横浜市の学童保育施設で音楽プログラムを実施
学童保育施設での豊かな音楽体験提供を目指して
近年、日本では共働き世帯の増加に伴い、放課後の時間を学童保育施設で過ごす子どもが増えています。学童保育施設は、子どもたちが安心して過ごす場であると同時に、多様な体験を通じて興味や関心を広げる場としても期待されています。一方で、施設の運営現場では、予算や人員などの制約がある中で、継続的に実施しやすいプログラムを整えることが課題となっています。
ヤマハ株式会社の研究開発拠点であるMINA Lab*1では、こうした現場に向けて、音楽演奏を楽しめる機会を広げることを目的とし、学童保育施設のスタッフが無理なく運営でき、子どもたちが音楽経験の有無にかかわらず楽しめる音楽プログラムの確立を目指しています。
*1:MINA Lab(Music Informatics and New Applications Laboratory)
音楽演奏・創作分野の研究をより加速するために、2024年11月に横浜シンフォステージ内に設立した拠点です。楽器・音楽に関する技術のスペシャリスト集団が、日々革新に満ちた研究活動を推進しています。地理的な利点を生かし、最新情報の収集や大学・他企業との協業を通じて、音楽の未来に向けた新しい可能性も探求しています。
開発した音楽プログラム
2025年に、MINA Labは一般財団法人ヤマハ音楽振興会と共同で、学童保育施設向けの音楽プログラムを開発しました。ヤマハミュージックスクールなどで培われてきた教育的知見を活用し、MINA Labが開発したアプリ「だれでもピアノβ」*2と、ヤマハのポータブルキーボード「EZ-310」とを組み合わせることで、学童保育の現場で子どもたちが気軽に鍵盤演奏に親しめる内容を目指しました。
*2:「だれでもピアノβ」
MINA Labでは「音楽経験の有無に関わらず、だれでも演奏を楽しめること」を目指し、「だれでもピアノ」を開発しています。指一本でメロディーを弾くだけで、豊かな伴奏とともに鍵盤演奏を楽しむことができます。iPhoneアプリ「だれでもピアノβ」として無償公開しており、ヤマハミュージック 横浜みなとみらいのほか、さまざまな音楽イベント、病院でのレクリエーションなどで活用されています。
横浜市内の学童保育施設で実施
2025年夏、横浜市中区および学童運営事業者様のご協力により、横浜市中区の学童保育施設で音楽プログラムを実施しました。当日は、子どもたちがキーボードとアプリを使いながら、メロディー演奏や伴奏付きの演奏体験に取り組みました。初めて鍵盤に触れる子どもでも参加しやすいよう、光る鍵盤や画面上のガイドを活用しました。子どもたちの感想文を分析した結果、少し難しい曲を最後まで弾き切ることによる自己効力感、課題曲を弾き切る達成感、回を重ねるごとに楽器が弾けるようになる手応え、音域や調の違いへの気づき、友だち同士で弾く音を教え合う姿勢などが見られました。これらの結果から、演奏体験は単に楽器に触れる機会にとどまらず、子どもたちが挑戦する気持ちや達成感を得ること、また友だち同士の関わりを深めることにもつながる可能性が示されました。
2026年8月も、同様のプログラムを横浜市中区の学童保育施設「アメリカ山ガーデンアカデミー」と「本牧小学校放課後キッズクラブ」にて実施しました。2025年と2026年の実施で得られた知見をもとに、より多くの学童保育施設で導入いただくことを目指し、継続的に実施しやすいプログラム内容の検討を進めます。あわせて、子どもから大人まで、より多くの人が手軽に演奏体験を楽しめる技術の研究開発につなげていきます。
関連する研究発表
2025年の実施に関する論文
Scaffolding Piano: An Adaptive Accompaniment System for Informal Learning
Satoshi Obata, Hidenori Nakamura, Junichi Ogawa, Manami Mori, Akira Maezawa,
14th International Conference on Information and Education Technology (ICIET), pp. 732-736, 2026.
https://doi.org/10.1109/ICIET69664.2026.11561585