なぜ人は「差別」してしまうのか?――中学生とともに考えた、差別のない未来
![[メインビジュアル] なぜ人は「差別」してしまうのか?――中学生とともに考えた、差別のない未来](images/main.jpg)
現在、小学校から高校の授業に「総合的な学習(探究)の時間」が設けられています。その目的は、変化の激しい社会に対応して、探究的な見方・考え方を働かせて課題を解決し、自己の生き方を考えるための資質・能力を獲得すること。
川崎市立日吉中学校では、2年生の総合学習において、1年かけて一つのテーマに取り組み、テーマに関連した企業訪問も行っています。探究学習の中でヤマハのDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)に関心を抱いた生徒の皆さんが、ヤマハに企業訪問の問い合わせをしたことをきっかけに、ヤマハ人事部メンバー2人と中学生による「差別」をテーマにした対話(全2回)が行われました。
第1回:なぜ人は差別してしまうのか?
第1回目は、2025年8月26日、ヤマハ人事部メンバーが日吉中学校を訪問し、2年生9人と二つの問いをもとに意見を出し合いました。
一つ目は「差別と聞いてどんなイメージを持つか?」という問い。全員が自分の意見を付箋に書き出し、それらを机に並べて共有した後、意見を交わしました。「人権がない状態」「いじめ」「ひとりぼっち」などの意見が並ぶ中、「世の中からなくなったらいいのにな」という意見には、「みんなが状態を書いている中で、角度が違っていると思った」との感想が述べられました。
![[写真] 出された意見を全員で眺めて共有し、対話を進めた](images/image_01.jpg)
二つ目の問いは「どうして人は差別してしまうのか?」。 この質問に対しては「偏見を持っているから」「自分と違うから、うらやましくなってしまう」などの意見が寄せられました。
「人間はそんなに強いものじゃない。心がつらくなった時、防衛のために自分にバリアを張って、人との違いを明確にすることで安心感を得ているのではないか」──ヤマハメンバーのコメントに対し、生徒の皆さんは「差別は自分と違う部分のある人に損をさせたり、嫌なことをしたりして、自分が上に立とうとするものだと思う」「異質な人を拒絶してしまうから差別が起こるのかもしれない」と意見を深めていきました。
![[写真] 上半分は「差別と聞いてどんなイメージを持つか?」への意見、下半分は「どうして人は差別してしまうと思うか?」への意見](images/image_02.jpg)
第2回:差別をなくすために何ができる?
第2回は、2025年9月17日に渋谷のヤマハサウンドクロッシングで開催され、生徒の皆さんが差別について探究してきた成果を発表することから始まりました。
「差別とは何か」から始まり、皆さんは「特定の特徴を理由に不当な扱いをすること」と定義づけ、身近な学校生活から社会全体に広がる問題まで、具体的な事例を示しました。
差別は身近なところにある
発表では、学校ではスポーツの得意・不得意、学力の差といった違いがいじめにつながることがあること、職場では、男女差による収入格差や昇進の壁が依然として残っていること、そして社会には人種、宗教、障がい者差別など、数多くの差別が存在していると述べました。こうした差別は、就職や結婚など人生の選択を不当に制限し、人権を踏みにじるものだとしました。
偏見・固定観念が差別を生む
皆さんが強調したのは、「偏見や固定観念が差別の原因になる」という点でした。その事例として「ある高校の生徒は不良が多いと聞いて、会ったこともないのに怖いと感じることがあります。実際には生徒のごく一部なのに、学校全体が不良の集まりと決めつけてしまう。これは典型的な偏見で、個人を見ずに集団にレッテルを貼る行為です」と話しました。さらに「どうせ、みんな同じだろうという思い込みが、理解しようとする姿勢を失わせ、信頼関係を壊してしまいます。こうした小さな偏見が積み重なって差別を強めるのです」と指摘しました。
経済格差・歴史・無知も要因に
差別には「思い込み」のほかにも、経済的背景や知識不足が影響することがあると皆さんは説明しました。
- 経済格差による「貧乏だから何もできない」「金持ちだから性格が悪い」という決めつけ
- 過去のできごとを理由に「昔悪いことをしたから今も同じだろう」と判断する偏見
- 初対面の印象や思い込みで勝手に評価してしまう無知からの差別
![[写真] 作成したスライドをもとに発表する生徒の皆さん](images/image_03.jpg)
これらはすべて、相手を深く知ろうとせずに「レッテルを貼る」ことから生まれていると説明し、生徒の皆さんは次のようなクイズをヤマハメンバーに出題しました。
「自分の息子を乗せて父親が車を運転していました。ところが、その車は事故に遭ってしまい、運転していた父親と息子は別々の病院に運ばれました。病院の手術室で、運ばれてきた息子の顔を見て、外科医がこう言いました。『この子は、私の息子だ!』。この話で疑問やおかしいと思ったところを教えてください」
皆さんはクイズの解説として、「この息子の父親は別の病院に運ばれましたが、母親は元気ですよね。つまり外科医はその息子の母親ということです。違和感を覚えた人は「外科医は男性」という無意識の偏見を持っているのかもしれません」と話しました。実はこのクイズ、ヤマハにおいても新入社員向け「人権・DE&I研修」で採用しているものでした。
そして皆さんは「差別をなくすためにできること」として、次のような提案をしました。
- 自分の価値観だけで他人を決めつけない
- 一人ひとりの個性を尊重する
- いじめや不当な扱いを見過ごさない
- 共通の目標に向かって協力し、相手の良さを見つける
- 「もし自分が言われたら」と相手の立場で考える
- 「本当に正しいか」を自分に問い直す
- 偏見があると気づいたらネットや書籍で調べて知識を深める
最後に参加者の皆さんは「今回学んだ差別をなくすための取り組みを身近な人に伝えていきたいです。まず自分を含めた身近な人の意識を変え、その小さな輪が広がれば、きっと社会全体も変わっていくと信じています」と締めくくりました。
![[写真] 生徒の皆さんが発表用に作成したスライド](images/image_04.jpg)
皆さんからの発表の後、ヤマハから、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の取り組みについて、皆さんの話と重ね合わせながら紹介しました。
ヤマハは「一人ひとりの違いを尊重し、多様な人材が力を発揮できる環境をつくることを目指している」と伝え、性別、国籍、年齢、障がいの有無、性的指向や性自認などに関わらず、誰もが自分らしく働き、学び、成長できる環境を整えることで、新しいアイデアや価値が生まれると話しました。
また、無意識の思い込みにも目を向けることの重要性を伝え、差別や偏見を減らすため、意識を高めるための研修や、相談できる環境の整備など、企業としての取り組みを紹介しました。
![[写真] 生徒の皆さんの話と重ね合わせながらヤマハの取り組みを紹介](images/image_05.jpg)
異なる視点が生む力
今回の対話では、異なる立場や世代が交わることで、新しい視点が次々に生まれました。中学生から出された言葉の多くは、日本社会が抱える課題に直結しており、その率直さに触れることで、ヤマハ自身も「自分たちがどう貢献できるか」を改めて考えるきっかけになりました。
日吉中学の皆さんが伝えてくれたように、小さな輪から社会全体へ──異なる視点を尊重し、ともに学び合う場を増やすことが、差別のない未来をつくる第一歩だと信じています。