100年先の音楽文化を守る、
ヤマハの木材
デューディリジェンスと
持続可能な調達

[メインビジュアル] 100年先の音楽文化を守る、ヤマハの木材デューディリジェンスと持続可能な調達

100年先の音楽文化とは?
ヤマハが思い描く楽器と森の理想的な関係

優れた楽器をつくるうえで、優れた材料を安定的に調達することは必要不可欠な工程です。なかでも自然資源である樹木は、楽器製造に使える大きさに育つまで100年以上かかるうえに、近年は良質な木材の確保がどんどん難しくなっています。気候変動の影響はもちろんのこと、過剰伐採や違法伐採も横行。楽器に使用される木材の調達において、持続可能な仕組みをつくることが急務となっています。

そうした難しい局面に立たされているなかで、ヤマハは木材製品が違法でないことを確実にする「木材デューディリジェンス」(※)に取り組み、かつその取り組みを発展させています。音楽文化と自然環境の未来をより良くするために、多岐にわたる活動を積極的に展開しています。

  • 木材デューディリジェンス:取引する木材製品が違法でないことを確実にするためにあらゆる方法を駆使して調査確認をする義務のこと。(出展:フェアウッド・パートナーズ)

なぜ楽器の素材に「木材」が選ばれ続けるのか?

ピアノや弦打楽器、木管楽器など、多くの楽器には木材が使用されています。しかし、ひとことに「木材」といえど、その性質はさまざま。樹種ごとに固有の音響特性を持っており、どの木材を使うかで楽器の音色や響きは大きく変化します。

たとえばマツ科の針葉樹である「スプルース」は軽くて強度があり、しかも振動が伝わりやすいため、バイオリンのトップ材として理想的です。また、カエデ科の広葉樹「メイプル」は硬度と密度の高さから、とくに弦楽器のバック材やネック材として使用され、豊かな音の響きに寄与します。

ただ、木材資源の枯渇化が叫ばれているなかで、楽器に最適な木材を手に入れる難易度は過去に比べて格段に上がっています。ヤマハグループでは現在、東南アジア・北米・ヨーロッパを中心に世界26か国から70種類以上の木材を調達していますが、外観や加工性に優れ、しかも良質な音を生み出せるものとなると、その数はごくわずかです。

[写真] 楽器づくりのための木材

メーカーと森林の「理想の関係性」とは

昨今はプラスチックや金属をおもな素材とするデジタル楽器も増加し、ヤマハでも開発・販売に取り組んでいます。デジタル楽器は多彩な音を奏でることができますが、一方で木材しか選択肢がなかった時代につくられた「アコースティック楽器」には特有の音色があります。それを再現し、未来に受け継いでいくことがヤマハの使命の一つといえます。

そのためには、木材を持続的・安定的に調達することが重要。どうやって森林を守り、さらに豊かにしていくかが課題となっています。

もちろん、森林を伐採しなければ解決するわけではありません。人の手が入らない森林は過密状態になり、日光を遮る原因に。十分な陽が届かなくなると下草が成長できなくなり、土壌が剥き出しになって土砂災害の原因になったり、それまで生息していた動物が住めなくなって生態系が崩壊したりといった恐れも出てきます。

木材資源を適切に使い、森林環境の保全にも配慮しながら楽器を製造する。アコースティック楽器を未来につなぐ使命を持つヤマハが、とても大切にしている考え方です。

[写真] 木材サプライヤー現地調査の様子

ヤマハが取り組む「木材デューディリジェンス」とは

ヤマハは、Q(品質)、C(コスト)、D(デリバリー)の3つの要素に加え、サステナビリティも重視した調達を行うため、木材デューディリジェンスの仕組みづくりに尽力してきました。

たとえば、ヤマハでは購入する木材の原産地や伐採の合法性、資源の持続可能性に関する書類調査を実施しています。この調査はすべてのサプライヤー(木材供給元)が対象で、それぞれに対してどの程度、どんなリスクがあるのかを詳細に調べます。リスクが高いと判断された木材については、現地訪問を含む追加調査を行い、より厳しく合法性を確認しています。

2007年には、「ヤマハグループ木材調達方針」を制定。この方針では、森林の近くに住む先住民の人権を侵害するなど地域社会に悪影響を及ぼす違法な伐採材や、生態系を破壊する恐れのある遺伝子組み換え樹種の調達を禁止しています。

また、供給源が明らかで合法に伐採・取引された木材を調達するために、第三者による認定を受けた認証木材の利用拡大を目指しました。

[画像] 木材調達に不可欠なQCD

木材の「出自」を明らかにし、持続可能な楽器づくりを

さらに2022年4月からは、「持続可能性に配慮した木材使用率75%」を新たな目標として設定。ただし、その達成のためには認証材以外の流通量の少ない木材をどのように評価するかが課題となりました。

そこでデューディリジェンスの構築支援を行う国際環境団体「Preferred by Nature」の協力を仰ぎ、その監修のもとにヤマハ独自の「持続可能性に配慮した木材」の評価項目・判断基準を2023年5月に制定しました。

2024年3月期には、木材デューディリジェンスに用いるリスク評価の基準を厳格化。同期において、法的リスクの低い木材の使用率と、持続可能性に配慮した木材使用率は以下のとおりとなっています。

しかしながら、すべての木材サプライヤーや森林所有者が私たちの考えに賛同してくれるわけではありません。ヤマハでは、実際に現地に赴き関係者の方々と対話することを重視。その過程で、環境破壊につながる可能性がある森林を特定する「木材調達マップ」も作成し、ノウハウとして蓄積しています。

[画像] 法的リスクの低い木材の利用率は98.2%、持続可能性に配慮した木材使用率は64.4%

音楽と環境の未来には、サステナブルな木材調達が不可欠

[写真] サステナブルな木材調達コラージュ

木材デューディリジェンスで木材の合法性・持続可能性を確認するのと同時に、楽器に適した木材が長期的に育つ環境をつくっていくことも、ヤマハが目指す「100年先の未来像」につながります。

たとえば、「おとの森」プロジェクトも大事な活動です。この活動では、楽器に使われる希少樹種を植林し、楽器製造に活用するまでの循環を地域住民と一緒につくろうとしています。

もちろん、その達成のためには数十年、数百年という膨大な時間が必要になり、短期的なリターンは見込めません。しかしヤマハでは、森が豊かになることで木材調達量の最適化を実現できるだけでなく、地域の雇用創出や、楽器を楽しむ人を増やすことにもつながると考えてこのプロジェクトに取り組んでいます。

そういう意味において、ヤマハの木材調達活動は森林業者、楽器製造メーカー、そして次世代の楽器演奏者をつなぐ重要な役割を果たしているはずだと信じています。

私たちヤマハは、世界各地の木材サプライヤーや森林所有者との連携をさらに深めながら、豊かな音楽文化を未来に受け継いでいくことを目指しつづけていきます。100年後にも、豊かなアコースティック楽器の響きを楽しんでいただくために。