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Nilofer

音楽教師

Niloferさんにインタビューをさせていただき、これまでのキャリアと、音楽や教育に対するお考えを伺いました。

ご自身について、また、音楽の世界で歩んでこられた道のりについてお聞かせください。これまでの人生と音楽の経験についてお話しいただけますか?

私は、プネー市のコスラッドにある盲学校に通っていたのですが、在学中に音楽は私の人生にとって欠かせない存在へと成長し、音楽という分野に対して興味がわいてきました。学校では聖歌隊が歌う朝の歌を聞いていたので、私は好奇心から歌を歌ったり、リードオルガンを弾いたりしたいと常に思っていました。

生徒は楽器に触れることが許されていなかったのですが、機会を見つけて実際に触ってみたら、最高の気分でした。鍵盤が見えませんので、とても難しかったですが、鍵盤の間隔や上部、下部を理解しようと努力しました。そこから音楽の勉強を始め、すべての音楽行事やプログラムのリーダーを務めるようになりました。その後、正式な音楽教育を受けようとしたのですが、経済的な事情でできませんでした。それでも弾き続け、その後に入った音楽教室でキーボードを弾くようになりました。私が初めて購入したキーボードはYamaha PSR-295で、ためていた奨学金を使いました。

お金を稼ぐために各地をよく訪れて音楽プログラムを開催するようになり、数名のアーティストと協力する中で、さまざまな楽器に関する理解を深めました。残念ながら、私の状態では長距離を移動することは容易ではありませんでした。学校で音楽を教えようとしましたが、皆が応援してくれたものの、教育に関する固定概念があり、生徒の能力育成には限界がありました。同じころ、以前ボーカリストをしていた私の姉妹がピアノやキーボードを習いたい人を何人も紹介してくれました。この経験が音楽教師としての経験を積む上で役立ちました。

[写真] Niloferさん

音楽とご自身の関係は、どのようなものですか?

音楽と私の関係は強くなっています。音楽のおかげで音楽教師という天職を見つけることができましたし、音楽は常に私に刺激を与えてくれます。私が泣いたり、笑ったり、怒ったりするたびに、音楽はいつも私を支えてくれました。

何かを演奏したいときは自分の感情に委ねて演奏しますが、クラシック音楽に対しては常に畏敬の念を持っています。クラシック音楽はとても力強く、あらゆる種類の音楽を学び、理解する上で役に立つからです。

音楽そのものが私の原動力です。音楽はすべての人の生活の中に存在し、謙虚さと情熱をもたらします。音楽だけが、私にとっての財産であり、良きパートナーなのです。

私の生徒の多くは女性なので、私の夢は、女性バンドを結成すること、そして女性アーティストをもっと多く生み出すことです。インドでは、音楽は男性中心の分野です。そのため、音楽に対する情熱を生み出すことで、特に女性の興味を引く必要があります。また、音楽教育をより正式なものへと変え、音楽がキャリアのひとつの選択肢として認識されるようにする方法を見つけなければなりません。一般的に、女性は音楽に対してとても根気強く、そのおかげで私自身も根気と自信を身に付けることができました。

人々は私の状況を見て、音楽を作ったり、音楽行事に参加したり、他のアーティストたちに合わせて演奏したりできるのかという疑いの目を常に私に向けてきました。私は自分が置かれている状況のせいで意欲を失ったことはなく、上手に演奏できることを多くの人に証明するために全力を尽くしてきました。また、音楽は私の人生のさまざまなステージで私を支えてくれました。どういうわけか音楽は私の元にとどまり、私が自分の道を進むための杖になりました。

音楽教育に従事するようになった経緯やご自身のストーリー、指導スタイルについてお聞かせください。また、もし何らかの不当な扱いを受けた経験がおありでしたらその点についてもお話しいただけますか?

他の盲学校と同様に、私の母校も特別な支援を必要とする子どもたちに教えることができる教師を必要としていたため、最終的に母校で教える機会を得ることができました。私の指導方法は、生徒一人一人の問題を理解した上で、それぞれのニーズに合った解決方法を提供することです。これは、私自身の学びと経験にも役立っています。

教師は、音楽という文化が失われないように努力して次世代に継承するとともに、新しい様式の音楽を学び続けるべきだと思います。多くの子どもや大人に音楽を教えてきましたが、一人一人のスキルと問題点を必ず把握した上で、生徒が曲を演奏できるようになるだけではなく、その楽器を楽しみ、理解できるように、その生徒に最も合った方法を導き出すようにしています。たくさんの生徒が素晴らしい成果を上げ、私はこの才能を与えてくれた神に感謝しています。私は、自分の才能を生かして多くの人々、なかでも異なる心身能力を持つ子どもたちに音楽を教え、彼らが人生の中でもっと自信を持てるよう手助けし、光がなくても必ず希望があることを示してあげたいです。

音楽を教える中で、(目が見えない教師である)私の指導力に懐疑的な保護者や生徒は、私がうまく教えられるのかどうか疑っていました。今でも新しい生徒との信頼を築き、彼らに納得してもらうため、学習プロセスを示したり、さらにはデモや体験クラスを実施したりすることが求められます。さまざまな心身の特性を持つ生徒が音楽を演奏することは、私にとって大きな力になっています。

ご存じのとおり、人の性格は一人一人違いますが、音楽は人々を一つにします。私は、音楽は誰もが理解できるバリアフリーな言語だと考えています。音楽を教えることで、私は一回り大きな自分になることができました。そして、私の指導力を疑うタブーを壊すことが重要だと考えています。

不当な扱いに関しては、宗教的なものとジェンダーに関する差別を受けたことがあります。信仰心の強い教師に、女性が音楽に携わることは許されていないのだから音楽をやめて、祈りを捧げたり、他のことに専念したりすべきだと言われたことがあります。また、演奏会に参加すれば人々に疑念を持たれることもありますが、音楽のおかげでこうした差別を乗り越える勇気が生まれました。音楽は、他に応援してくれる人がいない時でも、いつも一緒にいてくれる仲間のような存在です。楽器は私の家族であり、私が困難な状況に直面するたびに力を与えてくれました。

音楽分野にいる女性を後押しするには、どのような変化が必要ですか?

音楽をキャリアにつなげることができ、学校で他の科目と同じように必須科目として教えることができる環境を作る努力をしなければなりません。そうすることで、自信と自立心を高め、生涯にわたるスキルセットを身に付けることができると思います。インド国内で歌とともに楽器を演奏できる女性をもっと増やす必要がありますが、これを実現するには、社会の思考を変えなければなりません。女性アーティストを推進して、次世代の人々を感化できる成功事例を作らなければなりません。趣味で音楽をやっている人でも参加できるような多様な機会をつくり、変化の土台となるプラットフォームを構築することが重要です。また、さまざまな心身の特性を持つ人々に関しては、彼らが自活し、自らのアイデンティティーを確立し、社会貢献できるように、雇用機会を提供するよう組織に要請することもできます。こうした考え方を社会が受け入れることで、変化が起きます。女性のエンパワーメントと女性アーティストの推進に取り組んでいるヤマハに感謝しています。

次世代の方々へメッセージをお願いします。

音楽を人生の一部に取り入れてください。そうすれば、自信、根気、謙虚さを身に付け、より良い人間へと成長できるはずです。インドの音楽文化を絶やさず、他の文化も積極的に学んでください。自分を疑うことなく常に全力を尽くし、学び続け、自分を磨いてください。大切なのは決してあきらめないこと。変化に向かって常に前進してください!

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