[ 写真 ] 公教育への「器楽教育」の機会創出を支援し、世界の子どもたちに楽器と音楽の楽しみを

-スクールプロジェクト-
公教育への「器楽教育」の機会創出を支援し、世界の子どもたちに楽器と音楽の楽しみを

2015年より、ヤマハが新興国を中心に展開している「スクールプロジェクト」。その国の公教育の中で器楽教育をサポートすることにより、楽器演奏の楽しさをより多くの子どもたちに体験してもらい、世界中の子どもたちが質の高い器楽教育の機会に等しく恵まれることを目指す取り組みです。

2021年9月には、7カ国目となるエジプトでの「スクールプロジェクト」が開始され、同国の子どもたちに楽器演奏の楽しさを伝えるとともに、器楽教育をより実りあるものにしていくためのノウハウを蓄積していきます。

[ アイコン ]4 質の高い教育をみんなに、17 パートナーシップで目標を達成しよう、Japan. Commited to SDGs

世界6カ国で展開している「スクールプロジェクト」

音楽教育の中でも楽器を演奏することに特化した器楽教育は、その教育的効果から世界中の学校で広く採用されていますが、中には、設備・指導者不足、指導カリキュラムなどの問題から音楽の授業に導入されていない、または質が十分ではない国があります。

ヤマハは「ヤマハ音楽教室」をはじめとする音楽教育プログラムをグローバルに展開し、老若男女に楽器を演奏する楽しさや音楽を学ぶ喜びに触れる機会を提供してきた実績を生かし、現地政府や教育機関と緊密に連携して、こうした世界中の子どもたちが公教育の中で質の高い器楽教育の機会に等しく恵まれることを目指しています。

ベトナム
マレーシア
インド

ただし、これまで音楽の授業がない、あるいは音楽の授業はあっても楽器を演奏することがなかった地域では、音楽教員でも楽器演奏の経験に乏しく、指導を行う水準に達していないといったことが珍しくありません。スクールプロジェクトは、こういった地域に向けて、楽器・教材・指導ノウハウをパッケージにした独自プログラムを提供している点が大きな特徴です。

2021年3月期までにヤマハがスクールプロジェクトを実施しているのは、マレーシア、インドネシア、ベトナム、インド、ブラジル、UAEの6カ国。中でもベトナムでは、2020年に器楽教育が導入された新学習指導要領での音楽授業が開始されています。新型コロナウイルス感染症により大きな影響を受けましたが、一部でリモート授業を取り入れるなどの対策を行いながら、約4,100校・累計71万人の子どもたちに、楽器演奏の機会を提供しています。

オンラインでのレッスン風景(ブラジル)
[図] スクールプロジェクトの展開実績(2021年3月末現在)6カ国:4,100校累計71万人 → 中期経営計画目標(2022年3月末)7カ国:3,000校累計100万人

エジプトでの展開

「EDU-Portニッポン」の応援プロジェクトとしてエジプトで展開

ヤマハが2021年9月からの授業展開を目指しているエジプトでは、現地の教育関係者の間で社会性・協調性および規律といった非認知能力※1の発達を課題として挙げる声があり、現在、新カリキュラムでの教育を推進しています。

ヤマハでは、この新カリキュラムをサポートすべく、エジプト教育・技術教育省との協働を通じ、リコーダーを使った日本型器楽教育の教員と児童・児童同士の、インタラクティブな授業を展開します。楽器演奏を取り入れることで世界から高い関心を集めている日本型教育をさらに充実させ、エジプト政府が掲げる児童生徒の非認知能力向上(特に協調性、自尊心、規律、モチベーションに着目)を育む機会提供を目指します。

この取り組みは、2016年度、 2018年度のベトナムでの事例に続いて、文部科学省「日本型教育の海外展開(EDU-Portニッポン)」の2020年度パイロット事業の応援プロジェクトの一つに選出され、EJS(Egypt-Japan School)10校でのトライアル授業が決定しました。

在日エジプト大使館文化・教育・科学局にもサポートいただき、今後エジプトでの展開を進めていきます。

[画像] EDU-Port ニッポン 証明書、EDU-Port ニッポン ロゴ
在日エジプト大使館文化・教育・科学局 文化参事官 Professor ハニー A.エルシーミー様(中央)とスクールプロジェクト担当者

楽器・独自開発教材・指導ノウハウをオールインワンで提供

当プロジェクトでは、新型コロナウイルス感染症の影響によりオンラインで行われた教員研修を通じて、10名の音楽教員の育成を進めてきました。リコーダーの基礎知識・演奏技術・子どもたちへの教授法をオンライン研修で習得するといった遠隔授業ならではの難しさはあったものの、2021年9月の授業展開に向けて着実に準備を整えています。

また、東京学芸大こども未来研究所とともに「非認知能力※1の計測手法の検討」を実施し、リコーダーを使用した器楽教育の教育的効果を学術的な視点で調査・研究する取り組みも予定されています。上述したエジプト国が抱える教育分野の課題に向き合い、同国の音楽文化・教育への貢献の可能性を探るのが狙いです。

今後は、器楽教育が学術面での非認知能力を育むというエビデンスを集めてスクールプロジェクトおよび日本の教育にフィードバックし、公教育における器楽教育の重要性を世界に向けてさらに訴求していくことを目指していきます。

  • 1 非認知能力:「目標の達成」「他者との協力」「情動の抑制」など、思考、感情や行動パターンについての能力。「読み書き」「計算」などに代表される認知能力を促進することがあり、大人になってからの人生にも影響を及ぼすと言われている
エジプトでの教員向け研修(写真提供: Egypt-Japan School)

器楽教育の普及を通じて、楽器演奏人口の拡大を図る

その国の政府教育機関と連携して公教育の中でより多くの子どもたちに等しく楽器演奏体験の機会を届けるスクールプロジェクト。

これまで楽器に触れる機会に恵まれなかった子どもたちに楽器演奏の楽しさを伝えるだけでなく、感性や創造性を育み、協調性を養うなど、子どもたちの豊かな成長を促す一助となっています。

ヤマハはこれからもスクールプロジェクトをはじめとする音楽教育を通じて、世界の誰もが、生涯にわたって楽器演奏の楽しさや音楽を学ぶ喜びに触れられる、豊かな未来の実現を目指していきます。

Comments

人は優劣だけで比べられない。それを音楽は教えてくれます。

楽器を演奏したり聴いたりする中で、それぞれの楽器に良さや味わいがあり、習得が難しい楽器が、比較的簡単に演奏できる楽器より音楽的な価値があるわけではないことに気づくことができます。これは人間関係でも同じように、一人一人個性や違いがあり、優劣で比べることはできないということを学べるところに器楽教育を行う意義があると考えています。リコーダーが上手に吹けるようになり、自分に自信を持つことはもちろん、皆で一緒に演奏することで、相手のことを思いやり、尊重し協力しながら一つのことを成し遂げる力が伸びることも期待しています。

EJS Supervisor
大辻󠄀 晶子 様

幼い頃から楽器に触れることで、芸術性や公共性を高める。

楽器の演奏は、リズム感を養い、聴覚スキルの発達を促すだけでなく、心肺機能や運動能力の向上、そして子どもの知性や創造性に刺激を与えることが期待されています。

幼い頃から楽器を学ぶことで、子どもの想像力の幅を広げ、協調性を醸成するなどの成長にもつながることが、器楽教育の重要性だと考えます。特に子どもたちに音楽を学ばせ、音楽のセンスを生み出していくことは、芸術性や公共性をいち早く高めていく働きがあります。世界の人々が能力や可能性、年齢に合わせて楽器を選択し楽しめるようになり、音楽が世界中で必要な教育的要素となることを期待しています。

Music Teacher in Khargha- New Valley, Egypt-Japan School
Marina Wasfy 様

世界の子どもたちに器楽教育を。それが私たちの使命。

音楽は常にエジプト文化の一部にありますが、経済的な理由や地域性により、器楽教育は多くの人にとって夢のような話です。私たちの目標は、一人でも多くの子どもたちに器楽教育の機会を提供すること。特に発展途上国の子どもたちに学校で適切な音楽教育を受ける機会を創出することは、私たちの使命だと考えています。

スクールプロジェクトの実践は、教育文化そのものを変えることを意味し、私たちにとっても大きな挑戦ですが、先生たちも私もこの良いチャレンジに前向きに取り組んでいます。器楽教育が学校のカリキュラムに導入され、子どもたちが教室で楽器を演奏する時代を心待ちにしています。

Music School Supervisor
Yamaha Music Gulf FZE

John Meshreky