アコースティックギターの振動・音響解析技術

音色に多大な影響を与える形状や構造、素材をシミュレート

楽器の形状や構造、素材などの設計要素は音色に多大な影響を与えます。楽器本体の各部分がどのように振動し、楽器の音になるのかなどの解析を、計測技術やシミュレーション技術を駆使しながら進めています。

楽器を科学的に設計する

アコースティック楽器の製品開発のため、ヤマハでは設計要素、物理特性、音の特徴の関係を明らかにして科学的に設計するための研究に取り組んでいます。

アコースティックギターの設計

一見シンプルなアコースティックギターですが、その響きを左右する設計要素は多岐にわたっています。我々はギターの設計者や製作者をサポートするために設計要素と音の特徴の関係を明らかにすることに取り組んでいます。経験豊富な設計者や製作者のノウハウだけでなく、各種の計測技術や数値解析技術を応用することで、ギターの音響特性や振動特性を視覚的に表現したり、特定の設計要素の音への影響を予測したりすることができます。

1. 音響・振動特性の計測

ヤマハで保有する高度な振動・音響の計測技術を用いてギターの物理特性を詳細に分析し、製品開発に活かしています。

音放射特性とボディ振動の測定

2. シミュレーション

我々はギターを設計するための独自の振動・音響シミュレーション技術を開発しました。この技術によって、実際にギターを作る前にシミュレーションモデル上で仮想的にギターの振動・音響面の検討を行うことができるようになりました。

シミュレーション技術を活用することで、ギターの音に影響を与える物理現象を理解したり、優れたギターの特性を明らかにしたりすることができます。それらの知見を踏まえて試作や評価を繰り返しながら、最終的な製品仕様を決定します。シミュレーション技術によって、試行錯誤による検討よりも効率的な製品開発が可能になりますが、最終的な良い音を判断するのは人であることに変わりはありません。

3. 製品開発

こうした計測技術とシミュレーション技術を用いて、多くのヤマハアコースティックギター製品が開発されてきました。新たに開発されたブレイシング形状により、これまでに比べて低音域の音量がより力強く、中音域の倍音が豊かになっていることがわかります。

ブレイシングの検討

関連項目

技術搭載製品

論文

Numerical simulation of the acoustic guitar for virtual prototyping
Henna Tahvanainen, Hideto Matsuda, Ryo Shinoda
Proceedings of ISMA 2019, International Symposium of Musical Acoustics, pp. 393-399
International Conference
シミュレーション・計測
2019
アコースティックギターの振動・音響特性と数値解析
篠田亮, 松田秀人
音楽音響研究会資料 32(3), pp. 73-77
Domestic Conference
シミュレーション・計測
2013