[メインビジュアル] Find Common Grooves

女性アーティストたちに共通のグルーヴ

Alexa TarantinoとAvery*Sunshine
子ども時代の真実と大人になってからの道のりを語る

執筆者:Lisa Battles

2人の一流女性ミュージシャンが音楽業界での歩みについて語るとなると、会話の中心はサウンドになるだろうと思われるでしょう。

しかし、Alexa TarantinoとAvery*Sunshineの場合、話題に上るテーマといえば、彼女たちが見たり想像したりしたこと、つまり、子ども時代に得たインスピレーション、大人になってからの野心、そして互いのつながりについてです。

彼女たちの経歴、キャリア、音楽ジャンルは異なりますが、その物語や視点には多くの共通点があります。

ステージ上の自分たちの姿を見る

2人のミュージシャンたちが音楽への愛に気づいたきっかけはどちらも、8歳のときに若い女性が演奏するのを見たことでした。R&Bおよびゴスペル歌手、ピアニスト、作曲家として賞賛を浴びているAvery*Sunshineの場合は1980年代前半のこと、あるクリスマス・リサイタルに参加した後、ピアノを習いたいという気持ちを打ち明けました。そんな彼女は、4枚目のアルバム「So Glad to Know You」で2025年グラミー賞最優秀プログレッシヴR&Bアルバム部門を受賞しています。
Avery*Sunshineはこう言います。「私は母に『あの若い女の人がやっていることを私もやりたい』と言いました。あの一瞬がこの仕事、私のライフワークの発端になるとは思いもしませんでした。子どもの頃の誠実さは、とかく失われやすいものです。経験を積んで生きていく中で、自分を表現する方法は変わります。私は女性として大切だと思うのは、その誠実さを失わないことです。その出会いをした瞬間、私は目先のことしか見えないような感じになりました。私にはそれしか見えなくなったのです。その瞬間を今でも追い求めているかは分かりませんが、女性としてそのような場所を見つけるために戦わなければなりません」
2000年代初め、8歳のTarantinoは、生まれ故郷のコネチカット州ウエストハートフォードで両親と一緒に地元の学校のジャズ・コンサートに行ったときに、同じような経験をしました。
Tarantinoは言います。「サックスを吹いている若い女性を見て、私もああなりたい、これが私のやりたいことだと思いました。私たちの2人の話でとても興味深いのは、2人とも若い女性が楽器を演奏しているのを見たということです。地下鉄などで演奏していると、近づいてくる人から『女性がサックスを吹いているなんて変だ』とよく言われます。でも私の場合、そういったことを全く[疑問に]思わなかったのです」 「それがライフワークになると思っていましたか?」とAvery*Sunshineは尋ねます。

「そのことに夢中になっていてほかに何もやりたくない、と思っていました」とTarantinoは言います。

[写真] Seeing Themselves on Stage

ロール・モデルになる

Tarantinoがジャズ・サックスへの新たな情熱を追い求め始めた頃、Avery*Sunshineはプロとしてのキャリアをスタートさせていました。大学在学中、彼女はクラスメイトのMaia Nkenge Wilsonと組んで、ゴスペルとR&Bのデュオを結成していました。卒業後はアトランタのSt. Paul AME Churchの音楽牧師となり、そこでのちの夫となるDana Johnsonと初めて出会い、音楽のコラボレーションを始めます。ビジネス・パートナーとなった2人はBigShine Musicを設立し、2010年に彼女のセルフタイトルのデビュー・アルバムを自主リリースしました。

その同時期、Tarantinoはイーストマン音楽学校でジャズ・サックス演奏と音楽教育の勉強を始め、学士号を取得。その後、ジュリアード音楽院でジャズ研究の修士号を取得しました。

Tarantinoは言います。「物事がどう展開していくのか分かりませんでした。進学先を決めるとき、私は『音楽学校に行かなければならないわ。ほかにやりたいことは何もない』と考えました。その時点では『音楽教師になることもできる。教えるのは好きだ。でも、音楽学校に進学して学校にこもって練習すれば、最高レベルにまで成長できる。その後、ニューヨークに移って演奏してどうなるか見てみたい』と考えていました」

彼女はその両方を成し遂げます。2024年、Tarantinoは女性として初めてJazz at Lincoln Center Orchestraのフルタイム奏者になりました。これは国内で唯一の、そして世界でも数少ないことです。彼女は数多くのコンサートで圧巻の演奏を披露するだけでなく、首席または共同首席として4枚のアルバムにクレジットされ、演奏に参加しているアルバムは十数枚にのぼります。

Tarantinoは言います。「[15歳のAlexaは]Jazz at Lincoln Center Orchestraのフルタイム奏者になれるなんて想像もしていなかったと思います。私のメンターであるTed Nashと昨日話をしました。彼は多様性全般と芸術の多様性を支持する素晴らしいサポーターで、26年かけて私を彼の後継者に育ててくれました。そんな彼も、ステージ上の誰かに自分自身を投影できることはとても重要だ、と言っていました」

[写真] Becoming the Role Models

自信に満ちた合図に従う

メンターと言えば、Avery*Sunshineはこれまで直接指導してくれた数人の女性を思い出します。音楽を始めたばかりの頃のピアノ教師、Spelman Collegeの教授だった「巨匠」オルガン奏者、そして叔母のTootsie。Tootsieのことは「ありとあらゆる教会で演奏し、素晴らしかった」と語っています。Avery*Sunshineはこのリストに、叔母と同じ教会でよく演奏していた、今は亡きジャズ・オルガン奏者のShirley Scottを加えます。
Avery*Sunshineは言います。「演奏するように言われた私は『うーん、そうじゃない、私にはできない。私の足と手ではやることが多すぎる。そんなことができるほど手足が上手く動かない』と言いました。オルガンがここで、ピアノはここ。説教壇の真正面という、見たこともない奇妙な配置でした。そして私はピアノの前に座らされ、Shirleyが礼拝のオルガンを弾きに来るのです」
「私は女性が楽器をあんな風に操るというか、演奏するのを実際に見たのはそれが初めてでした。ところが、自分自身を見るということで言うと、私はオルガンを弾く気がなく、彼女の自信、彼女の動き、そして『やりたいことは何でもできる』と彼女が発言するのをただ見ていました……。まさにそんな感じでした」

[写真] Following Confident Cues

優雅さを持ってつながりを見つける

Avery*Sunshineは、Ella Fitzgeraldの作品と視点を再考することで、音楽界の女性のロール・モデルとして彼女が尊敬する女性像に別の側面が加わったと言います。
「私はYouTubeの映像を次から次へと食い入るように視聴して、彼女の話をひたすら聞いていました。彼女の柔和さと謙虚さは魅力的です。クワイエット・ストームは、私がすべきだったこととはまったく正反対のようです。彼女を見ていると、動きに優雅さがあって、私は時々、そんな優雅さがほしいと悩みます」とAvery*Sunshineは言います。
バランスとつながりを見つけることの重要性を強調するTarantinoも、その話には共感しています。TarantinoとAvery*Sunshineは会話やコラボレーションの中で、そのことにすぐに気づきました。
Tarantinoは言います。「本当にそう思います。『やりすぎ』になりたくないと思うときもありますし、かといって自分を小さく見せたくもない。私たちは2人とも、100%自分らしくありたいタイプだと思います。最高の自分でいられる、1番本物の自分でいられると感じさせてくれる人たちに囲まれていたいのです。だからこそ、今回のコラボレーションはとても特別なものでした」
Tarantinoはさらに、Avery*Sunshineとのコラボレーションで最もエキサイティングだったことは、2人のバックグラウンドは全く異なるにもかかわらず、共通の友人がたくさんいること、本物でありたいという意欲、そしてお互いに尊敬し合う中でリスクに挑戦して演奏しようという姿勢を発見したことだと言います。
「今日はあなたから学びました。何よりも、私たちがここに来て自分らしくあり、称賛され、本物の演奏をし、ただ何かに挑戦し、リスクを冒す、これができたのは素晴らしいことでした。私はジャズ、ポップス、R&Bのことしか考えていなかったわけではありません。ブルースのことも考えていました。今回の私たちにとってはブルースが第1で、そしてここにあなたと私だけがいた。それが今回のコラボレーションでした」とTarantinoは言います。
何年も前に若い女性たちの自信に満ちた演奏を目の当たりにし、そこに自分たちの未来を重ね合わせた、少女時代の想像力に富んだ2人。今回のコラボレーションではそんな2人が自分たちの成功を祝います。

[写真] Finding Connection Gracefully
[写真] Avery*Sunshine

Avery*Sunshine

ヤマハ・アーティスト、シンガー、ソングライター、ピアニスト

Avery*Sunshineは彼女の演奏を聴く人たちを虜にし、R&B界の切り札とも言うべき地位を獲得しています。本物のサウンドを奏で異色の才能の持つことで知られる彼女は、自分自身をOprah WinfreyとBette Midlerを足して2で割ったような存在と表現しています。そしてその例えは、彼女のダイナミックなライブ・パフォーマンスで見て取れます。
彼女はさまざまな歌い手が群雄割拠するジャンルに身を置く中で、自分の音楽的ビジョンに忠実であり続けることで独自の道を切り開いてきました。彼女の演奏は人々にインスピレーションを与え鼓舞します。そしてその演奏には、聴く人すべてに力を与え勇気づけるという使命があります。Avery*Sunshineの最大の願いは、彼女の音楽を体感するすべての人にとって力の源となることです。
彼女は自らの優れた芸術性により、2025年のグラミー賞で最優秀プログレッシブR&Bアルバムを受賞し、業界での地位をさらに確固たるものにしました。

[写真] Alexa Tarantino

Alexa Tarantino

ジャズ・サクソフォン奏者、作曲家、教育者

Alexa Tarantinoは、ジャズ・サクソフォン奏者として受賞歴があるほか、作曲家や教育者としても活躍するヤマハ・アーティスト。ダイナミックな演奏と「ラブリーで情熱的な即興演奏スタイル」(ニューヨーク・タイムズ)で知られています。彼女はJazz at Lincoln Center Orchestra所属の奏者であり、Cécile McLorin Salvantの『Ogresse』アンサンブルやArturo O'Farrill率いるAfro-Latin Jazz Orchestraと定期的に共演しています。
Alexaは自身のグループ、Alexa Tarantino Quartetを率いて、Dizzy's ClubやBirdland Theaterといった有名なジャズ・クラブで定期的に演奏しています。彼女はジュリアード音楽院でジャズ研究の修士号を取得しており、Jazz at Lincoln Centerの若手育成プログラムの教員も務めています。また、AlexaはRockport Musicのジャズ・ワークショップの創設者兼ディレクターでもあります。

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