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ブランドストーリー

Louise Paley

Women In Jazz創設者、アーティスト・マネジメント専門家

必要なのはインスピレーション。Louise Paleyがジャズ・シーンのジェンダーバランスについて語る

文/Tina Edwards

Louise PaleyはPACEレーベル、Women In Jazzという団体、そしてアーティスト・マネジメントの専門知識で女性ミュージシャンの現状を改革しています。

Women In Jazzを5年前に共同設立して以来、Louise Paleyはミュージシャン、とりわけ女性ジャズ・ミュージシャンのキャリアに多大な影響を与えてきました。Louiseの従姉妹であり共同創設者でもあるNina Fineとともに、メンター制度を創設し、マスタークラスを主催、英国の有名なフェスティバルと提携して、女性ジャズ・ミュージシャンにライブの機会を提供しています。また、新レーベルPACEの立ち上げや、高い評価を受けている2人のアーティスト(うち1人はヤマハのドラマーであるJas Kayser)のマネジメントなど、その勢いはとどまるところを知りません。「アーティストたちのキャリアを次のステージへと進めるお手伝いをし、彼女たちの音楽を世界中のオーディエンスへ届けることに、ずっと熱い情熱を注いできました」とLouiseは語ります。

「私が育った家庭では、音楽がとても重要なものでした。父はよくターンテーブルでNina(Simone)やHerbie Hancockのレコードをかけており、家の中に音楽がかかっていない部屋はありませんでした。両親は巧みにリビングルームとキッチンの間にピアノを置き、食べ物を取りにいくにはその前を通らねばなりませんでした」。この賢い配置のおかげでLouiseは才能のあるピアニストとなったのです。15歳でビッグバンドに参加し、大学では作曲を学び、優等卒業学位を取得して卒業しました。しかし、本当にLouiseのキャリアを形成したのは、彼女が卒業後に没頭したことでした。

「卒業後に働いていた団体では、ジャズの観点から才能を育てることを専門としていました。そこに女性が1人もいないということに気が付き、私にはなぜなのか全く理解できませんでした。女性は男性と同等に優れたミュージシャンなのに。女性たちはジャズのコースを受講はしても、実際にそれをキャリアとして追い求めるつもりはなかったのです。とても残念だなと思いました。私は、そういったアーティストたちのことをもっと知るための場所として、Women In Jazzを立ち上げました。教育を前面に押し出し、アーティストたちにAからBに到達するためのツールやリソースを提供することでビジネスを始めました」

LouiseとNinaは、DJワークショップの開催、スペシャリスト向けのマスタークラス、さらには音楽業界に精通した弁護士との座談会など、幅広く多岐にわたる機会を、継続的に促進しています。パンデミックに見舞われた時には、通常のライブ・イベントを開催することはできませんでしたが、うまく順応して、自宅でSoho Radioというラジオ・ショーの収録を始めました。「『どうやってビジネスを続けていこう?』と考えました。大急ぎでデジタル化を進め、ブランドを構築し続けるために、革新的でクリエイティブなアイデアを考えました。製作会社と提携してブリット・アワード受賞アーティストのCelesteと、ドラマーJas Kayserに関するドキュメンタリー・シリーズを制作したのはこのころです。楽しみながら挑戦できましたね」

ジャズ奏者のうち女性はわずか5%。これは、Women In Jazzのウェブサイトに掲載されている厳しい統計です。学ぶべき女性の先輩が少ないジャズ界では特に、出版に関する法的な事柄を理解することであれ、オーディエンスに対して自分を最もよく見せる方法であれ、教育が大きな違いを生むということを、Louiseは痛感しています。「インスピレーションを与えてくれる人を尊敬する? 私が一緒に仕事をするたくさんのアーティストたちは、そのような状況にありません。女性の活躍が見えないため、男性優位のジャズ界に飛び込むことは、過酷な経験となるでしょう」とLouiseは説明します。

「特にジャム・セッションに参加している時などは、(ジャズは)かなり難しい世界のように感じるかもしれません。ですが、仲間を見つけ、真にインスピレーションを与えてくれるものにワクワクすることで、前へ進むことができます。いつでも、何かを始めるときはインスピレーションからなのです。たとえばJasの場合、メンターのTerri Lyne Carringtonは、史上最高のドラマーの1人と言われていて、しかも女性なのです。私たちのコミュニティーでは多くの人々が、Jasをインスピレーションの源と考えています」。それもそのはず、Jasは有名なBerklee College of Musicの卒業生で、Lenny Kravitzとドラム・デュオをしたこともあるのです。「現在音楽業界の第一線で活躍している女性たちを見ると、本当にワクワクします」とLouiseは言います。「それは彼女たちが女性だからではなく、最も才能あふれるアーティストだからです」

5%という割合を上げるには、何を変える必要がありますか?「特別な要素があるわけではないのです。アーティストそれぞれに異なるニーズがあります。レーベルが必要な人もいれば、優れたマネージャーが必要な人もいます。大事なのは、支援ネットワークを構築することです」とLouiseは言います。「良い面に目を向け、アーティストを擁護し続けることが本当に重要です。なぜなら、称賛すればするほど、擁護すればするほど、そして機会を与えれば与えるほど、彼女たちはこの有意義なコミュニティーの中で成長し、次の世代にインスピレーションを与えてくれるからです」

文/Tina Edwards

Tina Edwardsはロンドン在住の音楽ジャーナリスト、ブロードキャスター、DJ。ジャズとクラブ・カルチャーを中心に、The Guardian、The Telegraph、The Forecast(Monocle)、Downbeat、Composerなど多数のメディアに寄稿。British Airwaysと東京のJ-wave 81.3fmで自身のラジオ番組を担当し、2022年にはBBCのドキュメンタリー『Jazz UK: Spitting Fire』を発表。

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