Design Insights
NX-70A
2026 / WIRELESS HIFI SPEAKER
GOOD DESIGN AWARD
かたちのすべてが音のためにある、
オールインワンのワイヤレスHi-Fiスピーカー。
音のためのかたち。その一点だけを頼りに検討を重ね、平行な面を持たない筐体にたどり着きました。
バスレフポート、放熱口、入出力の端子。整然と並べるのではなく、互いが心地よく同居するリズムで配置しました。
カッパー色は、外からは見えない音質へのこだわりや技術を感じとっていただくためのあしらいです。
※写真の専用スタンドはSPS-70Aです
※写真の専用スタンドはSPS-70Aです
※写真の専用スタンドはSPS-70Aです
明るさを抑えたグレイッシュな白と、深みのある黒。細い支柱の上に本体が浮かび、床から天面までまっすぐに一本の軸が通ります。
専用フロアスタンドは、スピーカーの佇まいをさらに際立たせるようにデザインしました。
オーディオルームだけではなく、普段の暮らしのなかへ。
何気ないリスニングの時間が、特別な体験へと変わっていきます。
- Masafumi Futo
- Designer
- Yamaha Design Laboratory
- Ryusuke Baba
- Designer
- Yamaha Design Laboratory
音を磨いた先に現れるかたち。
NX-70Aは、楽器メーカーでもあるヤマハならではのオールインワンHi-Fiスピーカーです。アンプもネットワーク機能も一台に収め、Hi-Fiを初めて手にする人にも開かれた一台。これまでの製品とは立ち位置そのものが異なるからこそ、かたちも新しく模索する必要がありました。楽器然とした佇まいであること。それも、このデザインに求められた重要なテーマでした。
手がかりにしたのは、楽器が美しい音を奏でる原理そのものでした。箱形の筐体では、内部で反射した音が向かい合う面のあいだを行き来し、定在波となって響きを濁らせます。そこで、アコースティックギターの側面のように平行面を持たない滑らかな曲面によるノンパラレル構造を採り入れ、定在波そのものが生じにくい筐体にしました。楽器に似せたのではなく、音を突き詰めた結果として、楽器のような曲面が現れたのです。
基本外形の検討で最後まで残ったのは、天面を斜めにするか、水平にするかという選択でした。斜めに傾ければ上下の平行関係も解け、響きはさらに澄む。音のために形を決めているという姿勢も、見る人に伝えることができます。側面の大きなカーブは音の回折を抑え、ツイーター周りの3次元形状は指向性と音場の広がりを両立させます。上下のアルミプレートは、不要な共振を抑えると同時に筐体の剛性を高めています。それを留めるネジもあえて見える状態とし、構造の確かさがそのまま品位になるようにしました。
このデザインにとっては背面の佇まいも重要でした。楽器には、目に触れにくい内部にまで美しさが行き届いたものが少なくありません。グランドピアノは、演奏時に天板が開き、精巧な内部が姿を現します。その感覚を持ち込み、機能的に重要な要素にカッパー色をあしらいました。ピアノ内部のフレームから着想した色であると同時に、アンプの性能を支える導電素材の銅色でもあります。バスレフポートや放熱口、端子も、整然と並べるのではなく、互いが心地よく同居するリズムをもって配置しています。
要素はすべて、中心の軸の上に置いています。斜めに傾いた天面と同じ角度で専用フロアスタンドの天板を傾け、本体正面のカーブと同心円を描くように底面をかたちづくりました。リモコンにも、同じ造形言語を引き継いでいます。
色にも、同じ姿勢で向き合いました。ホワイトモデルには、明るさを抑えたグレー寄りの色調を選んでいます。暮らしの空間に、眩しいほどの白は存在しません。この落ち着いた白はしっとりとした湿度を感じさせ、色そのものに表情が生まれます。部屋に入ってまず目に飛び込んでくるのではなく、静かに調和してほしい。金属・樹脂・MDFと収縮率も製造方法も異なる素材が混在するなかで、この一つの色調にまとめ上げるまでには、設計者とともに調整を重ねました。
オーディオを精密機器としてではなく、楽器のように愛着の持てる暮らしのパートナーに。本体の形状は、そのすべてが音のためにできています。デザインの力で、音質に寄与できた。そう思える一台に仕上がりました。