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小山 幸子

ヤマハ音楽教室講師

長年にわたり、音楽講師として数多くの人々の人生に寄り添ってこられた小山幸子さん。音楽や教育活動との関わりや、多様性を尊重し一人一人の個性を大切にすることの重要性について、お話を伺いました。

音楽や教育に興味を持ったきっかけについて教えてください。

物心ついた時から、母が揃えてくれた童話の絵本や童謡のレコードに囲まれて育ちました。日常的に音楽と触れ合い楽しむことで、その魅力を感じながら成長できる環境にあったと思います。そのころの経験は講師になってからも、自由に音で遊ぶ楽しさを生徒たちに伝える時に生かされていると感じます。

また、母や叔母が教員をしていた関係で、「誰かに教える」ということを幼少のころから身近に感じていました。漠然と、小さな子どもたちにピアノを教えられるといいなという憧れを持ち続けていたように思います。学校の進路説明会で音楽講師の仕事についての話を聞き、なんだか楽しそうだなと興味を持ったことが、この道に進んだきっかけです。

また、自分は好奇心や向上心が強く、楽天的で、落ち込んでもくよくよしない性格です。音楽が好きということに加えて、そうした性格も、音楽講師に向いていた部分かと思います。不器用で何をするにも時間がかかる子でしたが、そのおかげで、なかなか自信が持てない子どもたちの気持ちをよく理解し、寄り添うことができると感じています。
父は昔から、「お前は気立てがいい子だ」といつも褒めてくれました。私を大切に慈しんでくれた父の言葉を胸に、いつまでも周りの人たちに思いやりをもって接することができる自分でありたいと思っています。

[写真] 小山 幸子さん

音楽や教育に関する活動のなかで感じること、大切にされていることについて教えてください。

子どもたちとの触れ合いの中で得るものがとても多いと感じています。たとえば、子どもたちの柔軟で自由な発想や、繊細な感性に触れるたびに、心が動かされます。日常の些細な出来事の中にも、胸がときめく瞬間はたくさん隠れています。そんな小さな感動から、音楽的なインスピレーションを得られることもありますね。

そして、私は昔からずっと、「音で示してあげたい」と思って指導してきました。たとえば、「もっと心を込めて」といくら言っても、どうしても言葉で伝えきれない部分はあります。自分で弾いて、音で示してあげたいと思うのです。音で示せる先生であり続けるために、いろんなジャンルの音楽を幅広くレパートリーとして持てるよう、講師になってからもずっと模索しながら勉強を続けてきました。

私のクラスで何よりも心掛けている点は、子どもたちにとって居心地のいい場所にすること。安心できる場所ではのびのびと頑張れるし、表現できます。たくさん名前を呼んであげて、一人一人の良いところを皆の前でたくさん褒めてあげるようにしています。その時も、人と比べるのではなく、「昔の自分と比べてどれだけ成長できたか」という点を伝えるようにしています。

また、発表会の曲選びなどの際にも、まず本人の意見を聞いて、生徒に選択肢を与えるようにしてきました。ともすれば、男の子には元気な曲を、女の子にはロマンチックな曲を選曲しがちですが、大人が決めつけるものでもないと思います。どの子も存在感があって、自信がもてる。そんな暖かい空間にできればと思っています。
これまで教えてきた生徒の数は数え切れませんが、一人一人の記録は大切に保管しています。たとえ30年前の写真でも、顔を見るとすぐにその子のことを思い出せるんです。何年の月日が流れても、生徒たちと音楽を通してつながった時間は、私にとってかけがえのない大切な思い出です。

[写真] 小山 幸子さん

ジュニア専門コースのレッスン風景(2004年)

多様性の尊重について、考えをお聞かせください。

音楽は、老若男女誰もが自由に平等に楽しめるものです。私自身も、性別や年齢等はことさら意識せず、音楽を通して出会った一人一人とのご縁を大切にしたいと考えています。

音楽があることで笑顔あふれる日々を過ごした、ある親子のことをお話ししたいと思います。昔、小学生の男の子のレッスンを受け持ちました。その子のお母さんは耳が不自由でした。「自分が聞こえないからこそ、息子には音楽の楽しさを知ってほしい」というお母さんの想いに、強く心を打たれました。お母さんは教室の隅で、にこやかに笑い、時に涙ぐみながら、わが子がピアノを弾く姿をご覧になっていました。男の子は、曲を弾くたびに、自分が感じたその曲のイメージをお母さんに伝えていたそうです。私はきっと、そのお母さんの中では、何か音楽が鳴っていたのではないかと思っています。そのお母さんは、「レッスンに通うようになって、息子の笑顔が増えて、それを見る自分も幸せになりました」とおっしゃっていました。音楽は人の心を勇気づけたり、幸せな気持ちにする力があるのだと、改めて実感しました。とても強く心に響いて、忘れられない思い出です。

[写真] 小山 幸子さん

音楽業界において、女性や女の子たちを後押しするためにどのような変化が必要だと思いますか。

音楽活動の輪が広がるためには、演奏者も聴き手も、楽しさや感動を共有できるような方策が必要だと思います。たとえば練習場所や発表の場の提供、資金面の支援体制が充実しているとありがたいと思います。また、誰もが気軽に音楽を楽しめるような機会が幅広く提供されることが望ましいと思います。そうした活動が広がれば、次の音楽文化の担い手が育っていく礎のひとつにもなり得ると思います。
どういうところに自分が羽ばたけるチャンスがあるかは分かりません。とにかくいろんなところに目を向ければ、必ず自分にも何かできることが見つかると思います。

次の世代に向けたメッセージをお願いします。

人生には、いろんなことが起こるでしょう。でも、小さなことでも良いので、その時にできることを頑張ってみてはいかがでしょうか。目標をもって、一歩ずつでもそれに近づいていく。行動に移すことができたら、自分の周りの世界が広がるし、素敵な仲間との出会いもあります。自分には無理と思わないで、どうぞ夢を持って、生き生きと日々を過ごしていただきたいと思います。

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