいて空間に馴染むよう仕上げたいという、相反する2つの考えでした。そこでアンテナ配置と構成部品の関係について検証を繰り返し、それらを元に内部構造と筐体意匠を同時に設計しています。対角に配置したアンテナ部に必要な高さを確保し、それ以外を薄く仕上げることで、心理的性能要件と軽やかなフォルムを両立させました。
天面に用いた双曲線に近似する曲面は自然と強度を持つため、内部のリブを減らすことができます。これにより部品干渉を避けることができ、ヒケのない美しい曲面にもつながっています。WLX232はWLX333の造形を外周から10mm内側で切り出した関係にあり、同クラス最小級の設置面積に収まりました。設置に用いるマウントパネルも本体と同時に設計し、天井や壁面、スイッチボックスや卓上といった多様化する施工条件に応えられるようにしています。
今回、検討を重ねたポイントのひとつが、本体色です。ヤマハは業界では珍しく黒モデルの提供を継続してきたメーカーですが、今回はあらためて「黒を選びたくなる理由」から考え直すことにしました。当初は暗い空間に馴染むであろうと、黒からグレーまでの範囲で濃度を検討していました。しかし近年増加するスケルトン空間は暗めの設計が多く、むき出しの天井に加えて金属配管や照明、スピーカーなど、それぞれの素材が持つ質感のまま置かれています。ならば樹脂はありのまま透過させ、内部のアンテナをアンテナとして見せるほうが空間に馴染み、Wi-Fi 7の性能や信頼性も表現できるのではないか。そこからスケルトン仕様の検討が始まりました。この仕様では筐体の内部が透けて見えるため、エンジニアと共に構成部品の配置や仕上げを一つひとつ見直しました。透明樹脂で成型した筐体のサンプルに、紙に印刷したアンテナプレートのレイアウト図を重ねて見せたときの反応が、量産への判断を後押ししました。白モデルについては、過度に白くならない色味に調整し、クリーンな印象の空間で悪目立ちしないマットな仕上がりとしています。
会議室のカメラやスピーカーがそうであるように、この製品もそれ自体が目立つ必要はありませんが、その場の創造性を支えているものでもあります。私はこうした存在を「感性を刺激する黒子」と呼んでいます。今回はこの黒子をあえて表舞台に立たせました。隠す必要がなくなることで機器は適切な場所に設置され、安定した通信環境を支えることができます。オフィスやカフェ、学校や病院など、さまざまな空間に自然と存在し、快適な無線環境が当たり前になることを願っています。