顧客感性の可視化技術

多様な感性・価値観の可視化技術

世の中の多様性がますます進んでいくなか、私たちは人の感性や価値観の違いに目を向け、その多様性に寄り添うことが重要だと考えています。多様性があることはわかっていても、その差異や背景までは具体的にわかっていないことがほとんどだと思います。私たちはこれまで蓄積してきた感性計測技術を活かし、人の感性や価値観の多様性について、科学的により深く理解する方法や、それを製品やサービスづくりに活用するための技術を研究しています。この研究を通して、物の機能や性能だけでなく、人と向き合う姿勢や考え方を追求しながら一人ひとりの感じ方に寄り添うことで、「人の心に響く価値」を創り出し、人々の生活をより豊かにすることを目指しています。

感性可視化技術の仕組み

ヤマハでは、さまざまな製品やサービス、周辺技術などに対し、人がどのような印象を持つか、どのように心が動くかについての本質的な情報を、できるだけ高い解像度と再現性で取り出す技術を構築しています。心理学的手法に基づいてデータ取得、量的・質的分析を行い、感性モデル(人に対する刺激を入力、反応を出力としたシステムを想定して見える化したもの)などの形で可視化します。こうして得られたモデルや知見を読み解き、エンジニアや企画担当者などの作り手側の感性とも重ね合わせることで、新たなアイディアや価値の提案につなげています。

具体的な取り組み

楽器演奏者の「動因」を捉える

楽器を演奏するモチベーションや、その人にとっての楽器の位置づけは非常に多様です。しかし、その価値観の種類や関係性を示す客観的な指標は、これまで存在しませんでした。そこで私たちは、なぜ人は演奏するのかという根源的な「動因 *」に注目し、心理学的手法と統計を用いてモデル化することを試みています。

*「動因」とは:
心理学において「モチベーション(動機付け)」は、人間が行動を起こすきっかけになるものを指します。このモチベーションには2つの側面があるとされており、1つは内側から湧き上がるやる気や欲求を指す「動因」、もう1つは外から与えられる目標や魅力的な刺激を指す「誘因」です。この2つが組み合わさることで、行動につながると考えられています。楽器の習得には一定の鍛錬が必要で、それを乗り越えるには「動因」がとても重要だと考えられています。

このモデル(Emotion Drivers)は、2つの軸と8つのセグメントで動因の多様さを示したもので、製品の企画や開発など、さまざまな場面で活用されています。さらに、楽器を演奏する社員が多い会社だからこそ、「自分とは違う演奏経験や価値観をもつ人」への理解を深めるためのツールとしても役立つと考えています。

場や空間への期待を可視化し、顧客と従業員の想いをつなげる

ブランドショップなどお客様との接点で流れる音楽は、ブランド体験の象徴的な要素の1つと言えます。

私たちは楽器をはじめ、多くの製品やサービスを開発し、世の中に提供していることから、お客様が抱くヤマハへの期待やイメージはさまざまです。お客様のそれぞれの想いを大切にしたい—そこで私たちは、この「多様さ」を取り込んだ独自のクリエイティブプロセスの探索に取り組んでいます。

この取り組みでは、心理学的手法を用いて集めたお客様のさまざまな期待と、私たちが考えるブランドショップのあり方を結びつけ、構造化しました。さらに、これらを音楽で表現し、実際に聴いていただくことを目指すために、作曲家の方や東京藝術大学様と議論を重ね、協業にて楽曲を制作してきました。この制作過程も、私たち独自のプロセスの一つだと考えています。

このようにして生み出された音楽が、ただ聴いて楽しむだけでなく、お客様にとって忘れられない体験につながることを期待しています。

ギター演奏に関するインタビュー
ブランドショップで流れる音楽のインタビュー

今後の展望

技術やトレンドが急速に変わりゆく中でも、私たちは今一度お客様や自分たちの感性・価値観を見つめ直し、人を中心とした探究を続けています。研究成果を「体験できる形」に落とし込んでお客様に届けたり、ヤマハとしての新領域の探索にも積極的に活用していきます。文化や社会など、人をとりまくさまざまな視点を取り込み、研究を発展させながら、新たな価値を提供していきたいと考えています。

関連項目

関連技術