Yamaha Tech Showcase 2025

ヤマハのコア技術と研究の最前線を公開

ヤマハは2025年8月27日から29日までの3日間にわたり、企業や学生向けの技術体験イベント「Yamaha Tech Showcase in Shibuya」を開催しました。本イベントでは、2024年11月に誕生した「Yamaha Sound Crossing Shibuya」の中でも、通常は非公開となっている研究開発サテライト施設「LOUNGE」を特別に開放。音楽・楽器・音響の未来を体感できる、ヤマハのコア技術を多数展示しました。この記事では、本イベントの意義や、イベント内で公開された最新の研究・技術についてご紹介します。

対話を通じて「これまでにない価値」を創り出す

ヤマハでは、未来に向けた技術やアイデアを探索するため、外部機関との共創による研究に力を入れています。「Yamaha Tech Showcase 」は、これまでヤマハが培ってきた技術や知見のほか、現在取り組んでいる共創事例を社外に向けて紹介し、さまざまな方々との対話を通じて、「これまでにない価値」の創出に繋げていくことを目的に開催しております。2回目となる今回も、多くの企業や学生の方々とコミュニケーションを取りながら、新たな気づきやコラボレーションの可能性を模索することができました。

来場者の方々からも、「人の感性における価値判断の軸を、さまざまなアプローチで明確にしようとする姿勢が印象に残った」「情緒価値を科学するという視点で親和性の高い要素が多く見受けられた」「次につながるコラボレーションの検討を進めていきたい」など、私たちの活動への具体的な評価や、新しい共創に向けて前向きなご意見をいただくことができました。

ヤマハでは、今後もこのようなオープンな場を通して自分たちの技術や取り組みを発信し、外部の方々と共創しながら新たな技術と価値を創出していきたいと考えています。

各展示については以下のページ内リンクをご参照ください。

・「声質」や「歌声」に着目したコンテンツ体験(調月音葉なりきり体験)

・専門的な技術を、より親しみやすい形に(一人一人の好みに寄り添う音の最適化技術、音の空間的な性質をとらえる技術)

・日々進化し続けるヤマハの楽器設計・開発

・AIなどを活用し、楽器演奏をもっと楽しく(サックス演奏アバター支援パッケージ、ギター弾き語り支援システム)

・コラボレーションから生まれた、ユニークな取り組み(湊くるみプロデュース体験、sound biptope、余暇図鑑、MINA Lab)

「声質」や「歌声」に着目したコンテンツ体験

人の声質をまったく別の人の声に変換する技術「TransVox」の展示では、来場者がマイクで口にした言葉が、ほぼリアルタイムでバーチャルアイドル・調月音葉の声に変換される、“なりきり体験”を提供しました。本技術は、VTuberなどのエンタメ領域での活用のみならず、声が出にくい方の支援ツールとしての利用も想定しています。

来場者の中にはこのような技術に触れたことがない方も多く、自分の声がその場ですぐに変換されることに驚かれたり、同行者が体験する姿を動画に撮影する様子も見られたりしました。

専門的な技術を、より親しみやすい形に

自分にとって「最適な音質」を生み出すのが、イコライザ(EQ)という装置・ソフトウェアです。通常、イコライザは音質調整に使われますが、操作が複雑で「難しそう」と思う人も多いでしょう。そこでヤマハでは、従来とは異なる直感的な操作で好みの音質を見つけ、それを基に、ユーザーに最適なイコライザ設定をシステム側が提案する技術を開発しました。

またヤマハは、音の収録技術の研究にも力を入れています。「ViReal Mic(バイリアルマイク)」は、球状のマイクによってさまざまな方向の音を収録できます。例えば屋外で雷鳴の音を収録した場合、方向による音の強弱まで録ることを可能にしています。同様に、音の広がりや方向ごとの強弱に着目したのが「RadCapScanner」という装置。楽器などの音について、空間内での音の放射の強弱を可視化できるものとなっています。

来場者には実際にViReal Micでの収録音も試聴していただき、リアルさに驚かれたと同時に、「○○を測定したい」「このアレイは欲しい」という声をいただくことができました。

TransVox
ViReal Mic

日々進化し続けるヤマハの楽器設計・開発

ヤマハが独自で取り組む楽器設計・開発技術も、日々進化を続けています。例えば、人が聞いた音の印象を数値化する取り組みや、ギターの設計や材料などを指定すると、バーチャル上でそのギターの音を確認できるシミュレーション技術など、実用化を目指して研究が進められています。また、サスティナビリティなどの観点から、楽器の材料についての研究も欠かせません。アコースティックギターなどに使われる「木材」を例に、木の種類によって生じる音の違いや、希少な木材の音を別の材料で再現する取り組みなども、研究を進めています。

来場された方々からは、「『個人の感性』という可視化も言語化も難しい価値判断の軸を科学的に捉えるアプローチが印象的。一方で、エンジニア自身が『師匠の背中をみて覚える』というという経験的な学びをしっかり体得している姿勢にも矜持を感じた」「持続可能なモノづくりに向けてさまざまな取り組みに積極的にトライしていることがわかった」などと、高い評価をいただくことができました。

AIなどを活用し、楽器演奏をもっと楽しく

ヤマハでは、楽器演奏を楽しむための技術にも力を入れています。例えば「サックス演奏アバター支援パッケージ」は、ソフトウェアと連携したヤマハのデジタルサックスを演奏すると、楽器に内蔵されたセンサーが動きを捉え、演奏者に連動してアバターが動く仕組みです。VTuberによるサックス演奏をはじめ、さまざまな活用法が考えられるでしょう。

また、「ギター弾き語り支援システム」は、コードを知らなくてもギターの弾き語りを楽しめる技術です。奏者の歌声を基に、AIが「今どの部分を歌っているか」を察知し、それに合わせて特殊な装置がコードを抑えてくれることで、ギターのコードを知らなくても、片手で弦を弾くだけで演奏が成り立ちます。本システムは、コードを抑える装置は熊本大学様が、AIが演奏箇所を察知して“追従”する技術はヤマハが担当。両者のコラボレーションによって実現することができました。

日々進化し続けるヤマハの楽器設計・開発
ギター弾き語り支援システム

コラボレーションから生まれた、ユニークな取り組み

技術のみならず、コラボレーションだからこそのユニークな取り組みも、数多く生まれています。

「横濱AIアイドル『湊くるみ』プロデュース体験」は、ご当地AIアイドル・湊くるみと彼女が歌う楽曲に対して、歌声のトーンを調整したり、曲調や演奏環境を変えたりと、自分好みにプロデュースできるコンテンツです。DATTARUJIN株式会社様による音楽を通した探求学習システム「Harmony Sensor」と、ヤマハの歌声合成技術を組み合わせることにより、新しい音楽体験を生み出すことができました。来場者の方々からは、「自社のコンテンツと掛け合わせて何か面白いことができそう」「この取り組みをベースに新たなビジネスモデルも考えられるのでは」など、次につながる具体的なご提案をいただくことができました。

「音」によって創造性を高める共創型プロジェクト「sound biotope」は、クリエイティブ集団Konel様との取り組みです。丸善ジュンク堂書店の新業態「magmabooks」の中に、音によって思考と心を解きほぐす空間をつくりました。日本庭園の技法である水琴窟の原理を活用し、滴り落ちる水音が空間を満たします。

湊くるみ
sound biotope

また、静岡大学様との共同研究プロジェクト「余暇図鑑」は、音や音楽分野に止まらない、新しい取り組みとなっています。昨今、学生のキャリア教育は盛んに行われていますが、多くは仕事に偏った内容になりがちです。そこでこのプロジェクトでは、“余暇”にスポットを当て、人生の幅広さを伝えていくWebコンテンツなどを制作しています。

この他、外部の方々と連携しながら、AIを中心とした音楽情報処理技術などの研究を進めている横浜の開発拠点「MINA Lab」についても紹介いたしました。先述した“演奏に追従するAI”を活用し、片手で弾くメロディーに合わせて自動で伴奏がつく「だれでもピアノ」をはじめ、オープンな実証実験も行われています。来場者にはAIの取り組み、開発中の計測システムともに興味を持っていただき、「具体的にコラボレーションをしてみたい」という声もいただくことができました。

余暇図鑑
MINA Lab