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Yang, Pi-Tzu

デトモルト音楽大学(Musik Hochschule Detmold)にてKonzertexamen-PhDを取得。
The National Symphony Orchestra打楽器担当。
輔仁大学(Fu Jen Catholic University)、東呉大学(Soochow University)、東海大学(Tunghai University)、私立中国文化大学(Chinese Culture University)にて打楽器の助教を務める。

Yang, Pi-Tzuさんに、これまでのキャリアと、音楽や教育についてのお考えを伺いました。

音楽を始めたきっかけを教えてください。

私を音楽の世界へと導いたのは、母の先見の明でした。小学1年生でヤマハのグループ・レッスンに通い始め、成績が良かったので、中学校でも音楽を勉強する準備をしました。6年生の時、中学入試の準備をする中で、打楽器を副専攻しました。努力が実り、Stella Matutina Girls' High School の音楽プログラムへの参加を認められ、そのまま高校に進学しました。いろいろな先生の勧めもあり、私はクラシック音楽の本場であるヨーロッパへ行くことにしました。卒業後、Holland University of Musicを受験して合格し、その後、German University of Music(Musik Hochschule Detmold)に入学し、博士課程を修めました。

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教育に携わるようになったきっかけを教えてください。

ドイツに留学中、当初は卒業後に何をするか真剣に考えていませんでした。

教育法のArabella Lorenz教授が心理分析のセッションの中で、私たちに卒業したら何をしたいかと尋ねた時、私は「専業主婦になりたいです!」と答えました。その時、先生は深いブルーの瞳でしばらく私を見つめ、こう尋ねました。「ではなぜ、はるばるここ(外国)までやってきて打楽器を学んでいるの?」この質問がきっかけで、自分の将来設計について真剣に考えるようになったのです。

ドイツの音楽大学での学習環境というのは、実践的な応用を重視した教え方で、教授陣が学生を励まし、成長を促すというものでした。このすべてが、教育への関心をかき立てたのです。私の専攻科目の教授であり、メンターでもあったPeter Prommel教授は、ヨーロッパで有名な優秀な教育者であり、人を大切にし、すべての人が平等に教育を受けられることを重視する方でした。その姿勢は、私の教育のお手本となっています。

あなたの教え方はどのようなものですか? 音楽クラスで重視していることは何ですか?

私の教え方は主に、基礎トレーニング、方法論、感覚認知、音楽解釈の4分野に重点を置いています。

打楽器にはさまざまな種類があります。マリンバ、ティンパニ、スネアドラムといった音楽を専攻する人のためのソロ楽器のほか、ジャズドラム、ビブラフォン、タンバリン、オーケストラで使用される楽器などもあります。個人的な意見ですが、楽器本来の音質をコントロールする基礎訓練の上にある音色、つまり「表現のトーン」がとても重要だと思います!

打楽器はほとんどが短音の楽器で、ピアノや弦楽器、管楽器、声楽などのようにメロディーやリズム、和音で音楽を解釈して演奏するような色彩豊かで多面的な楽器ではありません。だからこそ打楽器は、リズムとメロディーの一音一音につながりと流れをつくる「表現のトーン」をつかむ必要があるのです。「表現のトーン」のさまざまな方法論とバリエーションを認識するには、膨大な数の音楽を聴くことがとても大事です。

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音楽のキャリアの中で、他の女性とのつながりは大切ですか?

女性は、女性とのコミュニケーションや理解を深めることに長けているようです。分野や境遇は違っても、共感や寛容という自然な絆が存在するからです。これは、社会が女性の人生にさまざまな役割を与え、粘り強さと優しさを同時に要求する、文化的に複雑なバランスを求めているからだと思います。さらに、女性が多い職場環境では、適切なフィードバックや効率化のための提案が重視されることがよくあります。それぞれが定められた基準を重視するため、同僚に良い影響を与え、チーム全体の価値を高め、全体として良い循環を生み出すのです。

音楽活動において、ジェンダー平等の問題に直面したことはありますか? どのように克服しましたか?

私は周囲をよく観察し、居心地の良い場所を見つけ、そこで協調するのが得意です。

ドイツ留学の4年目に、私はオーケストラにプロとして入団することを希望していました(卒業後に就労ビザを取得するため)。何度も面接を受け、面接を受ける人たちがほぼ全員男性で、女性は私1人だけだと気づきました。ある面接で、ドイツ人の面接官がこう尋ねました。「ほとんど男性ばかりで構成されているオーケストラで(21世紀初頭のことです)、どうしてあなたのような東洋の女性が入団したいのですか? なぜ、このオーケストラを志望するのですか?」

私はこう答えました。「私は自分で自分を支え、ドイツで自立して生きていくために、フルタイムの仕事が必要なのです。オーケストラの採用基準は性別ではなく演奏スキルだと思っていますので、私には十分な資格があると信じています。」そして、オーケストラに採用されたのは本当に幸運でした。

この経験は私に大きな影響を与え、プロフェッショナルとしてのキャリアを積む中でずっと私を支えてくれています。

私たちは自由で平等です。帰国後も、ジェンダー問題や仕事関連の差別を受けたことはありません。すべての職場環境で、男女平等が保たれています。

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次世代の方たちへ、アドバイスをお願いします。

女性には、強さと優しさを無理なく両立できるという強みがあります。

現在の職場では、男女の比率にもはや差はありません。ですので、お互いの個性を尊重し、理解しようとする姿勢を維持することが大切です。人それぞれ考え方が違うので、自分の考えを伝えるだけでなく、相手が本当に伝えたいことを聞き、きちんとお互いを尊重することを基本に接することが大切です。この姿勢は職場では必要なことだと思います。

次世代の女性たちには、健康な身体と前向きな姿勢、プロフェッショナルなスキルを維持して、人生を謳歌してほしいと思っています。

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