日本音楽歯科研究会 第1回集会を横浜シンフォステージで開催

研究会設立の背景と目的

歯科医療の専門家と音楽の専門家が、演奏家の口腔内の課題解決について分野を越えて共に意見交換を行う「日本音楽歯科研究会」の第1回集会が、3月22日に横浜シンフォステージ内のヤマハ横浜オフィスにて開催されました。

本研究会は、東京科学大学とヤマハ株式会社の包括連携協定に基づく共同研究を起点として立ち上がったもので、東京科学大学音楽歯科研究グループ主催、当社協賛のもと実施されました。管楽器演奏者や声楽家など吹奏・発声により音を奏でる演奏家にとって、口腔内の状態やアンブシュア*演奏を支える重要な要素です。本研究会は、演奏に伴う口腔や歯科の課題解決に向けて、歯科医師・音楽家・研究者が分野を越えて共有・議論することを目的としています。歯科医療と音楽の専門家が同じ場で課題を共有し、演奏家の口腔内の問題について分野を越えて議論する枠組みは、これまで例のない取り組みとなります。

*アンブシュア:管楽器や声楽の演奏において、唇や口周囲の筋肉、歯、顎などを含めた口腔周辺の使い方や状態のこと。音色や発音、演奏の安定性に大きく影響する要素である。

第1回集会概要と今後の展望

第1回となる今回は、ヤマハの首都圏拠点の一つである横浜シンフォステージを会場とし、歯科医師、演奏家を含む音楽家、研究者など70名を超える専門家の方々が、会場およびオンラインにて参加しました。

最初に6名の歯科医師による講演があり、その後参加者も含めた総合ディスカッションが行われ、歯科医師と演奏家が互いの専門性をすり合わせながら共通課題を探るという、これまでにない対話の場となりました。

親知らずの抜歯タイミングや奥歯の欠損が管楽器の演奏に与える影響、治療直後には問題がなくても演奏時にのみ生じる違和感など、演奏家の経験に根ざした事例が共有されたほか、診察や画像検査では異常が認められないにもかかわらず演奏パフォーマンスに支障をきたすケースも議論され、演奏家ならではの繊細な課題が明確になりました。こうした議論を通じて、歯科医療における「治療としての正しさ」と、演奏家が実際に感じるパフォーマンス上の感覚との間に存在する評価のギャップが浮き彫りになるとともに、演奏家の感覚をどのように医療や研究の言葉へと翻訳していくかが重要なテーマとして共有されました。同時に、歯科医療や研究の専門的な判断や考え方を、演奏家が理解・納得できる形でどのように伝え、寄り添っていくかという視点の重要性も確認されました。

今回の議論を通じて、演奏と歯科医療の関係性には、医学的評価だけでは捉えきれない側面や、演奏家ごとに異なる条件・背景が存在することが改めて認識されました。今後もこうした議論を積み重ねていくことで、演奏家と歯科医療者がより早い段階から相互に相談・理解できる関係づくりや、研究・臨床・教育への新たな課題提起、そしてその解決へつなげていくことが期待されます。


ヤマハはこれまでも、社外の研究者や医療分野とともに、演奏家の身体的負担や演奏に伴う課題について研究を進めてきました。今後も本研究会をはじめとする取り組みを通じて、演奏家が直面する社会的課題の解決に向けた研究開発活動を継続していきます。