気候変動の緩和および気候変動への適応

人間社会および地球のあらゆる生物の脅威となる急速な気候変動を緩和し、脱炭素社会への移行に貢献することは、企業の責務であり重要な経営課題です。

ヤマハグループは、代表執行役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」の下部組織として「気候変動部会」(部会長:常務執行役)を設置し、国際的な協調により推進される温室効果ガス排出削減に取り組むとともに、気候変動がもたらすあらゆる影響に備えるため、リスクの特定と軽減策の策定を行い、事業戦略への組み込みを進めています。

2019年6月に、科学的根拠に基づく削減のシナリオと整合した温室効果ガス削減目標設定を推進するSBT※1イニシアチブに賛同、中長期での削減目標を設定し、認定を受けました。2021年9月にはカーボンニュートラル実現に向けた国際社会の動向を踏まえ、スコープ1+スコープ2の削減目標を前回の32%削減から55%削減へと大幅に引き上げる、より意欲的な「1.5℃目標」で申請し、認定を取得しました。また、2019年6月には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)※2提言への賛同を表明し、気候変動の財務的影響についての分析や情報開示の取り組みを開始しました。

今後、温室効果ガス削減や気候変動影響への対応を進める中で、省エネ製品など気候変動を緩和し、脱炭素社会づくりを促進する製品・サービスやビジネスモデルの創出を目指していきます。

[ ロゴ ] SCIENCE BASED TARGETS - DRIVING AMBITIOUS CORPORATE CLIMATE ACTION -
[ ロゴ ] TCSD - TASK FORCE ON CLIMATE-RELATED FINANCIAL DISCLOSURES -
  • ※1 科学的根拠に基づいたパリ協定目標達成に向けての削減シナリオと整合した温室効果ガスの削減目標であるScience Based Targetsの略称
  • ※2 金融安定理事会(FSB)によって設立されたTask Force on Climate-related Financial Disclosuresの略称。気候変動がもたらす財務的影響を開示することで投資家に適切な投資判断を促すことを目的とした提言を公表

ヤマハグループの温室効果ガス削減目標(SBT認定)

  • 2030年度までに温室効果ガスの排出量(スコープ1※3およびスコープ2※4の合計)を2017年度比で55%削減(2050年度 実質カーボンニュートラル)
  • 2030年度までに温室効果ガスの排出量(スコープ3※5)2017年度比で30%削減
  • ※3 敷地内での燃料使用など、事業者自らによる温室効果ガスの直接的な排出
  • ※4 他から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う温室効果ガスの間接的な排出
  • ※5 スコープ1、スコープ2以外の、サプライチェーンなど間接的な活動に伴う排出

温室効果ガス削減の主な施策

  • 生産方法や設備配置の最適化、エネルギー効率の高い設備やLED照明の導入、設備稼働時間や空調温度などエネルギー管理の徹底などによる省エネ推進
  • コージェネレーションシステムや太陽光発電設備の導入
  • 温室効果ガス排出の少ない燃料への転換
  • 購入電力の再生可能エネルギーへの切り替え
  • ICP(インターナルカーボンプライシング)による高効率設備、再生可能エネルギー関連設備の投資促進
  • 物流における輸送効率向上やCO2低排出輸送モード(船、鉄道)への切り替えなど
  • 製品の省エネ化(スコープ3のうち排出量の大きなカテゴリー(製品使用)の削減)

これまでの取り組みと実績

ヤマハ(株)および国内生産系拠点では長年に渡りCO2排出量原単位を毎年1%ずつ削減することを目標に、製造工程や事業所での省エネを中心とした取り組みを進めてきました。再生可能エネルギー導入も進め、本社事業所では2021年4月より購入電力を100%再生可能エネルギー電力に切り替え、さらに同年9月からは静岡県内の水力発電由来の電力である「静岡Greenでんき」に切り替えました。海外生産拠点では拠点ごとに削減の数値目標を設定し、それぞれ目標達成に向けて積極的に取り組んでいます。

削減の取り組みを進めるにあたり、温室効果ガスの排出量はGHGプロトコル※6に基づいて管理しています。なお、2016年度よりスコープ1、2およびスコープ3の一部の第三者検証を実施しています。

  • ※6 温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)排出量の算定と報告の基準
静岡県産CO2フリー電力「静岡Greenでんき」ロゴ
再エネ100%電力の事業者に静岡県から交付される「再エネ100%ふじっぴー」ロゴ

スコープ1、2実績(ヤマハ(株)および全生産拠点)※7 ※8 ※9

[ グラフ ]
  • ※7 データの集計範囲はヤマハ(株)および全世界の主要生産工場、リゾート施設です(ヤマハグループ全拠点の95%以上と推測されます)
  • ※8 地域・電気事業者別排出係数を拠点別、年度別に細分化して計算し直したため、前回と数値が変わっています
  • ※9 購入電力・蒸気による間接的な排出、自家発電および熱利用のための直接的な二酸化炭素排出量と製造工程で使用され排出されるGHG量を合算しています

スコープ3(2022年3月期)

[ グラフ ]

インドネシア植林活動によるCO2吸収

2005年から2016年にインドネシアにおいて実施した「ヤマハの森」植林活動について、2017年、衛星写真による森林の育成状況の確認と森林が吸収したCO2量の推計を実施しました。推計の結果、2017年までに合計で約42,000tのCO2が吸収されたと見込まれており、その後も年間6000t超のCO2が吸収され続けていると予想されます。

ICP(インターナルカーボンプライシング)の導入

ヤマハグループでは、気候変動リスクに対処するため再生可能エネルギー関連投資や高エネルギー効率機器の選択が必要と考えており、社内で炭素の価格付けを行い、投資による効果に炭素発生量の削減を付加して投資判断を行う仕組み「インターナルカーボンプライシング(ICP)」を採用しています。2022年4月時点では14,000円/tCO2で運用しています。

生産工場での取り組み

弦打楽器工場での省エネ活動

(株)ヤマハミュージックマニュファクチュアリング(飯田工場)は、省エネ推進委員会を設置してCO2排出削減に取り組んでいます。コンプレッサーの圧力の適正化、ブースの間仕切り、電力モニターの設置、事務所への通風を促す網戸の設置、設備の集約や合理的配置による省スペース化を進め、エネルギー効率を改善しています。さらに、工場の屋根に遮熱塗料を塗布し空調効率を改善させる取り組みも行っています。

ピアノ工場での省エネ活動

(株)ヤマハミュージックマニュファクチュアリング(掛川工場)では、継続的に各種省エネ施策を実施しています。具体的な活動としては、不要照明の撤去、蛍光灯のLED化、コンプレッサーのインバーター化、配電用トランスや空調機の更新、空調制御改善などです。2020年度にはコンプレッサーの統合制御を行い、無負荷時に効率の良い運転が可能となったことでさらなる省エネが実現できました。これらの活動により、2015年3月期から2022年3月期の8年間累計で、CO2排出約500t-CO2、電力使用約840MWhの削減効果を上げています。さらに、コージェネレーションシステムの稼働により、CO2排出が年間約2,900トン削減(原油換算で年間420kL削減)されています。

掛川工場のコジェネレーション設備

夏場のピーク電力カット

ヤマハファインテック(株)では、夏場のピーク電力カットのため、エアコンの稼働調整や工場屋根への散水を実施しています。加えて2015年3月期からは、7月~9月の3カ月間、空調負荷の高い自動車用内装部品の塗装工程の一部で、始業を2時間早めて朝6時からとする「サマータイム」制を運用しています。これらの活動により、電力ピークの時間が14時頃から11時頃にシフトし、午後の暑い時間帯のピーク電力を約310kW削減するとともに、7月~9月の3カ月間で約20万kWhの節電効果を得ることができました。さらに、作業改善で設備稼働時間を短くすることや、職場レイアウトの見直しによる空調削減、冬場の蒸気使用見直しなどによる節電の取り組みを進めています。

中国工場での省エネ活動

中国の杭州ヤマハ楽器有限公司では、生産の増加に伴うエネルギー使用の増加を抑制するために、技術的な改善や日常管理レベルの向上など、さまざまな省エネ策を講じています。それらの省エネ策など、環境への取り組みが評価され、2011年末に中国の清潔生産促進法に基づく「クリーン生産認証」を杭州市から取得しました。その後も継続して、次のようなエネルギー使用量削減策を実施しています。

  • 集塵機の適正な運転管理
  • 給水稼働時間の短縮、照明の適正配置・点灯時間の削減
  • 集塵機の稼働を自動制御するシステム、配電盤にデジタル電気メーターを設置し電気使用量の管理強化、夜間の設備待機電力ロスを削減
  • 電灯のLED化を順次実施
省エネなど環境活動の掲示板
従業員への環境教育

リゾート施設での取り組み

(株)ヤマハリゾートは、運営するリゾート施設において、次のようなCO2排出削減活動に取り組んでいます。

ゴルフ場運営におけるCO2・燃料の削減(葛城ゴルフ倶楽部):
  • カートを給油式から電動式へ変更することにより年間8t以上のCO2排出削減
  • グリーンファン(芝生維持)や施設空調の調整により年間約25MWhの節電
  • 暖房に温水を利用した大型空調機の空冷式(省エネタイプ)に更新。これによりボイラー燃料(重油)が約30%削減され、ボイラー運転時間も1時間短縮
    2022年3月期には、高効率ボイラー設備への更新を2台実施し、EV車充電設備を4台導入しました。
ホテル運営におけるCO2の削減(葛城北の丸):
  • 高効率ボイラー設備への更新
    2022年3月期には、客室エアコン(7室)を、冷媒転換に合わせて高効率型に変更し、ホテルロビー空調機を高効率型へ更新しました。
照明のLED化(葛城ゴルフ倶楽部および葛城北の丸):
  • 照明器具のLED化を進めるとともに、トイレに人感センサーを設置し、年間約49MWh節電
  • クラブハウスのロビー照明と北の丸庭園の外灯を水銀ランプからLEDへ転換し、年間約28MWh節電

オフィスでの取り組み

節電のための主な施策

照明間引き(照度確認の上で実施)、LED照明導入、広告灯の消灯、エレベーター運休、電気使用量実績の通知による従業員への意識付けなど

照明のLED化

ヤマハ(株)本社事業所では、事務所照明のLED化を進め、2014年3月期~2022年3月期の9年間累計で蛍光灯や水銀灯約1,400本の交換により、年間約61MWhの節電効果が出ました。豊岡工場では外灯のLED化で年間約44MWhの削減効果、さらに屋内の蛍光灯については、2017年3月期~2022年3月期の6年間累計で約5,100本をLED化し、年間約70MWhの削減効果を出しています。今後も各工場・事業所内で計画的にLED化を進めていく予定です。

「クールビズ/ウォームビズ運動」の実施

夏期(5~10月) … ノーネクタイなどの軽装を推奨し、冷房温度を28℃以上に設定

冬期(11~3月) … 着衣の工夫などによって、暖房器具に頼りすぎず暖房温度を20℃以下に設定

クールビズ/ウォームビズ 社内啓発用ポスター

物流での取り組み

物流における省エネ・CO2排出量削減

輸送効率向上やリードタイム短縮などの施策と合わせて、省エネおよびCO2排出量削減を推進しています。トラックやコンテナの充填率向上や倉庫配置・輸送ルート見直しによる輸送距離の短縮、CO2低排出輸送モード(船、鉄道)への切り替え検討のほか、輸送梱包仕様の見直し、他社との共同輸送、廃製品の現地処分化など、さまざまな取り組みの中でCO2排出量の削減につながる施策を進めています。

2022年3月期におけるヤマハグループの国内総輸送量(国内販社などの輸送も含む)は、前年度比310万トンキロ(t×km)減の1,633万トンキロ(t×km)、CO2排出量についても前年度比466t-CO2減の2,527t-CO2となりました。

また、物流におけるCO2排出量削減には輸送事業者の協力が不可欠であり、運送委託先への環境配慮協力の要請やアンケート調査への環境項目の盛り込みなどを通じて、輸送事業者の皆さまと連携した体制づくりに努めています。

ピアノフレーム輸送での省資源・CO2排出量削減

日本から海外工場へピアノフレームを輸送する際、従来は使い捨ての鉄製梱包ラックを用いていましたが、複数回利用できるリターナブルのピアノフレーム用梱包ラックを導入することで、省資源化を図っています。また、加えて輸送距離の短縮や積載効率の向上なども進めたことにより、鉄製ラックの廃棄に伴うCO2排出量を年間100t削減、鉄資源消費も年間1,600t削減できました。今後も、ピアノフレーム以外の部品を含めて輸送距離の短縮や使い捨て梱包材料の削減を検討していきます。

リターナブル物流のフロー図
グランドピアノフレーム用リターナブルラック
折りたたみ状態のラック(返送時)

部材・材料の輸送梱包材標準化による省資源・CO2排出量削減

ヤマハグループでは、輸送時のコンテナサイズに合わせ、梱包サイズを小型化することで、コンテナ1本に積み込める製品数を増やして輸送効率を向上させています。例えば電子ピアノPシリーズにおいて梱包サイズを17%小型化し、コンテナ積載率を12.5%向上させました。これにより、40フィートハイキューブコンテナ換算で、年間269本を削減し、CO2排出量を年間26t削減しました。

標準化前の梱包箱のコンテナ(左)と積載状況標準梱包箱のコンテナ積載状況(右)

人間社会および地球のあらゆる生物の脅威となる急速な気候変動を緩和し、脱炭素社会への移行に貢献することは、企業の責務であり重要な経営課題だと捉えています。

ヤマハグループは2019年にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明しました。TCFDの提言に基づき、気候変動が事業にもたらすリスクや機会を分析し、経営戦略に反映させるとともに、その財務的な影響についての情報開示に努めていきます。

[ ロゴ ] TCSD - TASK FORCE ON CLIMATE-RELATED FINANCIAL DISCLOSURES -

ヤマハの取り組み

ガバナンス

気候変動対応を含むサステナビリティに関する重要事項は、2021年1月に発足した代表執行役社長の諮問機関であるサステナビリティ委員会(委員長:代表執行役社長/2022年3月期は10回開催)にて議論した上で、取締役会にて議論・検討することにより、取締役会の監督が適切に行われる体制を整備しています。

気候変動に関わるリスクと機会への対応は同委員会の下部組織である気候変動部会(部会長:常務執行役)で審議され、サステナビリティ委員会に報告されます。

2022年3月期には、中長期的な企業価値に影響を及ぼす経営の重要課題(マテリアリティ)の見直しを行い、改めて「気候変動への対応」をマテリアリティとして特定しました。2022年4月にスタートした中期経営計画「Make Waves 2.0」では、基本方針に「サステナビリティを価値の源泉に」を掲げ、気候変動への対応を重点テーマとして位置づけています。

戦略

当社は、ヤマハグループ全体に及ぶ影響を確認するため、全事業を対象に国際エネルギー機関(IEA)による移行面で影響が顕在化する「1.5~2℃シナリオ※1」と、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による物理面で影響が顕在化する「4℃シナリオ※2」を用いてシナリオ分析を行い、短期・中期・長期※3のリスクと機会を抽出しました。

  • ※1 1.5℃シナリオ:NZE(IEA World Energy Outlook 2021)、2℃未満シナリオ:SDS(IEA World Energy Outlook 2021)
  • ※2 4℃シナリオ:RCP8.5(IPCC第5次評価報告書)
  • ※3 短期:現在-数年後/中期:2030年/長期:2050年に影響が強く表れる

主な気候変動リスク及び機会と対応

<移行リスク>
主な短期リスク:
「脱炭素化により木材伐採事業の撤退が進み、木材が調達しにくくなるリスク」が挙げられます。
当社グループは森林資源の持続可能性の観点から、安定的な供給が望める認証木材使用率を高めてきており、2022年3月末時点で52%に達しています。また、特定の産地の木材が入手困難になった場合でも社内に木材専門の技術部門および調達部門を保持しており、速やかに代替材への移行を実現するノウハウを有しています。
主な中期リスク:
脱炭素社会の実現に向けさまざまな施策が展開されていく中、カーボンプライシングによるエネルギー価格の高騰や追加コストの発生が予想されます。
これに対し、当社グループは温室効果ガスの削減目標をこれまでのSBT2℃水準からSBT1.5℃水準へ引き上げました(2021年9月、1.5℃水準で再認定)。
目標達成に向けて、全社的な省エネルギー活動の推進、再生可能エネルギーの導入、製品の省エネルギー化、物流の効率化、サプライヤーとのエンゲージメント強化などに取り組んでおり、低炭素化のための設備投資を促すICP(インターナルカーボンプライシング)や、新社屋における低炭素施策の導入など、さまざまな取り組みを進めています。
より意欲的な目標を掲げて排出削減を進めることは、さまざまな移行リスクを回避することにつながっており、今後も取り組みを強化していきます。
<物理的リスク>
主な長期リスク:
温暖化の進行とともに、調達している木材の生育適域が変化していく可能性があり、それにより特定楽器の製造が困難になることが挙げられます。当社グループが調達する木材から主な樹種を選定し、学術論文をもとに調査した結果、数樹種については温度上昇に伴って生育適域が減少するという可能性が見受けられました。これらの樹種で調達が困難となり原料価格の高騰などが生じた場合、事業リスクとなります。これらの樹種については今後特に生育状況などを注視し、影響が見受けられた場合は、早急に代替材への切り替えなどを行う準備を整えていきます。
木材を持続可能な形で利用し続けるため、当社グループでは、違法に伐採された木材を調達してしまうことがないよう、伐採時合法性の厳格な確認を進めています。さらに気候変動による温暖化が進むことで、入手が困難になると見込まれている希少木材(楽器の原材料)については、「おとの森活動(原産地コミュニティーと連携した良質材の育成)」など多面的な活動を実施することで、事業のレジリエンスを継続的に高めていきます。
洪水などのリスクについては、ヤマハの主要なグローバル拠点および主要物流拠点、サプライヤーにて、2050年4℃シナリオ(100年に一度)を想定した場合の洪水リスク(河川氾濫・沿岸氾濫)ならびに浸水時対策の有効性を調査し、その結果大きな被害は想定されませんでした。
2020年3月期には全てのグローバル拠点においてBCPの策定が完了し、拠点ごとに想定される台風や洪水など自然災害に対して、排水設備を設置するなどの事前対策を実施しています。
世界的に多雨や台風などによる水害が相次いでいることから、浸水リスクが比較的大きい拠点については移動や統廃合を検討しており、サプライチェーン全体の水害リスクを事業継続計画に盛り込んで非常時に適切な対応ができる準備を整えています。
<機会>
主な中期機会:
「気候変動対策を理由とする移動控えにより、製品需要が増加する機会」などが挙げられます。需要の伸長が期待される製品はコミュニケーション機器、通信機器などです。また、脱炭素化の進展により、EVなどの普及が進むことで、軽量・高音質を実現する当社オーディオ技術への顧客からの支持拡大や車内音響空間をトータルにプロデュースする新たな事業ドメインの獲得などが期待されます。
主な長期機会:
「気温上昇などによる野外活動の制限により、製品需要が増加する機会」などが挙げられます。需要の伸長が期待される製品は楽器全般のほか、コミュニケーション機器、通信機器などです。また、楽器に適した木材の生育適域減少に備えて、既存材を超える特性を持つ代替材を開発することで、新たな価値を提供し、事業機会を拡大することが見込めます。

リスク管理

代表執行役社長の諮問機関としてリスクマネジメント委員会を設置し、リスクマネジメントにかかわるテーマについて全社的な立場から審議し、代表執行役社長に答申しています。

リスクマネジメント委員会では、気候変動を含む事業に関連するさまざまなリスクについて、想定される損害規模と発生頻度に応じて評価・識別しています。また、各リスクに対するコントロールレベルを評価し、優先的に対処すべき重要リスクを特定するとともに担当部門を定め、リスク管理レベルの引き上げを図っています。

特に自然災害に起因する物理的リスクへの対応に関しては、同委員会の下部組織としてBCP・災害対策部会を設置し、BCP策定をはじめとする事業継続マネジメントを実行しています。

取締役会は執行役からの報告等により、リスクマネジメントの仕組みの有効性や推進状況を確認・監督しています。

指標と目標

サプライチェーンを含めたグループ全体のCO2削減を横断的に管理するため、温室効果ガスの総排出量(Scope1、Scope2、Scope3)をGHGプロトコルのスタンダードに基づき算出して指標とし、第三者検証を実施しています。

2031年3月期までに2018年3月期比でスコープ1+2を55%削減(SBT1.5℃水準)、スコープ3を30%削減する中期目標を策定し、Scope1+2 については2051年3月期までにカーボンニュートラルを達成するという長期目標を設定しています。

また、森林資源および生物多様性の保全のため、2022年3月期までに認証木材使用率50%を目標に取り組みを進め、2022年3月時点で52%と目標を達成しました。今後は使用する木材の持続可能性をより広範に管理するための自社基準を策定し、2025年3月期に、同基準に適合した「持続可能性に配慮した木材」の使用率を75%にすることを目標に活動を継続します。

シナリオ分析結果

カテゴリー 影響
段階
リスク/機会 根拠およびヤマハへの影響と対応 事業への
影響
(潜在的)
移行リスク
・機会
(1.5℃上昇を想定)
調達 短期リスク 脱炭素化により木材伐採事業の撤退が進み、木材が調達しにくくなるリスク
  • ネットゼロを目指す企業の増加により、森林由来の炭素クレジットの需要増が見込まれ、森林保有者の木材事業からの撤退事例が生じている。
    すでに一部産地における木材事業撤退の影響を受けているが、異なる産地の木材に代替することでリスクを回避している。
  • 当社の木材調達先で伐採事業からの撤退が拡大した場合、製品製造に必要な木材が調達しにくくなるリスクがあるが、社内に木材技術及び調達の専門部門があり、代替材の開発や調達先の変更など速やかな対応を行っている。
  • また、木質原材料の調達にあたっては、森林が持続するよう管理された”認証材”に切り替える施策を実行している。
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直接操業 中期リスク カーボンプライシングの導入や増額等により、追加コストが発生するリスク
  • 2030年の炭素価格はIEA 2050ネットゼロシナリオ(NZE)では、日本130米ドル/t-CO2(約1.5万円/t-CO2)、中国90米ドル/t-CO2(約1万円/t-CO2)、インドネシア15米ドル/t-CO2(約1700円/t-CO2)と予測されており、2030年にはこれらのカーボンプライシング影響により成り行き値で16億円程度のコスト増となるが、1.5℃シナリオに対応したGHG削減目標を達成することで、6億円程度に抑制できると見込んでいる。(1米ドル115円で計算)
  • 目標達成のためICP(インターナルカーボンプライシング)を14,000円/CO2tに設定し、低炭素設備投資の促進や生産部門のエネルギー効率向上、再生可能エネルギー導入を進めている。
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再生可能エネルギー調達量の増加により、追加コストが発生するリスク
  • 大幅な排出削減を実現するためには再生可能エネルギー調達が重要となると認識。
  • ヤマハのスコープ1・2排出量の多くは電力に由来。排出削減を進めるためには更なる再生可能エネルギー調達が必要と見込んでいる。(2022年3月期の購入電力料金は30億円程度)
  • 省エネルギー、再生可能エネルギー自家発電、再生可能エネルギー調達にて炭素排出量を削減していく。
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製品需要 中期機会 気候変動対策を理由とする移動控えにより、製品需要が増加する機会
  • 気候変動対策を理由に移動(飛行機の利用など)を控える動きが見え始めており、 今後こうした傾向が継続・拡大していく可能性がある。
  • このようなアウトドアからインドアへの生活様式の変化は、ヤマハのコミュニケー ション機器(スピーカーフォン、ルーターなど)製品の需要増につながると考えられ、 機会となり得ると認識。
  • 脱炭素化により自動車の電動化が進むことが想定される。IEAのネットゼロシナリオ(NZE)では、EV⽐率(販売ベース)を2030年64%、2050年100%と見込んでいる。電気自動車の普及が加速されることにより、より軽量で、かつ高音質なオーディオ性能を実現する技術を保有する当社は顧客からの強い支持が得られる。さらにオーディオにとどまらず車内音響空間をトータルにプロデュースする新たな事業ドメインを獲得できる可能性がある。
  • 気候変動対策として廃棄物削減・資源有効活用への動きが加速する中、原材料のリデュース、再生材・再生可能素材の利用、アップグレードや高耐久化による長期使用の促進、梱包材の脱プラ化などを実現する技術開発や、製品のサービス化などビジネスモデルの変革により、業界の方向性に関して主導的な役割を果たすブランドとなり得る。
+ +
物理的リスク
・機会
(4℃上昇を想定)
調達 長期リスク 調達木材の適域変化により、調達木材の入手が困難となるリスク
  • 温暖化の進行とともに、調達している木材の生育適域が変化していく可能性がある。
  • 当社の調達木材から希少性や代替の難しさなどに鑑みて主な樹種を選定し、学術論文をもとに調査した結果、数樹種について適域が減少するという可能性が見受けられた。これらの樹種で調達が困難となり原料価格が高騰するリスクがある。
  • 楽器適材を生み出すサステナブルな森を地域社会と一体となり実現する活動「おとの森」活動の展開などを通じて、良質な木質原材料の長期にわたる安定的な調達を目指している。
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直接操業 大雨・洪水により自社拠点(工場など)が影響を受け、操業停止・逸失利益が発生するリスク
  • 温暖化の進行とともに、大雨・洪水などの被害が増加することが想定される。自社拠点(工場など)が洪水被害を受け、操業停止となった場合には逸失利益が発生する可能性がある。
  • ただし2050年4℃シナリオを想定した場合、床上浸水1mを超える洪水被害により事業影響を受けると見込まれる拠点はヤマハグループ主要拠点、物流拠点、主要サプライヤー(合計で約100箇所)には存在しないことを自社調査で確認済。
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製品需要 長期機会 気温上昇を理由とする夏季の外出控えにより、製品需要が増加する機会
  • 夏場の気温上昇(熱中症など)を理由に外出を控える傾向が見え始めており、今後こうした傾向が継続・拡大していく可能性がある。
  • このようなアウトドアからインドアへの生活様式の変化は、ヤマハのコミュニケーション機器(2022年3月期のICT機器売上収益145億円)
    やギターをはじめとする楽器全般(2022年3月期の楽器事業売上収益2762億円)の需要増につながると考えられ、機会となり得る。
  • 楽器に適した木材の生育適域減少に備えて、既存材を超える特性を持つ代替材を開発することで新たな価値を提供し、音楽文化の発展と事業機会の拡大を実現することが見込める。
+ +
  • (注)想定度×事業影響の大きさから一定以上のものを掲載
TCFD開示案図表2

気候変動に関するCDP調査において最高評価となる「Aリスト」企業に選定

ヤマハは、気候変動などの環境分野の課題に取り組む国際的な環境非営利団体CDPより、気候変動対策の取り組みとその情報開示に関して世界的に優秀な企業として評価され、「2021年度気候変動Aリスト企業」に初めて選定されました。

2022年3月期のCDP気候変動調査は、世界中の主要企業約13,000社を対象に実施されました。対象企業は、AからD-までの8段階のスコアで評価され、最高評価として名誉ある「Aリスト」には、全世界で200社、うち日本企業は55社が選定されました。

【画像】2021年度気候変動Aリスト企業

CDP2021 サプライヤー・エンゲージメント・リーダーに選定

ヤマハグループは、CDPが行っている「サプライヤー・エンゲージメント評価」において、最高評価の「リーダー」に2年連続で選定されました。

2017年に開始されたこの評価は、企業のサプライチェーン全体における気候変動・GHG排出量削減の取り組みに関してCDPが実施するものです。約23,000社の国内外の企業を対象として調査・評価を行い、全世界で518社(うち国内105社)が、「サプライヤー・エンゲージメント・リーダー」に選定されました。当社グループは、原材料調達から生産・流通・使用・廃棄・リサイクルに至る製品・サービスのライフサイクル全体を通じてGHG排出量の削減に努めており、今回その取り組みが高く評価された結果となりました。

【画像】CDP2021 サプライヤー・エンゲージメント・リーダー