Yamaha Design “Synapses”
PSR-E360
2019 / PORTABLE KEYBOARD
モツヨロコビ持つ喜び / Pride
これまでのヤマハのポータブルキーボードにはない、ナチュラルな雰囲気のインテリアにもマッチする木目の一枚板をイメージした大胆なパネル面。メイプルとダークウォルナットの2色から、それぞれの生活空間に合わせて選ぶことができます。
シアゲ仕上げ / Well-Made
リアリティのある木の表情や、ギターのサンバースト塗装のようなグラデーションまでグラビア印刷で細やかに表現。また、その印刷手法をとる上で必要な段差を利用し、スピーカーグリルには敢えて大きな溝をつけて木の厚みを想起させます。
チョウワ調和 / Harmony
カジュアルに楽しみたい生活シーンに合わせて、フォントやフォントカラーも見直しました。各機能のカテゴリーも整理し、操作に慣れていない方でも身構えることなく向き合えるインターフェイスとなっています。
イツマデモ何時までも / Timeless
演奏しない時でもそのまま傍らにいて安心する、素朴で温かみのあるデザイン。日々の生活を彩るパートナーとして、永く親しみを持って付き合っていける存在です。
- Sena Ohtsuka
- Designer
- Yamaha Design Laboratory
- Masaharu Ono
- Designer
- Yamaha Design Laboratory
緻密な表現にこだわり抜く。
『PSR-E360』は、多彩で美しい音色や豊富なレッスン機能など、どなたでも演奏を楽しむことができる機能が備わったポータブルキーボードで、これから鍵盤を始めようとする方や、親子で一緒に演奏を楽しみたいといった方にも手にとっていただけることを目指して開発されています。そのため、従来よりも多様な生活環境を想定し、実際にイラストやCGを用いてシミュレーションを行った結果、家具などとも自然と馴染む木目のデザインが採用されました。
木のリアルな表情や綺麗なグラデーションを表現するために、微細な濃淡の表現にも優れた「グラビア印刷」を採用したのですが、当初は印刷会社から「このグラデーションをなめらかに表現するのは難しい」とハッキリと言われてしまいました。しかし、どうしても諦めることができなかったため、社内の技術者に印刷の数値と実際の色の濃度の解析や、顕微鏡による版の仕組みの研究をしてもらい、その上で様々な版のパターンや特色の組み合わせを試すなど、試行錯誤を重ねた末に、ようやく今回のグラデーションを実現することができました。
これまでヤマハ製品ではHelveticaをベースとした独自のフォントを共通して使うようにしていましたが、今回は生活に馴染む本体に合わせられるFuturaを新規に採用し、2種それぞれの木目とマッチする色になるようフォントカラーの微妙な調整にもこだわりました。既存の印刷手法やフォントを変更するにあたって苦労は多かったのですが、結果としてこれまでになかった商品性や価値軸をもったキーボードが生まれたと思います。
製品が完成して終わりではなく、これまで楽器に関心のなかった方の目にも届くように、製品の価値の伝え方にも徹底的にこだわりました。インスタグラマーのカメラマンやグラフィックデザイナーと一緒に作り上げたキービジュアル、カリグラファーが手描き風に表現したタグラインなどと合わせて、製品の世界観を作り込んでいきました。また、展示ショーでのブースデザインにも工夫を凝らし、住空間に置いた状況をイメージさせる展示方法を提案しています。パッケージはポスターのようなグラフィカルで買った後も捨てずにとっておきたくなるようなデザインにしました。カフェやインテリアショップめぐりの趣味が、この世界観を生み出すのに役に立ったかなと思います。
家具のように長いスパンで付き合ってもらえるキーボードを目指して、さりげなく飽きのこない造形としました。木目を主体にしたデザインなので、ナチュラルな雰囲気の机や床に置いても馴染むと思いますし、部屋に置いて好きなときに弾き、長く一緒に暮らしてもらえたら嬉しいです。