研究者紹介:松田 遼

所属 研究開発統括部 基盤研究開部 感性情報グループ
業務内容 空間音響や信号処理に関する研究開発
学生時代の専攻 建築学(研究室:建築音響・空間音響)
入社年度 2019年度

研究内容

私は空間音響分野の研究開発に取り組んでいます。

近年、さまざまなデバイスの進化により、3Dオーディオや空間音響といった技術がより身近なものになってきました。たとえば映画館の音響や、イヤホンで楽しめる立体音響コンテンツ、さらにはノイズキャンセリング技術もその一例です。こうした技術の魅力に学生時代から惹かれ、私は空間音響分野の研究開発に取り組むようになりました。

ヤマハというと楽器や音楽のイメージが強く、空間音響との関わりは意外に思われるかもしれません。しかし実際には、 AFC Sound xR といった3次元音響ソリューションをはじめ、 サウンドバーやAVレシーバー 、 遠隔会議システム など、空間音響技術を応用した製品が多数存在しています。製品開発以外の分野でも、空間音響技術は活用されています。たとえば、コンサートホールの設計では物理的特性や聴感の評価に役立っています。また楽器においても、音色に加えて、「音の放射(どのように空間に音が広がるか)」の重要性が注目されてきています。

チームメンバーとはフランクに議論できる環境です
実験・測定環境もたくさんあり、思い立ったらすぐに使えます
(例:無響室でマイクロホンアレイを測定評価)

空間情報も含めた音の計測・収録技術

このように多様な応用先があるため、研究開発の対象も多岐にわたります。私はその中でも、主に空間情報も含めた音(音場)の計測・収録技術に焦点を当てて研究を進めています。音場を計測するためには、一般にマイクロホンアレイを用います(マイクロホンアレイ例:ViReal Mic)。この仕組みを平易に表すと、様々な方向に配置したたくさんのマイクで収録することで、どういう方向からどんな大きさの音波が来ているかわかるというものです。
私は音場をより精度高く推定するためのマイクロホンアレイの改善や空間音響処理アルゴリズムの開発に取り組んでいます。このように計測・収録技術が向上することで、音場の詳細な解析や、より忠実な音場再現・可聴化などが可能となり、それを基盤技術としている製品開発や音響空間の設計においても高い付加価値を提供できるようになります。さらには、楽器音の放射に関しても、同様の関心を持って取り組んでいます。特に楽器音の空間的な広がりをより簡便に計測・評価する技術の開発を進めており、将来的に新しい楽器の価値を見出せるようになることを信じております。

また、空間音響にとどまらず、他の音響技術領域の研究にも取り組んでいます。例えば、何か楽器音が入ってきた時にどの楽器に該当するのかを判別する「楽器音識別」の軽量化にも取り組んでいました。最近では自然言語を入力として扱う生成モデル開発にも取り組んでいます。

アカデミアとの関わり

研究開発基盤を強化するため、国内外の大学との共同研究にも積極的に取り組んでいます。例えば、先に挙げた「楽器音識別の軽量化」は東京都立大学との共同研究成果になります。共同研究で得られた成果は、論文や国際会議などを通じて発信することで、学術分野への貢献にもつながっています。(学会発表一覧

また、毎年グローバルインターンシップも実施しており、主に博士課程の学生を3ヶ月ほど受け入れております。昨年は私も主担当として、初めて学生を受け入れました。(Global Internship)学生にとっても貴重な期間となるため、受け入れ側としても大きな責任を感じながら取り組みました。テーマ立案から研究サポートまで上位者やメンバーと協力しながら進めて、最終報告会が無事に終わった時にすごくホッとしたことを覚えております。インターン生の尽力もあり、楽器の放射指向性を解析・評価するための新たな指標を考案することができ、今後は社内の様々な楽器の評価に応用していく予定です。

インターン生との議論@社内技術交流会
インターン生とは日本食やお酒を通じて交流を深めました!

プライベート

平日は仕事を早めに切り上げて、友人と食事に出かけることもあります。こうした柔軟な働き方ができるのは、この会社の自由な社風のおかげだと感じています。週末は家族や友人と過ごしながら、趣味を楽しむ時間を大切にしています。浜松で暮らし始めて7年目になりますが、自然が身近なこの土地ならではの楽しみとして、学生時代には縁のなかったキャンプやゴルフといった新しい趣味も加わりました。思い立ったその日に、近場へふらっとキャンプに出かけることもあります。

また、アートやインテリアを少しずつ集めるのも楽しみのひとつです。実家のある京都や、仕事で頻繁に訪れる東京のどちらへも新幹線で1時間強でアクセスできる点も、浜松での暮らしの大きな魅力です。

会社の友人と浜名湖周辺のキャンプ場にて
富士山の麓まで出かけて、キャンプをすることもあります
コースデビューした時の写真
好きなインテリアやアートを収集しています

学生の皆さんへ

就職活動お疲れさまです。基礎研究に進むべきか、製品に近い技術開発を目指すべきか、迷っている方も多いのではないでしょうか。私自身も、当時は同じように悩みました。振り返れば、自分の専門に閉じこもらず、ヤマハで多様な事業に触れられたことは大きな財産だったと感じています。ちなみに、会社でも基礎に近い研究(大学でいう工学部の研究)はできますので、その点はご安心ください。また最近は私含めて多くの方が社会人博士課程にも進学されています。何かご相談したいことがありましたら、ぜひご連絡ください。