音楽教育で未来の
人材を育成し、
地域社会に活力を――
スペインの公立学校と
ヤマハの挑戦

[メインビジュアル] 音楽教育で未来の人材を育成し、地域社会に活力を――スペインの公立学校とヤマハの挑戦

音楽学習が人の成長や社会に与える可能性について、近年、教育や科学の分野で注目が集まっています。

そうしたことをひとつの背景に、ヤマハ・ミュージック・ヨーロッパは、2011年からスペインの公立学校に吹奏楽活動を導入する「ClassBand(クラスバンド)」プロジェクトを実施しています。子どもたちが管楽器や打楽器を演奏し、仲間と音を合わせる体験を通じて、音楽の楽しさを身近に感じられるようにする取り組みです。

そこには、音・音楽を通じた「世界中の人々のこころ豊かなくらし」の実現を目指すというヤマハのミッション、そして長年にわたり楽器と音楽教育に携わってきた知見があります。

すべての子どもたちに「音楽のよろこび」を——「ClassBand」始動の背景

他者とともに声やリズムを身体から発したり、楽器を演奏することを通じて「音楽のよろこび」に触れたりすることは、子どもたちの感受性、共感力、創造性等の非認知能力を育むと言われています。

スペインで始まった「ClassBand」の取り組みも、こうした音楽教育の意義が広く認識され、社会的関心が高まっていることとも関係しています。

[写真] 音楽室でサックスとユーフォニアムを持ち、笑顔でポーズをとる2人の生徒。

そもそもヨーロッパの多くの国では、情操教育(音楽・スポーツ・美術)は放課後専門学校で習うことが一般的です。

スペインの専門的な音楽教育は世界的に高い水準にあることで知られており、希望者は本格的な音楽教育を受けることができます。その一方で公立学校における音楽の授業は長らく「鑑賞」を中心とした内容が主流でした。リコーダーやピアニカといった教育楽器が必ずしも使用されるわけではなく、スペインの教育現場には「楽器演奏が、すべての子どもたちにとって身近な体験になっていない」という課題意識が生まれていました。

公立学校に吹奏楽活動を導入することで、音楽の楽しさをより身近に感じられる環境を実現できないか——。ClassBandは、ヤマハ・ミュージック・ヨーロッパのそうした構想からスタートした取り組みなのです。

[写真] ClassBandは2011年にスペインの1校で試験的な取り組みとしてスタート。その後、着実に広がりを見せ、2020年以降は学校や教育当局との連携を強化したことで、全国の音楽授業へと急速に普及した

ClassBandは2011年にスペインの1校で試験的な取り組みとしてスタート。その後、着実に広がりを見せ、2020年以降は学校や教育当局との連携を強化したことで、全国の音楽授業へと急速に普及した

生徒たちの学習意欲、授業態度にも変化が

ClassBandの最大の特徴は、生徒全員が未経験の楽器を手にし、クラス全体で一緒に学んでいくことです。最初のレッスンから全員で合奏を楽しむことができるよう、数音でもアンサンブルできるレパートリーを多数用意しています。また子どもたちの好奇心を尊重して演奏する楽器を自ら選ぶことができるようにしているのも、このプロジェクトの特徴です。

[図] 多様な楽器を手に音楽を学ぶ生徒たち。音楽教育の機会均等と能動的な体験を提供することを通じて意欲向上を象徴する図版。

そうして「全員が新たに楽器に挑戦する」という同じスタートラインに立つことはモチベーションと安心感につながりました。

実際に、導入された学校では好意的なリアクションが見られました。生徒たちが授業の枠を超えて「もっと楽器を演奏したい」と主体的に行動するようになり、特にこれまで授業中の態度や学習意欲に課題があった生徒たちには明確な変化がありました。

音楽の楽しさと有効な学びの場を提供したい——。ClassBandは教育現場の課題意識に応えると同時に、子どもたちにとって「チームとして成功する」という意識を育む成功体験の場にもなったのです。

[写真] 教員にとっても全ての楽器をグループ形式で教えることは容易ではない。ClassBandではヤマハのスタッフが定期的に教員向けのセミナーやフォローアップの機会を用意し、レッスンがスムーズに進むようサポートしている

教員にとっても全ての楽器をグループ形式で教えることは容易ではない。ClassBandではヤマハのスタッフが定期的に教員向けのセミナーやフォローアップの機会を用意し、レッスンがスムーズに進むようサポートしている

ヤマハの社会貢献とビジネスを同時に推進するClassBand

ClassBandは、単なる教育支援プロジェクトではありません。ヤマハの企業理念「感動を・ともに・創る」のもと、音楽教育を社会インフラとして再構築し、誰もが音楽に触れられる機会を提供する取り組みといえます。

だからこそ私たちは「ヤマハの製品を導入する」ことをゴールとするのではなく、その結果として音楽教育がさらに充実することを重視し、教材やワークショップの提供など運営支援にも力を入れています。

通常、バンド&オーケストラ市場では限られた市場とのシェア争いが中心となりますが、教育現場とともに楽器演奏の機会を共創するClassBandのアプローチは、新しい市場を開拓することにもつながっています。

[写真] 屋外で学生たちが、トランペット、トロンボーン、サックス、チューバなどの金管・木管楽器を手に笑顔でポーズをとる。

音楽の力を教育に取り入れ、未来の人材育成を促進する——。

公立学校で楽器を演奏する機会を新たに創出することで、教育、文化の社会的な土壌を改善しうるというスペインの事例は、同様の課題を抱える他の国や地域にとっても有効なヒントとなるかもしれません。

[図] 音楽教育の基盤を整備し、未来を担う人材を育む、社会インフラとしての役割を表現した図版。

音楽のよろこびを広げ、世界中の人々に「こころ豊かなくらし」を

音楽に触れる機会を生み出し続け、誰もがその機会に公平にアクセスできるようにすること——このClassBandの理念のもと、私たちはスペインのより多くの子どもたちが楽器と出会い、音楽の喜びを感じられる場を広げてきました。

生徒たちからは「ClassBandが私の人生を変えた」「将来はサックス奏者になりたい」「トランペットを学ぶことが今年一番楽しかったこと」という声も寄せられています。

[写真] 音楽室で一列に並んで座り、譜面台の楽譜を見ながら真剣な表情でトランペットを練習する生徒たちのグループ。

他者とともに音楽を演奏するよろこびは、かけがえのないものとなるはずです。そうした体験が一人ひとりの人生に影響を及ぼし、音楽や楽器を通じた輪が人々をつなぎ、社会全体を変えていく——。

そうした先に、私たちが目指す「音・音楽を通じた、世界中の人々のこころ豊かなくらし」の実現があると考えています。

楽器を通じて自らの可能性に気づき、人生がこころ豊かなものになっていくということ。ClassBandは、そうした一人ひとりの未来を信じるヤマハの挑戦なのです。

[写真] 「II Encuentro Nacional Yamaha ClassBand(第2回 ヤマハ・クラスバンド全国大会)」のステージ上に集まった、大勢の参加学生たちの集合写真。