当社の最大の特徴は、総合楽器メーカーとして育んだ鍵盤から管楽器、ギターまでの幅広い顧客基盤を抱えている点にあります。例えばギターは、販売本数では世界最大級のユーザーを有しており、特にエントリー層から中級層にかけて、毎年多くのお客様が新たに加わっています。こうした幅広いお客様層、クリエイターやミュージシャンと多様な接点を持っていることが、当社が提供するサービスへのユーザー流入において大きなシナジーを生んでいます。
国内直営店における取り組みでは、Yamaha Music ID を活用することで、顧客行動と販売データの可視化が進んでおり、AIによる行動予測とマーケティング施策を組み合わせることで、販売につなげる取り組みを進めてまいります。加えてパートナーとの協業という観点では、両者に販売面での相乗効果も確認できています。一方、社内プロセスは発展途上の段階ですが、新規事業開発の啓発活動を進める中で、社内の意識やカルチャーは大きく変化しています。従来の自前主義から、オープンイノベーションを通じて、もっと速く事業を拡大していくというマインドが急速に浸透しつつあります。
Yamaha Evolve Day 新規事業説明会 質疑応答
Q1:新規事業全般について、楽器メーカーとしての強みや特徴をどのように生かしているのか教えてください。またソフトとハード、あるいは各事業、サービス間のクロスセルやアップセルにつなげるための道筋や社内プロセスは確立されているのでしょうか?
Q2:現在のYamaha Music ID登録数は800万人ということですが、中期経営計画で掲げる1,000万人に向けて、どのように増加させていく考えでしょうか?足元の取り組みについて教えてください。また、登録ID全てがアクティブユーザーなのでしょうか?
Yamaha Music ID登録数拡大の非連続な要因として、国内のヤマハ音楽教室会員の統合や、中国市場での導入などが挙げられます。一方で、連続的な要素として、楽器購入時の製品登録をQRコード化することで登録を容易にしたほか、イベントの申し込みやチケット管理など顧客接点を広げる取り組みも会員の着実な増加に貢献しています。
また、顧客基盤の拡大に加えて、LTVの最大化を念頭にアクティブ率を重視した質の高い顧客基盤の構築にも取り組んでいます。
Q3:Music Connect事業における楽器ハードウェアとの連携の考え方について教えてください。
楽器のハードウェアとサービスをつなぐ取り組みとして、マーケットプレイスでハードとソフトを連携させた新しい価値・体験の提供を進めています。例えば、ポータブルキーボードのユーザーが自作の音源を提供し、他のユーザーと共有できる場の準備なども進めています。ただし、ハードウェアとの接続自体が主目的ではありません。まずはお客様にとって意味のあるサービスをきちんと形にし、自社だけでなく他社の優れたサービスも取り込みながら、お客様が真に求める価値を確立していきたいと考えています。
Q4:スライド48のMusic Connect事業の2028年3月期売上目標50億円は、800万IDのユーザーに基づくサービスの売上なのか、それともハードウェアの売上増を合算した目標なのか教えてください。またユーザーのエンゲージメントを図る仕組みはあるのでしょうか?
50億円には楽器ハードウェアの売上は含まれていません。このうち約半分弱が自社開発のサービスで、その中心がオンラインレッスンとなります。残りがM&Aや外部連携を含む成長です。またこれとは別に、Yamaha Music IDのメンバーシップで提供されるサービスを通じた楽器の追加売上も狙っていきます。現在データを集めている途上ですが、IDを通じた顧客行動を把握する仕組みは構築されており、それをマーケティングにつなげることで、楽器の販売にも寄与するMusic Connect事業を確立していきたいと考えています。
Q5:今回のオンラインレッスンサービスは、従来のハードウェア販売を主軸とする事業なのか、それともサービスそのもので利益を創出していく事業なのか教えてください。また、オンラインレッスンの事業規模についても教えてください。
今回のオンラインレッスンは、ヤマハ株式会社が取り組むサービス事業で、楽器の販売だけを目的としたものではありません。最終的には、オンラインとオフラインを行き来するハイブリッドなレッスン形態の提供を目指しています。現段階では、まずはオンラインレッスンの価値を確立させるため、日本国内の直営店舗を起点に段階的に展開していく予定です。
事業規模については、今中期経営計画で約15億円、約1.5万人の規模を目指しています。日本からサービスを開始し、講師をトレーニングしながら段階的に事業規模を拡大するため、立ち上がりは緩やかですが、5年ほどかけて30億円規模への成長を目指します。
Q6:Yamaha Creator Passは、サービスで安定的なリカーリング収益を目指すのか、もしくはハードとソフトを含めた全体での収益化を目指しているのでしょうか?また、3年後の売上10億円は控えめな目標に見えますが、その背景についてお聞かせください。
リカーリング収益で成長することを主軸に、ハードウェアやSteinbergソフトウェアなどの販売を通じて、グループ全体の売上成長につなげることを狙っています。
Yamaha Creator Passは当社にとって全く新しいビジネスモデルで、新しい顧客層を対象としているため、導入フェーズとしてまず一時的に目標を設定しています。現在はβ版の段階で、今後半年程かけて顧客の属性、解約率などのデータを蓄積したうえで、目標の妥当性を検証していく考えです。
今後、定期的に開催するYamaha Evolve DayにてYamaha Creator Passを含めた新規事業開発の進捗をご報告する予定です。
Q7:新規事業を通じた楽器未経験者へのリーチをどのように考えているのでしょうか?
Music Connect事業では楽器を演奏したい人、Yamaha Creator Passでは映像コンテンツなど音楽以外も含めた幅広い自己表現をしたい人、バーチャルエンターテインメント事業で聴く・見る専門の人など、それぞれの事業で異なる層にアプローチし、ヤマハのアセットにつなげていく取り組みを進めていきます。
Q8:御社の新規事業ではAIをどのように活用しているのか教えてください。
AIには、固定費を高めずに事業スケールを拡張できるメリットがあり、サービス開発と事業運営の両面で大きな役割を果たしています。例えば、Yamaha Creator PassはAIをフルに活用することで、少人数でも短期間での事業立ち上げを可能にし、コスト削減と効率性向上に大きく貢献しています。
一方、音楽教育の分野を一例に挙げると、音楽制作分野と比べてAIの活用はまだトライアルの段階にあり、スタートアップとの協業を通じて、実効性のある活用方法を探索しています。
Q9:例えばAIによってクリエイターが駆逐されるなど、AIのデメリットが発現した場合、クリエイター市場での成長は引き続き可能なのか、シナリオをどう描いているのかご説明ください。
AIが音楽業界に及ぼす影響は、現状予測できません。ただ、ヤマハは音楽文化を支える会社であり、AIが人に置き換わるのではなく、人がAIをうまく使ってクリエイティビティを発揮する社会を目指したいと思っています。そのためにも、AIを活用してクリエイターを助けるツールを提供していきたいと考えています。