持続可能な資源の利用

ヤマハグループが生産しているピアノや弦打楽器、木管楽器などの多くは、主に木材でつくられています。また、音響性能や機能性、デザイン性、質感の良さなどから、電子楽器やスピーカー、防音室などにも木材を多く使用しています。
このように、事業活動において多種多様な木材を使用していることを踏まえ、今後未来、貴重な木材資源を維持し持続的に活用していけるよう、ヤマハグループでは「ヤマハグループ木材調達方針」を定めるとともに、「ヤマハサプライヤーCSR行動基準」で木材資源の伐採および取引に際して調達先に順守を要請する事項を明確にしています。これらの方針や行動基準のもと、ヤマハグループでは自然環境や生物多様性に配慮した持続可能な木材調達の実現とともに、再生可能な優れた資源である木材を無駄なく最大限に生かすことを目指しています。

ヤマハグループが使用する木材資源の原産地比率(2019年度)

[ グラフ ] ヤマハグループが使用する木材資源の原産地比率(2019年度)
※ ヤマハブランドではない製品およびOEM/ODM製品を除く

体積の数値については、環境データのページに掲載しています。

木材デューディリジェンスの推進

木材を持続可能な形で利用し続けるには、森林保全や木材資源量への配慮と、サプライチェーンが経済的にも持続可能であるよう、雇用創出やインフラ整備といったコミュニティーの発展に資することが必要です。ヤマハグループでは、違法に伐採された木材を調達してしまうことがないよう、デューディリジェンスの仕組みを構築し、調達先への書類調査や訪問調査を通じて、伐採時合法性の厳格な確認を進めています。また、環境面に加え、地域コミュニティーの発展など社会・経済面でも持続可能な森林から産出される、認証木材の利用拡大を進めています
2018年度に購入した木材については、全ての取引先を対象に、原産地や伐採の合法性、資源の持続可能性に関する書類調査を実施しました。その結果、原産地や樹種などからリスクが高いと判断された木材については、現地訪問を含む追加調査および木材調達部門やサステナビリティ部門で構成する審査会での審議を通じて、より厳格な合法性の確認を行い、購入した木材の98.8%(体積比率)について低リスクであることを確認しました。この調査はサプライヤーの協力のもと毎年行い、低リスク判定100%を目指していきます。また、認証木材の採用も積極的に進めており、2020年度の木材購入見込みに換算すると、認証木材は46%(2019年度実績は28%、いずれも体積比率)となる見通しです。2019年4月に発表した中期経営計画では2021年度までの3年間で認証木材の比率を50%にすることを目標にしており、目標達成に向け、順調に推移しています。

[ 写真 ] 合法性審査会
合法性審査会
[ 写真 ] 訪問調査の様子
訪問調査の様子

原産地コミュニティーと連携した良質材の育成(“おとの森”活動)

楽器をはじめとする当社製品には多種多様な木材が使用されていますが、近年資源量の減少や品質の低下から、それらの持続性が懸念されています。ヤマハでは、原産地コミュニティーの発展や循環型の森林保全、高品質で楽器に適した木材の持続的調達の全てを同時に実現するための活動を“おとの森”活動と名付け、地域社会や行政、学術機関と連携し国内外で展開しています。

タンザニアでの取り組み(アフリカン・ブラックウッド)

ヤマハは2015年度から、木管楽器の重要な材料である「アフリカン・ブラックウッド」について、原産地であるタンザニア連合共和国で種の保全と安定調達の実現に向けて、その生態や資源量、森林管理状況などの調査を開始しました。同種はIUCNレッドリストでNear Threatened(準絶滅危惧)に分類されるなど、近年その資源量が減少傾向にあると言われています。分布、生育、天然更新などの生態や森林の管理状態を調査した結果、適切な管理により持続的な調達が見込める可能性があることが分かりました。2016年度から2019年度までは、国際協力機構(JICA)のBOPビジネス連携事業として、同樹種を楽器素材として持続的に利用できるビジネスモデルの実現に向け、森林保全と木材利用、楽器生産を循環的に進めるバリューチェーンを構築し、早期のモデル実現に向けた課題解決を進めました。さらに2017年度より、現地NGOや地域住民と連携し、将来の資源量確保に向け、アフリカン・ブラックウッドの定期的な植林活動を開始し、2019年度には約1,000本の植栽を実施しました。現地NGOと共同で苗木育成技術を地域に提供していくことで、苗木は地域住民による管理の下で計画的に育成され、1年ごとに森林内に植栽されています。2017年度から2019年度にかけて、3年間で約6,000本の苗木が植栽され、植栽後の苗木の成長のモニタリングを継続しています。2017年度に植栽した約1,500本の苗木のうち約80%の生存と成長が確認されており、良質材育成のための基礎的知見を構築していくと同時に、地域住民による森林管理活動の一つとしての苗木育成・植林活動の定着・拡大を進めています。また、現地製材業者とパートナーシップを組み、持続可能な森林管理が行われている認証林からの木材の調達や材料の利用効率向上など、現存資源の有効活用に向けた取り組みも進めています。

[ 写真 ] 生態調査
生態調査
[ 写真 ] 植栽した苗木(左)の成長(右)
植栽した苗木(左)の成長(右)

北海道での取り組み(アカエゾマツ)

ピアノの響板を製造している北海道の北見木材(株)(以下、北見木材)は、循環型の森林づくりとアカエゾマツ人工林材の需要拡大に協力すべく、2016年3月にオホーツク総合振興局、北海道紋別郡遠軽町との「『ピアノの森』設置に関する協定」に調印しました。
近年、アカエゾマツ天然林材の減少に伴い、ピアノ響板用の木材はそのほとんどを輸入材に頼らざるを得ない状況です。この協定では、オホーツク管内の道有林や遠軽町有林を活用し、アカエゾマツ人工林の適切な管理や植樹など、森づくりの活動を協力して展開しています。将来的に、ピアノ響板に使用できる高品質なアカエゾマツの安定供給を再び実現するとともに、オホーツクの「木の文化」を次世代に引き継ぐことを目指しています。
2019年には、北見木材従業員とその家族、約80名でオホーツク総合振興局が管理するアカエゾマツ人工林の枝打ち作業(良質材を育てるために枝を切り落とす作業)を行いました。長い年月と手間がかかって形成された森、そこから出材する木材に支えられてピアノづくりが成り立つことを改めて認識する貴重な機会となりました。
また、2020年1月には、こうした森づくりの活動を多くの皆さんに知っていただくとともに、豊かな楽器の響きを生み出す原点である木や森に思いを馳せていただく機会を提供することを目的に、同協定の関係者とともに札幌駅前通地下広場「チ・カ・ホ」で開催された「木育ひろば in チ・カ・ホ」に出展しました。ヤマハグループの木材資源に対する取り組み紹介のパネル・動画に加え、アカエゾマツ人工林材を使用したグランドピアノ響板や実物のアカエゾマツの展示、素材ごとの音の聞き比べ体験、ピアノ型オルゴールの手作りワークショップなどを実施しました。ワークショップでは、オルゴールの共鳴箱に北見木材で製造したピアノ木製部材の端材を使用するなど、木とピアノの繋がりを感じられる出展となりました。

[ 写真 ] アカエゾマツの人工林
アカエゾマツの人工林
[ 写真 ] ピアノ部材用の木材
ピアノ部材用の木材
[ 写真 ] 北見木材の従業員とその家族で行った枝打ち作業
北見木材の従業員とその家族で行った枝打ち作業
[ 写真 ] 「木育ひろば in チ・カ・ホ」での展示
「木育ひろば in チ・カ・ホ」での展示
[ 写真 ] 端材を使ったオルゴール作り
端材を使ったオルゴール作り

木材資源に対する製品の環境配慮

ヤマハグループでは、再生可能な優れた資源である木材を持続的に活用していくために、森林や生態系を損なうことのないよう適正に管理された認証木材や、計画的に植林された産業用途の木材を積極的に導入しています。
一方、楽器に適した希少樹種の優れた機能を再現した代替素材の開発にも注力しています。

製品・梱包における省資源化

製品の小型・軽量化や複数製品の一体化、梱包材・緩衝材の縮小化・削減など、さまざまな視点から製品の省資源化を進めています。また、省資源につながる製品の長寿命化、ピアノリニューアル事業などにも取り組んでいます。

持続可能な原材料やリサイクル材の活用

希少木材に代わる素材の開発や、バイオマス由来樹脂など再生可能な素材を製品に採用する取り組みを進めています。また、リサイクルポリスチレン材料をスピーカーボックスの一部に利用するなど、リサイクルプラスチックの製品への採用も進めています。

木材資源の有効活用

木材加工において、歩留まり向上によるロス削減を進めるとともに、工程から出る木くずの再利用・再生利用を進めています。端材の他部品への転用や、原材料・堆肥・燃料としての利用(売却もしくは処分)のほか、国内ピアノ製造工場の木材加工工程から排出されるおがくずを、牛の寝床となる敷料に活用していただくというユニークな取り組みも行っています。

[ 図 ] 従来は廃棄していた端材を隅木(ギターボディ内部の補強材)に転用
従来は廃棄していた端材を隅木(ギターボディ内部の補強材)に転用

廃棄物の排出削減と再資源化

ヤマハグループは、工場や事業所から排出される廃棄物の削減と再資源化を推進するため、回収・分別などのシステムを確立しています。ヤマハグループ(国内)における再資源化率は約99%です。

廃棄物削減の取り組み事例
事業所 内容
豊岡工場 2010年11月に液状廃棄物の減圧濃縮装置を導入、管楽器生産工程からの廃酸・廃アルカリなどの排出量を約80%削減
研究開発部門から出る希少金属含有廃棄物を2011年度より有価物処理に切り替え、資源を有効活用
減圧濃縮装置に代わる液状廃棄物減容設備CDドライヤーを新たに導入し、2019年2月に本格稼働。廃酸・廃アルカリなど特別管理産業廃棄物の排出量を約30%削減
掛川工場 2009年9月に廃水処理施設を増設し、ピアノ製造工程から出る接着剤を含む廃水を社内で処理。廃棄物削減効果約90t/年
接着剤を含む廃水の処理能力を2012年9月に増強。廃棄物削減効果約270t/年
北見木材 液状廃棄物減容設備CDドライヤーを2019年2月に導入。廃水汚泥などの廃棄物排出量を約50%削減
蕭山ヤマハ楽器 2013年度、楽器の塗装ブースで用いる循環水を清浄に保ち、長持ちさせることで、塗装工程廃棄物を削減。廃棄物削減効果約120t/年
ヤマハファインテック(株) 2011年度、設備不良や品質不良の改善によってカーパーツの不良品を削減。工場全体での廃棄物排出量を16%削減するとともに、生産性の向上によって省エネ・省資源も実現
[ 写真 ] CDドライヤー(豊岡工場)
CDドライヤー(豊岡工場)
[ 写真 ] CDドライヤー(北見木材)
CDドライヤー(北見木材)

廃棄物関係のデータについては、環境データのページに掲載しています。

製品や容器包装の再資源化

EUのWEEE指令をはじめ、各国、地域における製品や容器包装などのリサイクル法令に対応するとともに、日本国内では使用済みエレクトーン製品の回収拠点を全国に整備し、回収・リサイクルを行うなど資源の有効活用に努めています。

ヤマハグループでは、製品の洗浄工程や設備の冷却などで水資源を使用しています。水リスクについてはグループ全体で実施する総合リスク評価に加え、全ての拠点について水リスク判定ツールやアンケート調査により「物理的な水ストレス」、「水の質」、「水資源に関する法規制リスク」、「レピュテーションリスク」を評価しています。現在、水資源に乏しい地域での大規模な生産活動はしておらず、取水による環境への大きな影響はないと認識しています。また、水を大量に使用かつ取引金額の多いサプライヤーに対し、取水量や水リスクの認識、被害事例などの報告を求めるなどし、バリューチェーンでの水リスク把握にも努めています。
一方、管楽器の製造工程である、めっきや洗浄工程では多量の水を使用するため、1970年代前半から冷却水の循環利用や逆浸透膜(RO膜)装置などによる工程廃水の再生利用、用水設備の漏えい対策などに取り組んでいます。

取水量や水の再生利用に関するデータについては、環境データのページに掲載しています。

節減や再生利用の取り組み

蕭山ヤマハ楽器

管楽器、打楽器の製造を行っている中国の蕭山ヤマハ楽器では、純水レベルまで再生する性能を備えた廃水処理施設を導入して以来、廃水の約80%を工程用水として再利用しています。(浙江省電気めっき企業汚染改善検収方案※1適合)
また、管楽器の銅管部品の熱処理に使用する焼鈍炉の冷却を、循環水で供給可能な方式に変更し、年間約5,700トンの水を削減しています。

  • ※1 電気めっき工場における環境保全のための浙江省の法律。電気めっき工程を持つ企業に、環境保全体制や設備などに関する56項目の要件を課しており、銅、ニッケルなどの金属については、一般の工場排水基準よりも厳しい基準が設定されています
[ 写真 ] 廃水処理施設
廃水処理施設
[ 写真 ] 循環水で供給可能な冷却装置
循環水で供給可能な冷却装置

ヤマハ・ミュージカル・プロダクツ・インドネシア

管楽器の製造を行っているヤマハ・ミュージカル・プロダクツ・インドネシア(YMPI)では、廃水の60%以上を再利用できる廃水処理施設を導入しています。また、廃水処理プロセスの合理化によって、薬品使用量の削減も図っています。
リコーダー生産工程では、洗浄水を循環再生利用できる設備を導入し、年間約12,000トンの水を削減しました。2019年には他工程にも展開し、さらに1,300トンの水を削減しています。

[ 写真 ] 廃水処理施設
廃水処理施設

杭州ヤマハ

ピアノ、ギターの製造を行っている杭州ヤマハでは、厳格化する排水基準に対応すべく、2016年5月に新たな廃水処理設備を導入しました。この設備は、廃水を再利用可能なまでに浄化することが可能で、同設備で処理した廃水を冷却水などとして再利用することにより、年間約10,000トンの水資源を節約できるようになりました。

[ 写真 ] 廃水処理施設
廃水処理施設
[ 写真 ] 廃水を冷却水などに再利用
廃水を冷却水などに再利用

ヤマハ・ミュージック・インディア

2019年1月に竣工したヤマハ・ミュージック・インディアでは、完全クローズドの廃水処理設備を導入しました。工程から排出される廃水は100%再利用され、工場外へ排出されることはありません。

[ 写真 ] 廃水処理施設
廃水処理施設
[ 写真 ] 工程廃水を100%再利用
工程廃水を100%再利用

ヤマハ・ミュージック・マニュファクチュアリング・アジア

電子楽器の製造を行っているヤマハ・ミュージック・マニュファクチュアリング・アジア(YMMA)の廃水処理施設では、2019年にRO設備を導入し、処理水を工程用水に再利用している他、チラーに噴霧し冷却効果を高めることで年間約120,000kWhの節減を行っています。

[ 写真 ] RO設備
RO設備

ヤマハ・ミュージカル・プロダクツ・アジア

2020年度に生産開始予定のヤマハ・ミュージカル・プロダクツ・アジア(YMPA)では、工程水への再利用を考慮した最新の廃水処理施設が竣工し、テストランを開始しました。

[ 写真 ] 廃水処理施設
廃水処理施設