「鳴らす力」と「動かす力」について考えてみる
Untitled Instrument
2022
Overview
二つのヤマハをつなぐもの
これは、ヤマハとヤマハ発動機のデザイナーが共通テーマのもとに取り組んだ思考実験的デザインプロジェクトです。今回のテーマは「UNTITLED INSTRUMENT(未定義の道具)」です。
私たちが日常で使う道具の多くは役割が決められていますが、子供たちは必ずしもそう捉えません。木のブロックが積み上げれば積み木に、互いに打ち鳴らせば打楽器にもなるように、道具の役割は使い手の発想によって変化します。つまり道具は、使われるまで役割が定義されていないとも言えます。本プロジェクトでは、この自由な発想に着想を得て、用途を限定しない道具のあり方を探りました。
そこで着目したのが、両社に共通する「空気」です。楽器は空気の振動で音を生み、乗り物は空気の圧力や流れを動力へ変換します。同じ空気を扱いながら、まったく異なる体験が生まれています。
本作品は、その空気を媒介に複数の役割を内包した道具として構想しました。空気の流れを切り替えることで音を奏でることも、プロペラを回して動きを生み出すこともできます。どちらが正しい使い方というわけではなく、音を楽しむのか動きを楽しむのか、その意味は使い手が決めます。
楽器でも乗り物でもなく、時にその両方にもなる。用途を与える前の道具の可能性を探ることで、「道具の定義」そのものを問い直す試みです。
Works
Untitled Instrument
音は物質の振動が波のように空気を伝うことで聞こえます。空気の流れを適切にコントロールすることで、心地よい音階を奏でることができます。一方、乗り物の心臓部であるエンジンも一見すると複雑な機構に見えますが、その原動力は空気圧縮と言えます。空気を効率よく圧縮し、ガソリン燃焼の力を借りながら、空気圧の力をピストンの往復運動に変えます。その運動はシャーシを通じて回転運動へと変換され、さらにはタイヤやプロペラを回転させることで推進力を生み出します。
同じ空気を原動力としながらも、それをどういったエネルギーに変換するかによって、まったく違う結果を生み出します。空気を物質振動のエネルギーへと変換すれば、それは楽器のような音を奏でる道具となり、推進力のエネルギーへと変換すれば、乗り物のような道具になります。空気という同じ源を持ちながらも活用のしかた次第でその道具の役割が大きく変わり、それはまるでもともと一つの企業であった両ヤマハの源流を示すかのようなオブジェクトでもあります。
使い方は、まず本体上側に取り付けられた空気ポンプを何度か押し込むことで、横側に設けられた空気タンクに空気が溜められます。その後、本体中央にあるバルブを捻り、透明管の空気の通り道をある方向へと開放させることで、圧縮タンクから空気が一気に解放されて管へと 放出されます。その放出された空気圧を利用することで、ラッパ形状の管の方に流れた空気は、その内部に取り付けられたハーモニカのリードが振動するためのエネルギーに利用され、音を奏でます。またもう一方のプロペラが取り付けられた管の方に流れた空気はピストンの往復運動へと変換され、プロペラを回転させ推進力を生み出します。
空気の流れをコントロールすることで、音を奏でたり、前進したりと全く違う役割を果たす道具になり、一つに制限されない自由な遊び方を促します。
Designer: Kazuya Washio/Yamaha Design Laboratory, Etsuto Mimasu/YAMAHA MOTOR DESIGN
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