社外取締役対談

[画像] 社外取締役 篠原 弘道 ポール・キャンドランド

新社長のリーダーシップのもとで、経営スピードを高めてレベルアップするヤマハへと進化を遂げる

当社の独立社外取締役であり、指名委員会のメンバーでもある篠原弘道氏とポール・キャンドランド氏。お二人に、山浦社長選任の経緯や、今後の当社への期待などについてお伺いしました。

山浦社長が2024年4月に就任しました。新社長選任にあたり、指名委員会でどのような議論がなされたか教えてください。

篠原:私が指名委員会に加わったのは2021年6月です。その年の秋に執行側から次期社長候補のリストが指名委員会に提出されました。それ以降、指名委員会のメンバーはさまざまな場面で各候補者の人となりや見識、考え方などの把握に努めました。

キャンドランド:取締役会、ランチミーティングやウェブ会議など、候補者を知る機会を毎月のように設定してもらいました。そのおかげで、候補者一人一人についてよく知ることができました。

篠原:その上で、候補者を絞るための議論を何度か行いました。議論自体は比較的スムーズに進み、指名委員会の全会一致で数名の最終候補者を選定しました。その後、2023年6月に私が指名委員会の委員長になり、最終決定に向けて議論を集約していきました。最終候補者はそれぞれが優れた長所を持っていたので、どの長所がこれからのヤマハが必要とする要件にマッチするか、時間をかけて議論しました。

決定の際にどのような議論があり、山浦社長のどのような点を評価されたのでしょうか。

篠原:新社長に必要な能力を一言で言うと、当社を発展させるポテンシャルを持っていることです。単に業績を回復するだけでなく、持続的な成長を遂げることができるかを問いました。そのためには当社の既存の強みを伸ばすことに加え、新しい価値の創造に向け会社を変えていく必要があります。
技術者である山浦さんは音・音楽に関わる技術への深い理解はもちろん、論理的な思考力と多角的な視点を併せ持ち、ビジョンを描く力、果断な決断力があります。また、山浦さんのキャリアで特徴的なのは、従来の当社製品の延長線上にない、新しいコンセプトの商品を生み出してきていること。決して派手なタイプではありませんが、着実に結果を出しています。今後の当社にとって最も適任であると判断しました。

キャンドランド:山浦さんのイノベーションに対する強い想いを評価しているところは、私もまったく同じです。好奇心が旺盛で、そのせいかとても聞き上手なところも良いですね。周囲の意見に耳を傾ける人なので、たくさんのアイデア、イノベーションが生まれるような環境を作ったり、チームプレーを促したりすることができると考えています。

篠原:新しい価値を生むイノベーションを実現するためには、多様な専門性・価値観・知識・経験を持つ人間のコラボレーションが大切です。つまりトップダウンで何かを決めていくよりも、ボトムアップでいろいろな動きが出てみんなが挑戦する環境を作らなければならないわけです。人の話を聞くことに長ける山浦さんなら、そうした動きや挑戦を後押ししてくれると思います。

キャンドランド:今は事業環境の変化が非常に激しく速いですから、経営のスピード感を高めることも極めて重要です。ユーザーの考えや競合他社の動きを細かに把握し、素早く判断を下さなくてはなりません。山浦さんには、当社を経営スピードの速い会社へと進化させていくことも期待しています。

[画像] 社外取締役 篠原 弘道

社外取締役
指名委員会委員長
報酬委員会委員

篠原 弘道

新社長が就任したばかりですが、次のサイクルの後継者計画についても教えてください。

篠原:まずはこれまでと同様に、次期候補者のリストを作ることから始めています。もちろん「一度作ったリストは変えない」という方針ではないので、経営環境の変化に合わせて後継者に求める要件を更新し、候補者を適宜見直す必要があると考えています。

キャンドランド:リストに入った候補者の育成も非常に重要なので、どういった育成方法が良いのか、委員会で議論していきます。

「強みを伸ばすとともに、新しい価値提供が必要」というお話がありましたが、ヤマハの企業価値向上には何が必要だとお考えですか。

篠原:キャンドランドさんも指摘したスピードです。楽器をはじめとしたハードウェアについては、今後も丁寧に作り、お客さまに提供していくことが必要です。しかし、ソフトウェアやサービスの分野でスピーディーにイノベーションを起こすためには、最初から百点満点を目指すのではなく70点くらいの及第点で世の中に出して、そこに対するお客さまからのフィードバックを受けて完成度を高めていくという、アジャイルな方法をもっと取り入れるべきでしょう。
また、少し次元の違う話ではありますが、世界で唯一無二の総合楽器メーカーであるという当社の強みは、ある意味で足かせともなり得ると思います。唯一無二であるということは、対等なライバル企業がいないことを意味するからです。

キャンドランド:私が以前取締役を務めた企業では、唯一無二であることが強みである一方で、ライバルがいないためにハングリーさに欠けるという課題がありました。ハングリーさがないと「なんとしてもイノベーションを実現する」という気持ちになかなかなりません。当社がレベルアップするためには、自らを鼓舞するような仕掛けが必要だと思います。

篠原:対等なライバルはいなくても、事業や楽器ごとにそれぞれ異なる競合企業は存在します。短期的な変革として、製品ごとに異なる市場、顧客、競合などを踏まえた、今までよりも粒度の細かい競争戦略を検討すべきなのではないかと、個人的には考えています。

キャンドランド:ユーザーのニーズをもっと理解する必要があるという点は、私も同意見です。ニーズについての一例として、楽器初心者の気持ちへの理解があります。当社の従業員には楽器が上手い人が多いですが、お客さまの中には私のような初心者や、学び始めたけれど上達を諦めやめてしまった人が大勢いるのも事実だと思います。そういったお客さまへの理解がまだ足りていないために、ビジネス機会が失われている可能性もあります。テクノロジーを使った新しい機能で楽器がもっと簡単に楽しめるようになったり、他の人と一緒に演奏できるようになったりすれば、ビジネスはもっと広がるはずです。

篠原:シニア向けのビジネスも考えられます。両手足や息も使う楽器の演奏は、健康寿命の延伸に貢献できると私は思います。超高齢社会を迎えた日本や中国では、子どもを対象にした音楽教室が音楽文化の醸成につながってきたように、今後はシニアを対象にした音楽教育が社会福祉などの領域で大きな価値創造につながるかもしれません。私自身、当社の社外取締役になってから楽器を購入して独学しているのですが、やっぱりつまずきます。大人向けのサービスがもっとあったらと一個人としても感じています。

[画像] 社外取締役 ポール・キャンドランド

社外取締役
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報酬委員会委員長

ポール・キャンドランド

ヤマハの持続的な価値創造にとって最も重要な無形資産である「人材」についてお聞きします。人材育成などの観点で議論されていることはありますか。

篠原:取締役会では人権尊重やダイバーシティ&インクルージョンのモニタリング機能が発揮できていると考えています。その上で、最もよく議論しているのが従業員の働きやすさや働きがいの向上です。働きやすさとは、苦労が少ないということではありません。チャレンジをして達成感を得ることができる環境づくりができているかを注視しています。

キャンドランド:当社は、毎年従業員に対して「働きがいと働きやすさに関する意識調査」を実施しており、その結果を取締役会でもモニタリングしています。取締役会のメンバーが従業員と対話する機会もたびたび設けているので、そこで聞いた声も取締役会にフィードバックしながら意見交換しています。

篠原:先ほども述べたスピード感を上げていくためには、従業員一人一人が自分の持つ権限をしっかり行使していくことも重要です。そのような風土改革という意味でも、従業員の挑戦と現場主導のイノベーションを促す山浦さんのマネジメントに期待しています。

2022年4月にスタートした中期経営計画「Make Waves 2.0」の最終年度を迎えました。その達成状況についてどのように評価されていますか。

篠原:非財務目標については順調に進んでいる一方で、財務目標については過去2年間厳しい状況が続いています。ようやく底を打った感もあるので、今後の着実な成長に期待しています。

キャンドランド:部品の調達が困難になったり、市況が低迷したりと、当社は環境の変化への対応に苦戦してきました。次の中期経営計画に向けて、新社長のもとで経営のスピード感を高めることが、新たな成長につながると期待しています。そのためには従業員の目線を揃えることも必要不可欠です。山浦さんには、経営ビジョンを従業員にしっかり伝え、来期以降のレベルアップを確実なものにしてもらいたいと思います。

最後に、ステークホルダーの皆さまへメッセージをお願いします。

篠原:当社は、真摯なモノづくりの力と新しい価値を生み出す力、その双方を十分に備えています。今後当社がさらにユーザーとの対話を深め、こうした強みを活用すれば、より早くユーザーの要望に応える製品・サービスを提供して成長を実現できると考えています。短期・中長期の戦略がスピード感を持って推進されるよう、取締役会でしっかり監督して企業価値向上に貢献します。

キャンドランド:当社は135年以上の歴史の中で、何度もイノベーションを起こし、優れた品質でマーケットリーダーのポジションを築くとともに、高いブランド力を培ってきました。これからも持続的な成長でステークホルダーの期待に応えるべく、私も取締役会の一員として全力を尽くします。