地域に根差した「器楽教育」を通じて、世界中の子どもたちに“こころ豊かなくらし”を

-スクールプロジェクト-
地域に根差した「器楽教育」を通じて、世界中の子どもたちに“こころ豊かなくらし”を

2022年6月更新

音・音楽、そして楽器を通じた感動を、未来を生きる全ての子どもたちに──。

ヤマハが2015年より新興国を中心に展開している「スクールプロジェクト」は、現地政府や教育機関と連携し、公教育に楽器演奏を取り入れるサポートをする取り組みです。これまで楽器に触れる機会に恵まれなかった子どもたちに演奏の楽しさを知ってもらうと同時に、教員の育成や教材の提供を通じて、誰もが継続的に質の高い音楽教育を受けられる環境づくりを支援しています。

2021年11月からは、7カ国目となるエジプト国で活動を開始し、同国の子どもたちに楽器演奏の楽しさを伝えるとともに、日本式教育を展開するさきがけとしてノウハウを蓄積しています。

[アイコン]4:質の高い教育をみんなに、10:人や国の不平等をなくそう、16:平和と公正をすべての人に、17:パートナーシップで目標を達成しよう、JAPAN.Committed to SDGs

世界7カ国、累計129万人の子どもたちに、
器楽教育の機会を提供

楽器を演奏する器楽教育は、その教育的効果から世界中の学校で広く採用されていますが、設備や指導者不足、指導カリキュラムなどの問題から音楽の授業に導入されていない、または質が十分ではない国もあります。

そうした中、現地政府や教育機関と緊密に連携し、公教育の中で楽器を演奏する楽しさを伝える「スクールプロジェクト」は、これまでマレーシア、インドネシア、ベトナム、インド、ブラジル、アラブ首長国連邦、エジプトの7カ国累計129万人(2022年3月末)の子どもたちに器楽学習の機会を提供し、楽器演奏を楽しむ環境づくりを支援してきました。

中でも、2016年に文部科学省が推進する「日本型教育の海外展開事業(EDU-Portニッポン)」のパイロット事業として採択されたベトナムの活動では、同国の教育訓練省と連携した教員向けリコーダーセミナーや教科書改訂などを支援。2020年度より、学習指導要領に器楽教育が導入されています。

また、かねてよりリコーダー普及活動を独自展開してきたブラジルでコロナ禍に対応したオンラインリコーダーセミナーを開設したり、リコーダーの普及が進んでいるインドでキーボードを使った器楽教育を新たに開始したりと、地域や環境に合わせた柔軟な取り組みを推進。2023年には、中南米地域で2カ国目となるメキシコでの展開を予定しています。

今後も、当社の中期経営計画に掲げた目標、累計230万人(2025年3月期)の達成を目指して、さらに多くの子どもたちに音楽や楽器の楽しさ、喜びを伝えていきます。

スクールプロジェクトロゴ
各国の器楽教育の様子
中期経営計画目標

産官学連携の下、現地の文脈に沿った形で、日本式教育を世界へ“輸出”

楽器・教材提供、指導者養成、授業効果測定までをトータルパッケージ化し、器楽教育を中心とする日本式教育を相手国教育省へ提案しています

「JICA-SDGsパートナー」として、エジプトの子どもたちに器楽教育を届ける

2021年11月に、リコーダーを使った授業展開を開始したエジプト。同国への支援に当たり、ヤマハは国際協力機構(JICA)と「JICA中小企業・SDGsビジネス支援事業」における「初等教育への日本型器楽教育導入案件化調査【アフリカ課題提示型】」(エジプト国)の業務委託契約を締結し、「JICA-SDGsパートナー」に認定され、エジプトでの器楽教育導入に向けた活動を実施しています。このような日本・エジプト両国の政府教育機関との緊密な連携の下で、器楽教育を通じてエジプトの子どもたちの“非認知能力※1”の育成を推進するとともに、同国の教育事情に寄り添った音楽の普及活動につながる、持続的なビジネスモデルの確立を目指しています。

  • 1 非認知能力:「目標の達成」「他者との協力」「情動の抑制」など、思考、感情や行動パターンについての能力。「読み書き」「計算」などに代表される認知能力を促進することがあり、大人になってからの人生にも影響を及ぼすといわれている
「JICA-SDGsパートナー」として、エジプトの子どもたちに器楽教育を届ける
JICA-SDGsパートナー制度とは、日本政府(SDGs推進本部)が決定するSDGs実施指針やSDGsアクションプランの一層の進展を目的としてJICAが2020年7月に創設したもので、JICAとともにSDGsの達成に取り組んでいる企業・団体をパートナーとして認定しています

世界で注目が高まる「非認知能力」と、日本式教育

エジプトで日本型の教育や「スクールプロジェクト」が注目された背景には、それまでの学力偏重の詰め込み型教育から脱却し、豊かな人間性を育む教育への大きな方針転換がありました。

現在世界の教育現場では、学力テストなどで測れない社会性や協調性、規律といった「非認知能力」の重要性が注目されています。非認知能力は「心の力」や「社会情緒的スキル」ともいわれ、豊かな社会の形成に不可欠なものです。

非認知能力は幼少期に大きく発達するとされており、各国の教育機関でその影響や育成手法についての研究が進められてきました。その中で浮かび上がってきたのが、音楽教育や器楽教育が非認知能力の醸成に与える影響です。

ヤマハは、楽器演奏を伴う音楽教育の支援を行うことがエジプトの教育界における課題解決の糸口となるのではないかと考え、OECDEducation2030※2の考えに着想を得て、リコーダーを使ったインタラクティブな授業展開を提案。

2016年度・2018年度のベトナムでの事例に続いて、文部科学省「日本型教育の海外展開事業(EDU-Portニッポン)」の2020年度パイロット事業の応援プロジェクトの一つに選出され、EJS(Egyptian-Japanese Schools)10校でのトライアルを皮切りに同国でのスクールプロジェクトの展開を開始しました。

今後は、NPO法人東京学芸大こども未来研究所とともにリコーダーを使用した器楽教育の教育的効果を学術的な視点で調査・研究し、器楽教育が学術面での非認知能力を育むというエビデンスを背景に、全てのEJS(計48校)への展開を目指していきます。

  • 2 OECD“Education 2030”:「Education 2030」は、2015年からOECD(経済協力開発機構)が立ち上げたプロジェクトで、世界全体があらゆる分野でさまざまな変革の波が押し寄せることが予想される2030年という時代を生きていくために、どのような教育が必要なのかをOECDの加盟国で考えていくもの
日本人の校長経験者をスーパーバイザーとするなど、「日本式教育」を採り入れた「EJS(Egyptian-Japanese schools)」(写真提供:JICA)
修了証を手にするEJSの先生方。左から3番目はエジプト教育省事業管理部のSalma Elalfy氏

音楽や楽器演奏の喜びが心を豊かに満たす、平和な世界へ。

その国の政府や教育機関と連携し、より多くの子どもたちに等しく楽器演奏体験の機会を届けるスクールプロジェクト。

スクールプロジェクトは、これまで楽器に触れる機会に恵まれなかった子どもたちに楽器演奏の楽しさを伝えるだけでなく、感性や創造性を育み、協調性を養うなど、子どもたちの豊かな成長を促す一助となっています。

世界の誰もが、生涯にわたって楽器演奏の楽しさや音楽を学ぶ喜びに触れられ、心の豊かさを育み続けることができる未来を目指し、ヤマハはこれからもスクールプロジェクトをはじめとする音楽教育を通じて、サステナブルな音楽文化の創造に貢献していきます。

Comments

子どもたちだけでなく、教師にとっても素晴らしい機会。

リコーダー授業のパイロット校としてプロジェクトに参加することができ、光栄に思っています。エジプト人にとってリコーダーはあまりなじみがなく、子どもたちは最初戸惑っている様子でしたが、数週間後には簡単な楽曲を演奏できるようになり、とても楽しんでいるようでした。我々教師にとっても素晴らしい機会となりました。

Eman Hassan 様
10th of Ramadan 2校 校長
Eman Hassan 様

やりがいあるプロジェクト。来年以降も継続を。

リコーダーの授業を通して子どもたちが楽しみながら取り組んでいる姿に触れることができ、私自身もやりがいを感じ、プロジェクトを楽しむことができました。ぜひ、来年以降も継続していきたいと思います。

Noura Adel 様
10th of Ramadan 2校 音楽科教員
Noura Adel 様

どこに行くにも、リコーダーと一緒です。

リコーダーは楽器なのに小さくて軽くて持ち運びができるのがとても良いですね。娘はどこへ行くにもリコーダーを持って行き、祖母の家に行った時も祖母の前で演奏を披露していたのが親としてとてもうれしく、微笑ましかったです。

Suzan Youssrf 様
Suez校 児童の保護者
Suzan Youssrf 様