スクールプロジェクト - 各国での取り組み -
累計10カ国、425万人の子どもたちに音楽教育を提供
130年以上にわたって音楽の普及に力を入れてきたヤマハにとって、音楽教育に必要な環境が整っていない国や地域の子どもたちに、音楽を楽しみ、楽器に触れる機会を提供することは大きな使命です。
スクールプロジェクトでは、これまで世界10カ国、425万人の子どもたちに音楽教育の機会を提供してきました。各国・地域で実際どのようにプロジェクトを展開し、実績や反響を得ることができたのか、事例とともに紹介します。
世界で進むスクールプロジェクト
- 教員研修
インドネシア
1990年代からヤマハがリコーダーを指導可能な教員を育成する教員研修を行ってきたインドネシアでは、2013年施行の国定カリキュラムで、よい心や礼儀を身につけ、創造的、革新的、迅速的に考えられる子どもを育てることを掲げ、音楽も教科書に掲載されていました。しかし実際は音楽の授業が省略されてしまうなど、音楽教育が十分に行き届いていたわけではありませんでした。
そこでスクールプロジェクトでは、教育現場での楽器を使った音楽授業の定着を目指し2015年に活動を開始、2017年には同国教育省が新たに打ち出した「個性強化教育」(PPK)への協力に関する覚書を締結し、小学校1年生から6年生まで学年ごとに異なる楽器を用いたプログラムの導入を対象校で展開。さらに、2022年には教育省と協力して小学校教員向けのウェビナーを開催し、全国の小学校から多くの参加者が集まりました。 2023年からは教育省と連携して全国ピアニカコンクールを開催、教員支援のためEラーニングコンテンツや教材の提供にも取り組んでいます。
Voice
「もともと音楽に不慣れでしたが、指導法の導入で自信をもって指導ができるようになりました」(教員)
「児童が指導の積み重ねでアンサンブルを演奏できるようになり、保護者も演奏する姿にとても熱中していました」(教員)
- 教員研修
- 教科書制作支援
マレーシア
1990年代からヤマハがリコーダーを教えることができる教員の研修を行っていたマレーシアの国家教育方針には、習得した知識を組み合わせて新たな知識を作り出す力、異なる背景を持つ他者と協働する力、平和的に問題を解決する能力を育むことが掲げられており、すでにリコーダーは音楽科の国定カリキュラムに採用されていました。スクールプロジェクトでは、2015年からキーボードを用いた取組を課外活動でスタート。当初草の根で展開も、2017年には教育省と覚書を締結し、課外活動の選択プログラムとしてキーボードを使った活動を全国16州404校の学校で展開することに合意。2025年にはキーボードを使用した大会を開催し、3州から172名の児童が参加しました。また、音楽の授業の質の向上を目的とし、リコーダーを使用した教員研修も継続しています。2025年には1年間で400名以上の教員が研修に参加しました。
Voice
「双方向学習によって生徒達の協調性などを育むことができています」(教員)
「音楽の授業のおかげで、息子の集中力と自信の高まりを感じます」(保護者)
- 教員研修
- カリキュラム制作支援
- EDU-Portニッポン
- JETRO
ベトナム
活動を開始した2016年当時のベトナムの学校教育には、もともと音楽科の授業はあったものの歌唱・楽典が中心で、楽器を使った教育は含まれていませんでした。
しかし、教育省が国定カリキュラム改訂を行おうとしていたため、器楽活動を含む音楽教育が新国定カリキュラムに導入されるべく、小学校でリコーダーを用いた課外活動をスタートしました。日本政府関係機関と連携しながら、2018年、教育省と締結した覚書を元に、日本からの専門家派遣や、教員養成大学での器楽コースのトライアル展開など、多面的にカリキュラム改訂を支援。結果、新国定カリキュラムには楽器を使った教育が盛り込まれることになりました。
新国定カリキュラムのもとでは、小学校4年生からリコーダーもしくはピアニカが必修となり、小学校から高校まで音楽科の国定カリキュラムに器楽活動が導入されました。
さらに2023年と2026年に、ヤマハは教育省と協業で、ベトナム全土から選抜された教員に向けて研修を実施。楽器を使った教育が定着化するための環境整備を継続しています。
Voice
「生徒たちは休み時間も、熱心にリコーダーやピアニカで自己表現をしています」(教員)
「楽器を用いた授業を行うことに不安がありましたが、教員研修でリコーダーの扱い方や生徒にどう教えたらいいかがわかり、自信がつきました」(教員)
- 教員研修
フィリピン
フィリピンには西洋音楽が深く根付いており、授業では歌やダンスが行われています。一方、2024年から導入されている新しいカリキュラムでは、総合的な人間力の習得が目的とされています。そこでスクールプロジェクトは児童主体の音楽授業の導入を提案、この目的達成のため産官学連携で様々な取り組みを行っています。
2024年10月、ヤマハはフィリピン第三の都市であるダバオ市の教育局と覚書を締結しました。教員研修や教材を提供し、3つの小学校でのリコーダー授業のトライアルを実施。さらに2026年2月には、中央教育省と覚書を締結。今後のさらなる展開を見据え、ピアニカとキーボードのトライアルを西ビサヤ地域にて実施予定です。
Voice
「音楽の研修を受けるのも、楽器を演奏するのも初めてだが、研修に参加して自分でも教えられそうだと感じた」(教員)
「今までこのような具体的な活動の教材が無かったので、指導する際にとても助かる」(教員)
- 教員研修
- EDU-Portニッポン
インド
小学校が100万校存在するインドでは、他国とは異なり、複数の公立校カリキュラムが存在します。その中では一般的に音楽科の授業がありますが、インド民謡の歌唱が中心で、クラス全体で行う器楽活動はありませんでした。また、音楽教員不足で音楽の授業がない学校も存在するなど、音楽教育を提供するには十分な環境が整っていませんでした。
そこでスクールプロジェクトでは、2017年に、私立小学校を中心に課外活動でリコーダーやキーボードのプログラムを展開することからスタート。広い国土をカバーするために地域ごとに現地の核となる講師を採用し、教員研修を行っています。2023年からは公立校の正規授業への導入を目指し、公立校10校でパイロット授業を開始。日本大使館他関係機関の支援も受けながら、展開校の拡大に取り組んでいます。
Voice
「生徒たちの社会性の向上や幸福感を感じます」(教員)
「生徒たちの集中レベルが上がったと思います」(教員)
「クラスの一体感を感じるし、新しい曲を学ぶのが楽しみ」(児童)
- 教員研修
アラブ首長国連邦(UAE)
UAEは人口の8-9割を外国籍が占めています。外国籍は音楽を含めた多様な授業が展開されている私立学校に通うことが多い一方、UAE籍が通う公立学校では西洋音楽の授業が行われていませんでした。そこで2018年よりスクールプロジェクトの前身となるリコーダー普及活動を開始。2022年には、教育局との協業で公立学校90校以上の教員にリコーダー研修を実施しました。
Voice
「子どもたちが本当に楽しそうに授業に積極的に参加してくれていて嬉しい」(教員)
「リコーダーは練習が必要なので教えがいがあります。それを子どもたちができたときに喜びを感じます」(教員)
- 教員研修
- EDU-Portニッポン
- JICA
エジプト
エジプトでは、非認知能力の育成を国が教育方針として掲げており、小学校に音楽科が存在しています。しかし、実情として教育現場に必ずしも音楽科カリキュラムが認知・浸透しているわけではない、という課題があります。
そこでスクールプロジェクトでは、非認知能力の育成を目指した授業が展開されるようサポートしています。まず、エジプト教育省と日本の学術機関との協働で教材を制作し、さらに教員研修を年2回継続的に実施。これらの取り組みの結果、講義型ではなく児童主体型の授業が実施されるようになってきました。
2021年に10校でスタートし、2023年度には50校まで活動を拡大しました。2025年8月にはエジプト教育省と覚書を締結し、新たに2地域で合計100校の公立小学校にてパイロットを行うことで合意しています。
Voice
「音楽的才能のある子どもを育てるための音楽という認識から、子ども全員で活動するというマインドに変化しました」(教員)
「クラス全員分のリコーダーが揃うようになり、愛着と責任感をもって授業に参加できるようになりました」(児童)
- 教員研修
- 教材販売
ブラジル
ブラジルでは、2015年より学校での音楽授業が必修化されたものの、内容は教員に一任されており、体系立った教材や指導法は存在していませんでした。
遡ること2005年、ヤマハの現地販売法人は”Sopro Novo Project”を立ち上げ、2015年まで累計350回以上の音楽セミナーを実施。ブラジルにおける音楽普及活動の規模拡大とその持続性実現を目指して長らく活動してきました。
2017年、幼児・初等教育の教育内容全体が刷新されたことを受け、変革を迎えつつあるブラジルの音楽教育の質を担保し、教育環境整備をサポートできるようさらなる活動の強化を行っています。
Voice
「ヤマハのメソッドは子供たちへの指導を進める上での多くの気付きを与えてくれました」(教員)
「最初は『リコーダーの演奏は難しい』と言っていた児童たちも、数ヶ月のうちに音楽を楽めるようになりました」(教員)
- 教員研修
- EDU-Portニッポン
コロンビア
コロンビアでは、国定カリキュラムに「芸術」の科目はあるものの、音楽の授業を実施している学校は非常に限られています。主に教員や備品の手配のハードルの高さから、音楽をはじめとする芸術的・文化的教育が子どもや青少年に十分に行き届いていない状況がありました。
スクールプロジェクトは、コロンビア政府の掲げる「質の高い芸術教育」に直接的に寄与するものとして2024年に始動。国内の3県5都市21校でリコーダーを使った音楽のパイロット授業がスタートしました。授業の内容やそれを通した児童の成長・振る舞いの変化等が大きく評価され、2025年には国内第二の都市であるメデジン市の公立小学校6校でも拡大展開されています。
Voice
「“音楽を通して児童の非認知能力やライフスキルを育む”という発想の指導法が非常に斬新でした」(教員)
「教育そのものに対するマインドセットも大きく変化しました」(教員)
- 教員研修
メキシコ
メキシコでは、小学校に「総合芸術教育」の科目が存在し、その一部として音楽が取り上げられることがありますが、学校や教員によって実施の有無や内容、またその水準が大きく異なるのが実情です。
スクールプロジェクトは、「音楽を通して社会課題を解決する」というメキシコ州教育局との共通の理念のもと、音楽基礎教育を通じた非認知能力の強化に関する覚書を締結。2025年より同州の小学校18校でリコーダーを使った音楽のパイロット授業をスタートさせました。
Voice
「先生役をしたり、クラス全員で音を合わせたりするのが楽しい」(児童)
「これまでに経験の無いような内容と指導法で最初は少し不安もありましたが、今では児童たちの積極的な授業参加を促せるようになりました」(教員)
※省庁の表記は各国固有の名称がありますが、当サイトでは、中央政府機関を「教育省」、地方自治体機関を「教育局」に統一して記載しています。