伸縮センサー技術

GummiStra®

伸縮センサーとは

ヤマハでは、楽器演奏をはじめとした人の動作を深く理解するために、人間の指や腕などの体の動きを精密に測定するセンサーGummiStraを開発しています。このセンサーは非常に薄く柔らかで、ゴムのように伸びたり縮んだりします。その伸び縮みに伴って電気的な特性が変化するため、動きを検出するセンサーとして取り扱うことができます。体のある部分に装着すると、そこの動きに合わせてセンサーが収縮することで、細かな動きからダイナミックな動きまで、直接測定することが可能です。

我々はこのセンサーによって、例えばピアノ演奏時の指の動きや管楽器演奏時の呼吸の様子など、これまでのセンサーやモーションキャプチャーでは直接捉えることが難しかった動きを、精度よく測定できると考えています。楽器演奏のほか、スポーツや医療分野など、身体的な技能習得やトレーニングが必要な分野で活用することで、多くの人が効率的にスキルを向上させられるようにすることを目指しています。

伸び縮みするゴムのようなセンサーGummiStra
指の動きが測定できるグローブタイプ

動きを計測できるセンサー

GummiStraは、静岡大学と共同開発したカーボンナノチューブ(Carbon Nanotube: CNT)と特殊な弾性樹脂を複合化したものです。
CNTは直径数ナノメートルから数十ナノメートルの筒状の物質であり、非常に高い導電性と強度をもつ新しい素材です。このCNTを独自の技術で糸を紡いでいくように一方向に整列させていき、柔らかく伸縮性のある独自の弾性樹脂を複合して、CNTシートを作成します。さらに、異なる特性をもつアシスト弾性樹脂と積層し、テープ形状に切り出したものが、GummiStraとなります。

GummiStraが伸縮すると、CNTシート部の密度が変化することで電気的な抵抗が変化します。CNTシート部には複数のギャップ(隙間)が存在し、GummiStraを伸ばすと、このギャップが大きくなってCNTシート部分が粗密の”粗”となり、電気抵抗が大きくなります。GummiStraが元に戻ると、ギャップが小さくなって粗密の”密”となり、電気抵抗が小さくなります。この抵抗の変化をモニタリングすることで、動きを計測するセンサーとして取り扱うことができます。

センサーの特徴

  • 約200μm(人間の髪2本分程度)と、非常に薄いです。
  • 柔らかく、皮膚に親和性がある素材で、装着性に優れています。人の肌と同等の柔らかさのため、皮膚に直接貼っても違和感が生じません。
  • センサーの長さが2倍になるまで、動きを計測することができます。
  • 小さな変化から大きな変化まで、遅い動きから速い動きまで、連続的に計測できます。
  • 耐水性があるため、汗をかいたり雨に濡れたりなど、水に濡れるシーンでも使用可能です。

楽器演奏のモニタリング

このセンサーを、例えば手指に装着すると、ピアノ演奏時の動きを計測できたり、胸や背中に装着すると、管楽器吹奏時の動きを計測することができます。また、様々な箇所に同時に装着することで、複合的に計測することも可能です。これまでのセンサーやモーションキャプチャーでは計測困難だったような楽器演奏時の挙動を、精度よくデータ化することを目指しています。

このようなデータをさまざまな演奏レベルの人から収集して解析することで、初心者にとって何がハードルになるか、どう練習すれば効率的に上達するかを解明できると考えています。このセンサーによって、誰もが肉体的・精神的な負荷を感じることなく、楽しく楽器演奏に取り組められるようにするのが、私たちの第一の目標です。

また、医療や福祉領域でも活用することで、医療従事者によるモニタリングの負担を減らしたり、楽器演奏と同様に、身体運動のデータ化・解析によって、患者が無理なくリハビリや運動に取り組めるようにサポートできると考えています。

ピアノ演奏の指の動きを測定
演奏時の肺の動きを測定

さらなる実用性を目指して

我々はこのセンサーの様々な可能性を探求すべく、周辺技術も同時に開発しています。例えば、長さを3倍にしても切れない伸縮配線を開発することにより、センサーとテキスタイルの一体化を可能としています。例えばこれをグローブ状にすることで、手指のあらゆる部分の動きが計測可能となり、微細な動きや複雑な動きも可視化することができます。

このユニークなセンサーとその周辺技術について、楽器演奏などにおけるさまざまな可能性を検討しながら、さらなる開発に取り組んでいきます。

楽しく演奏上達できるツールとして
医療や福祉領域での活用に向けて

関連項目