気候変動への対応
気候変動への対応について
人間社会および地球のあらゆる生物の脅威となる急速な気候変動を緩和し、脱炭素社会への移行に貢献することは、企業の責務であり重要な経営課題です。
ヤマハグループは、代表執行役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」の下部組織として執行役を部会長とする「気候変動部会」を設置し、国際的な協調により推進される温室効果ガス排出削減に取り組むとともに、気候変動がもたらすあらゆる影響に備えるため、リスクの特定と軽減策の策定を行い、事業戦略への組み込みを進めています。2025年11月には、SBTi※1よりヤマハグループの温室効果ガス排出削減目標について、科学的根拠に基づくネットゼロ目標の認定を取得しました。これは、2019年および2021年のSBTiによる短期目標の認定に続くもので、現行の1.5℃目標に整合した基準に基づき見直した短期目標と、2051年3月期のネットゼロ達成に向けた長期目標が、SBTiにより検証・承認されたものです。2019年6月には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)※2提言への賛同を表明し、気候変動の財務的影響についての分析や情報開示の取り組みを進める一方で、ネットゼロ実現に向け、省エネ製品など気候変動を緩和し、脱炭素社会づくりを促進する製品・サービスやビジネスモデルの創出を目指していきます。
- 1 SBTはScience Based Targetsの略。パリ協定目標達成に向け、科学的根拠に基づいた温室効果ガスの排出量削減目標設定を促し、その目標の評価や承認を行うイニシアチブ
- 2 金融安定理事会(FSB)によって設立されたTask Force on Climate-related Financial Disclosuresの略称。気候変動がもたらす財務的影響を開示することで投資家に適切な投資判断を促すことを目的とした提言を公表
気候変動対策に取り組む団体への加盟
ヤマハグループは気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative:JCI)やGXリーグに参画しており、当社の脱炭素社会の実現に向けた取り組みは、ヤマハ(株)の所属団体である経団連のカーボンニュートラル行動計画と一致しています。2025年にはJCI企業として、1.5℃目標の達成に向け気候危機の克服に挑戦し続けるというJCIメッセージに賛同し、エネルギー効率化と再生可能エネルギー拡大加速を宣言しました。
温室効果ガス排出削減の取り組み
ヤマハ(株)および国内生産系拠点では長年に渡りエネルギー使用量を原単位で毎年1%ずつ削減することを目標に、製造工程や事業所での省エネを中心とした取り組みを継続しています。2022年よりインターナルカーボンプライシング(社内炭素価格)制度を導入したほか、再生可能エネルギー導入も進め、2021年4月より本社事業所の購入電力を100%再生可能エネルギー電力に切り替えました。さらに2025年4月からは天竜工場でも購入電力を100%再生可能エネルギー電力へと切り替え、その他の拠点においても順次切り替えを推進しています。海外生産拠点では拠点ごとに削減の数値目標を設定し、それぞれ目標達成に向けて積極的に取り組んでいます。
削減の取り組みを進めるにあたり、温室効果ガスの排出量はGHGプロトコル※3に基づいて管理しています。また、2017年3月期よりスコープ1、2およびスコープ3の一部の第三者検証を実施しています。
- 3 温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)排出量の算定と報告の基準
温室効果ガス削減目標および主な施策・実績
削減目標(SBTi認定)
| ネットゼロ目標 | 2051年3月期までにバリューチェーン全体でネットゼロ達成 ※長期目標に沿って削減し、残余排出量は炭素除去により中和 |
|---|---|
| 短期目標 | スコープ1+2 2031年3月期までに2018年3月期比で55.0%削減 スコープ3 2031年3月期までに2018年3月期比で32.5%削減 |
| 長期目標 | スコープ1+2 2051年3月期までに2018年3月期比で90.0%削減 スコープ3 2051年3月期までに2018年3月期比で90.0%削減 |
主な施策
- 電力監視システムの導入と活用による省エネ推進
- 生産方法や設備配置の最適化、エネルギー効率の高い設備やLED照明の導入、設備稼働時間や空調温度などエネルギー管理の徹底などによる省エネ推進
- コージェネレーションシステムや太陽光発電設備の導入
- 温室効果ガス排出の少ない燃料への転換
- 購入電力の再生可能エネルギーへの切り替え
- インターナルカーボンプライシング制度導入
- 物流における輸送効率向上やCO2低排出輸送モード(船、鉄道)への切り替え
- 製品の省エネ化(スコープ3のうち排出量の大きなカテゴリー(製品使用)の削減)
再生可能エネルギーへの切り替え
ヤマハでは、2020年3月期から再生可能エネルギーの導入を開始し、2021年4月から本社事業所の購入電力を100%再生可能エネルギー電力に切り替えることで(年間使用電力:約12,000MWh)、年間約5,000トンのCO2排出削減を実現しています。
また、同年9月からは静岡県内の水力発電由来の電力である「静岡Greenでんき」に切り替え、購入する電力の全てを静岡県内の水力発電所などで発電された環境負荷の低い静岡県産のCO2フリー電力としました。2026年3月期時点で本社工場に加え、天竜工場、掛川工場、豊岡工場でも導入しており、今後も積極的に拡大していきます。
掛川工場で1.4MW太陽光発電設備を稼働
掛川工場では、工場の屋根および駐車場に1.4MWの大規模な太陽光発電設備を導入し、2024年11月より稼働を開始しています。
年間の発電量は約1,800MWhで、これは同工場で使用する電力の約1割に相当します。また、これにより年間約700tのCO2排出削減効果があります。
掛川工場に設置した太陽光発電設備
インターナルカーボンプライシング(ICP)制度
ヤマハグループでは、気候変動リスクに対処するため再生可能エネルギー関連投資や高エネルギー効率機器の選択が必要と考え、2022年4月よりインターナルカーボンプライシング(社内炭素価格)制度を導入しています。この制度は、CO2排出量に仮想的な価格を設定して金額換算し、この金額も加味して投資判断を行うもので、これにより、よりエネルギー効率のよい設備を選びやすくなるほか、太陽光発電など再エネ発電設備の投資が促進されることなどが期待されます。単価は14,000円/t CO2で設定しています。
2026年3月期の実績
スコープ1、2(ヤマハ(株)および全生産拠点)※4 ※5 ※6
- 4 データの集計範囲はヤマハ(株)および全世界の主要生産工場、リゾート施設です(ヤマハグループ全拠点の95%以上と推測されます)
- 5 地域・電気事業者別排出係数を拠点別、年度別に細分化して計算し直したため、前回と数値が変わっています
- 6 購入電力・蒸気による間接的な排出、自家発電および熱利用のための直接的な二酸化炭素排出量と製造工程で使用され排出されるGHG量を合算しています
スコープ3(2026年3月期)
生産工場での取り組み
- 電力監視システムの導入と活用による電力の見える化と省エネ活動
- コンプレッサーのインバーター化・圧力の適正化、ブースの間仕切り、電力モニターの設置、設備の集約や合理的配置による省スペース化
- 工場の屋根への散水および遮熱塗料を塗布し空調効率を改善
- 不要照明の撤去・適正配置、点灯時間の削減、蛍光灯のLED化
- コージェネレーションシステムの稼働により、CO2排出量削減
- 集塵機の適正な運転管理
掛川工場のコージェネレーション設備
リゾート施設での取り組み
- 照明のLED化やトイレへの人感センサー設置による節電
- カートを給油式から充電式へ変更することでCO2排出削減
- グリーンファン(芝生維持)や施設空調の調整による節電
- 暖房に温水を利用した大型空調機を空冷式(省エネタイプ)に更新し、ボイラー燃料(重油)の削減、運転時間の短縮
- 再生可能エネルギーによるEV車充電スタンド導入
再生可能エネルギーによるEV車充電スタンド
充電式ゴルフカート
オフィスでの取り組み
- LED照明の導入、人感センサーの設置、電気使用量実績の通知による従業員への意識付けなど、節電のための各種施策
- 適切な空調管理、国内では環境省の取り組み「クールビズ/ウォームビズ運動」の実施
物流での取り組み
- 輸送効率向上、リードタイム短縮
- トラックやコンテナの充填率向上、倉庫配置・輸送ルート見直しによる輸送距離の短縮、CO2低排出輸送モード(船、鉄道)への切り替え検討
- 輸送梱包仕様の見直し、他社との共同輸送、廃製品の現地処分化
ピアノフレーム輸送での省資源・CO2排出量削減
日本から海外工場へピアノフレームを輸送する際、従来の使い捨て鉄製梱包ラックから複数回利用できるリターナブルのピアノフレーム用梱包ラックに変更することで、省資源化を図っています。また、輸送距離の短縮や積載効率の向上などにより、鉄製ラックの廃棄に伴うCO2排出量を年間100t、鉄資源消費を年間1,600t削減しました。
リターナブル物流のフロー図(2026年3月末現在)
グランドピアノフレーム用リターナブルラック
折りたたみ状態のラック(返送時)
輸送梱包材標準化による省資源・CO2排出量削減
ヤマハグループでは、輸送時のコンテナサイズに合わせ、梱包サイズを小型化することで、コンテナ1本に積み込める製品数を増やして輸送効率を向上させています。例えば電子ピアノPシリーズにおいて梱包サイズを17%小型化し、コンテナ積載率を12.5%向上させました。これにより、40フィートハイキューブコンテナ換算で、年間269本を削減し、CO2排出量を年間26t削減しました。
標準化前の梱包箱のコンテナ(左)と積載状況標準梱包箱のコンテナ積載状況(右)
インドネシア植林活動によるCO2吸収
2005年から2016年にインドネシアにおいて実施した「ヤマハの森」植林活動について、衛星写真による森林の育成状況の確認と森林が吸収したCO2量の推計を実施した結果、2017年までに合計で約42,000tのCO2が吸収されたと見込まれました。その後も年間6,000t超のCO2が吸収され続けていると予想されます。
TCFD、TNFDへの対応
ヤマハグループは、2019年6月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明し、気候変動の財務的影響についての分析や情報開示を進めてきました。2024年1月には、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のフレームワークに沿った早期開示の意思を示す「TNFD Early Adopter」に登録し、自然資本と企業の間に存在する依存と影響の評価を行いました。同年6月には、TCFD提言とTNFD提言を統合した情報開示を開始し、気候変動と生物多様性の両面からリスクと機会を分析・報告しています。
今後も当社グループは、TCFDおよびTNFDの提言に基づき、気候変動や生物多様性に関わるリスクや機会を経営戦略に反映するとともに、それらの財務的影響についての情報開示に努めていきます。
社外からの評価実績
CDP「気候変動」および「水セキュリティ」両分野で最高評価の「Aリスト」企業に選定
ヤマハ(株)は、国際的な環境非営利団体CDPより、気候変動および水資源保全に関する積極的な取り組みと透明性が評価され、2025年度の「気候変動」および「水セキュリティ」の両分野において、最高評価である「Aリスト」企業に選定されました。当社のAリスト選定は「気候変動」分野では3年連続4回目、「水セキュリティ」分野では初めてとなります。今後も、気候変動対応と自然資本保全の両面で持続可能な社会の実現に貢献することを目指し、長期的な視点で気候変動や自然関連課題への対応を進めていきます。