[ 画像 ] 今週の音楽記事から 音楽ジャーナリストの眼 毎週月曜更新

音楽ライター記事

ライター:山崎│配信日:2017年2月16日│配信テーマ:洋楽  

【ライヴ・レポート】ジャーニー 2017年2月7日(火)/日本武道館


2017年2月、ジャーニーが日本公演を行った。

大阪〜名古屋〜仙台と日本を縦断するツアーで、天王山となったのが6日(月)・7日(火)の日本武道館2連戦だ。初日は地方公演と同様、グレイテスト・ヒッツ・ショーだったが、2日目は『エスケイプ』(1981)と『フロンティアーズ』(1983)という彼らの2大ベストセラー・アルバムを完全再現するという特別公演。前者が全世界で1,200万枚、後者が800万枚という大ヒット作であり、トータル2,000万枚!のモンスター・アルバム2作を1度のライヴで体験できてしまうプレミアム・ライヴである。

ジャーニーの2大アルバム再現ライヴは、 2015年から構想があった。ギタリストのニール・ショーンは同年11月、筆者(山崎)とのインタビューで、さまざまなプロジェクトの予定を話してくれている。

そのうちのひとつ、ニールの ソロ来日ツアーは2016年2月に予定されながら、ニールの肺疾患のせいで中止になってしまっている。だがサンタナと再合体した(元々ジャーニーはサンタナのバンド・メンバー達が独立して結成したバンドだった)アルバム『サンタナIV』とライヴ映像作品『ライヴ・アット・ザ・ハウス・オブ・ブルース』は無事リリースされ、夏のジャーニー&ドゥービー・ブラザーズによる北米“サンフランシスコ・フェス2016”ツアーも実現するなど、ジャーニーは次から次へと“夢の企画”を現実のものにしていった。

そんな“夢”のひとつとしてニールが語ってくれたのが2大アルバム再現ライヴだったわけだが、年が明けた2017年になって、それが実現したのだ。

世界初となるスペシャル・ライヴということもあり、日本武道館のアリーナと1階席はほぼソールドアウト。観客層はやや高めだが、場内が暗転するといきなり総立ちになる。『エスケイプ』の1曲目である「ドント・ストップ・ビリーヴィン」からショーがスタートするとなれば、立ち上がらずにいられないだろう。だが約1万人の観衆は、ショーが終わるまでずっと立ちっぱなし、歌いっぱなし、踊りっぱなしだった。

タネ明かしをしてしまえば、実は“2大アルバム完全再現!”といっても、普段とそれほど演奏曲目が変わってしまうわけではない。「クライング・ナウ」や「オープン・アームズ」はジャーニーのライヴで絶対欠くことの出来ない代表曲だし、「ストーン・イン・ラヴ」、「キープ・オン・ランニン」などもしばしば演奏されるナンバーだ。『エスケイプ』収録曲で本当にレアなのは「レイ・イット・ダウン」「デッド・オア・アライヴ」あたりだろうか。だが、アルバムの曲順に演奏されるのは正真正銘これが初めてであり、バンドも観衆もそんなスペシャルな試みにスリルを感じ、楽しんでいた。

2013年3月にも武道館でライヴを行っているジャーニーだが、今回のステージ・パフォーマンスはさらに熱気とエネルギー、そして若さを伴っている。ニール・ショーンはさまざまなプロジェクトの傍ら、facebookに連日奥さんとのラブラブ写真を掲載するなど、プライベートでも充実しまくりで、それがギター・プレイにも表れている。彼の“師匠”であるカルロス・サンタナもドラマーのシンディ・ブラックマンと結婚して以来ギラギラとした熱気を取り戻したが、愛が若さを取り戻すのに有効であることがうかがえる。

シンガーのアーネル・ピネダは『エスケイプ』『フロンティアーズ』でのスティーヴ・ペリーばりの熱唱を聴かせながら、スティーヴ本人ですらライヴで出し得なかったであろう声域とハリを響かせる。2007年に加入したときはスティーヴと似た長髪だった彼だが、 10年を経て独自のアイデンティティを築いたことで、横と後ろを刈り上げた独自のヘアスタイルとなり、遠目に見ると少年のようなヴィジュアルとなっていた(実際は49歳だそうだ)。

ドラマーのスティーヴ・スミスが復帰したことも、バンドに新しいエネルギーを漲らせることになった。2015年、ディーン・カストロノヴォがDVで逮捕されて解雇、という事件はバンドに暗い影を落としたものの、スティーヴの復帰がそれを補って余りある効果をもたしたのは明らかだ。

「オープン・アームズ」で『エスケイプ』編が終わると、特にインターバルを挟むわけではなく、短いジャムを披露してから、ジョナサン・ケインが『フロンティアーズ』の1曲目「セパレート・ウェイズ」のイントロを奏で、武道館は天井が抜けそうなほどヒートアップする。

後半戦も「マイ・ラヴ」「時への誓い Faithfully」などのヒット曲や、1983年の武道館公演のオープニング曲だった「チェイン・リアクション」、それに対する「限りなき世界」「トラブルド・チャイルド」「美しき叫び」などのレア曲などがアルバムの曲順にプレイされ、1曲ごとに声援が上がる。ラスト「永遠なるルビコン」で本編がクライマックスを迎えると、歓声もまたピークに達した。
アンコールは「『サンタナIII』に似たノリの曲だ」という紹介からシングルB面曲「ラ・ラサ・デル・ソル」をプレイ。後半はジミ・ヘンドリックスの「サード・ストーン・フロム・ザ・サン」へと雪崩れ込み、ラテン・ハード・ロック・ジャムが繰り広げられた。
ショーの最後がブルージーな「ラヴィン、タッチン、スクウィージン」だったのは意外だったが、ピークまで上り詰めた興奮をクールダウンするようなレイドバック・ナンバーで、全員が微笑みを浮かべながら武道館を後にすることになった。

2018年には結成45年という節目を迎えるジャーニーだが、その“旅路=ジャーニー”は終わることがない。まさにスペシャルな一夜だった。

2017年2月16日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

洋楽   のテーマを含む関連記事