Yamaha Design “Synapses” solo/classic

2019 / INTERIOR

GOOD DESIGN AWARD
Red Dot Award


ギターと共に暮らすための家具。

カンケツ簡潔 / Minimal

普段はギタースタンド。そしてギターを手に取ると、座って演奏ができるハイスツール。ギターが主役となるように、必要最小限の要素でまとめました。持ち運ぶ際に手当たりの良い球面形状の座面裏や、演奏姿勢を安定させやすい高い位置の足置きなど、使われるシチュエーションを考えて作り上げています。

チョウワ調和 / Harmony

ギターを立てるときと演奏するときとで正面が変わる、二面性のあるデザイン。3通りの仕上げは愛用しているギターや部屋の印象に合わせてセレクトすることができ、脚部の付け根に補強のために施された大きめのR形状が程よい存在感を感じさせてくれます。

イトオシイ愛おしい / Beloved

リビングの中にある“ペットの寝床”をイメージして作ったベンチ。ネックの周囲に適度な間をとったり、内側に柔らかいレザーのクッションをしつらえたりするなど、ギターが居心地良さそうなデザインを心がけました。

シアゲ仕上げ / Well-Made

円弧と直線が織り成す独自の形状は、薄い木板を何層にも重ね、時間をかけて湾曲させながら形成。やわらかい曲げは、木材が持つ心地よい質感を損なわずに造りの良さを感じさせるだけでなく、そのまま座って演奏にも使える強度も持ち合わせています。


Toshihide Suzuki
Toshihide Suzuki
Designer
Yamaha Design Laboratory

Akie Hinokio
Akie Hinokio
Designer
Yamaha Design Laboratory

楽器の居場所をつくる。

「solo」と「classic」は、2010年に「Please Please Me」というヤマハデザインの展示会で発表したコンセプトモデルを製品化した、“ギタリストのための家具”です。
楽器はケースの中にしまわれていることが多いのですが、そういった楽器のために持ち主の生活空間の中に居場所をつくることを目指してプロジェクトが立ち上がりました。そして、そこで発表されたコンセプトモデルの中から、2つの作品が10年の時を経て製品化されることになりました。そういった流れで製品になるのは非常に珍しいケースです。

「solo」は、普段はギターを立て掛け、演奏する時には座って使えるハイスツールです。ギターを置いている時と演奏している時では正面が変わりますが、ピック形状の上面になだらかな窪みを設けた座面によって、座る位置が自然とわかるようにしています。
ギターの存在感を際立たせながら家具としても美しい造形を目指して、細身かつ高さのある三脚のスツールとしました。重心を下げて安定を図るため、脚の角度を調整したり、ギターと接する部分にはボディを傷付けないよう革の巻き方を工夫するなど、いくつも試行錯誤を繰り返しました。そもそも家具のデザインは初めてでしたので、自ら端材などを購入し、削ったり組み立てて実際に座ってみたりと、まったくの手探り状態からのスタートでした。そういった普段とは異なる領域まで踏み込めたのは楽しい経験でした。触り心地の良さやディティールの統一感を追い込んでいく作業などは日頃の仕事が直接的に活きていると思います。
(鈴木)

「classic」は、楽器と持ち主がなるべく近い場所で生活を共にできるように、ギターをペットに見立て、生活空間の中にペットの寝床をつくるようなイメージでデザインしたベンチです。ギターのシルエットをオフセットした形状が最大の特徴ですが、内部のギターがとにかく居心地良さそうに見えるように留意しました。単純にギターケースの形状をそのまま当てはめるとネック部分が窮屈に見えてしまうので、ゆとりを感じさせながらも安定して置ける形状を模索しました。
私自身、学生の頃にクラシックギターサークルに所属していたのですが、大人になって弾く機会がほとんどなく、ハードケースごと暗い押し入れにしまったままになっていました。たまに外に出すときはギターに対して「いつもごめんね…」と、罪悪感にも似た気持ちを抱くことがあり、部屋の中で一緒に過ごせるようになればという思いから今回のデザインが生まれました。
ペットがいつもすぐ側で寝ていて、かまってほしくてチラチラと飼い主を見ているような気配を感じられるデザインとなっています。ギターと縁遠くなってしまっている方がいたら「classic」を通じて愛用のギターを可愛がってあげてほしいなと思います。
(檜尾)

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