森林資源のサステナビリティ実現に向け、研究テーマの深耕と領域を拡大

ヤマハと京都大学が包括的研究連携協定を更新

ヤマハ株式会社(本社:静岡県浜松市中区、代表執行役社長:中田卓也)と国立大学法人京都大学(所在地:京都市左京区吉田本町、総長:湊 長博)は、森林資源のサステナビリティ実現に向けて2018年に締結した包括的研究連携協定をこのたび更新しました。期間は、2021年10月1日から2027年9月30日までの6年間で、過去3年間に構築した両者の連携基盤を最大限に活用し、既存の研究テーマの深耕と研究領域を拡大に取り組んでまいります。

研究連携協定の締結は、「森林資源の持続可能性」を追求するためのもので、主に楽器の材料として使用される希少木材の利用効率向上、有効資源量の把握、体系的森林育成技術の構築、雇用創出までを視野に入れた地域コミュニティーと連携した循環型のエコシステムの実現などに対して学術的にアプローチします。

楽器製造で長年培った木材に関する技術・知見を持つヤマハと、森林科学分野での先端研究を進めており豊富な研究資源を持つ京都大学が連携することで、地球規模の共通課題である持続可能な森林資源の実現に向けて基礎的研究を促進し、研究成果を積極的に公表することで社会にその成果を還元・貢献していくことを狙いとしています。

  1. 研究テーマの創出と研究の実施
  2. 連携推進協議会の設置、運営
  3. 研究者と技術者の相互交流の推進
  4. 双方の研究開発資源の積極的活用
  5. 研究成果の応用、積極的発表の推進

2018年から2021年までのフェーズ1では、タンザニアのアフリカン・ブラックウッド※1について、原産地域における立地環境と成長、賦存資源の有効活用に係る基礎研究を進めました。クラリネット等木管楽器の管体に使われる同種の木材は、楽器に適する特性を持ち、森林の賦存資源の有効活用と将来に向けた森林育成を同時に実現し、地域社会と調和したビジネスモデルを構築していく必要があります。現地調査により、同種が極めて多様な環境条件に適応して生育し、外的環境に関わらず木材性能は変わらない可能性があり、人工植栽により楽器に適する良質材育成が可能であることを示しました。また、同種は樹木成長過程における成分生成、沈着によって、虫害や腐朽等生物劣化への極めて高い抵抗性、高圧高熱環境下における特殊な物理挙動を示すことが示唆されました。

タンザニアでの現地調査の様子

フェーズ1にて得られた知見を活かし、フェーズ2ではさらに高度な研究への展開、そして対象とする樹種の拡大を予定しています。現在、タンザニアでは現地NGOと協業して、約4.5 ha、延べ7400本のアフリカン・ブラックウッドの植栽試験を継続しています。更なる基礎研究と実地試験により、地域コミュニティーにおける良質材の育成体系を確立し、地域林業の一部として社会実装、効果検証を進めていきます。また、タンザニアだけでなく、北海道のアカエゾマツ、インドの黒檀、中米のローズウッド等、国内外の様々な地域で楽器用材料が生まれ、流通しています。このような楽器に必要不可欠な木材資源に対して、原産地域における成長、森林生態系との関連、遺伝子多様性といった森林科学観点でのアプローチ、さらに現地の地域産業との調和的発展を目指した社会経済的アプローチなど、森林資源のサステナビリティ実現に向けて多角的視野での研究活動を本協定下にて進めてまいります。

本連携は、持続可能な森林資源の利活用という地球規模の課題に対して、大学と企業それぞれの知見を活かした多角的な研究を進めていくものです。これまでの3年間の連携の中で、当研究所としては希少森林資源の効率的利活用という観点で木質材料の有効利用の共同研究に携わっています。今回の更新により、一層連携を深め、多分野が集結した当研究所の強みを生かし、より高度な研究および成果の社会実装に向けて共に手を取りあって切磋琢磨していきたいと考えます。

このたびの連携更新により、ヤマハではこれまでの3年間の連携期間の実績を基盤として、更に高度な先端研究、ならびに広いフィールドでの研究を計画されています。農学研究科としては本連携の中で、楽器に使用する多様な樹木種が、原産国の地域社会の中で持続的に生産される社会―自然生態系システムの構築に貢献していきたいと考えており、多様な基礎知識を必要とする農学らしいアプローチで、森林と社会全体の発展に資する研究を進めたいと考えます。

当社の楽器づくりにおいて、木材は必要不可欠な材料の一つです。当社グループでは、サステナビリティを根幹に据えた経営を目指しており、木材においては原産地域の社会と一体となった良質な楽器材の育成を進める活動を展開しております。京都大学との協定は、木材と楽器を切り口とした森林資源のサステナビリティ実現への取り組みの一つとして非常に重要なものと考えており、このたびの協定更新により、今後、研究の深化やフィールドの拡大など、両者が連携して取り組む活動をさらに深めてまいります。

ヤマハグループでは、「ヤマハグループ木材調達方針」を定め「ヤマハサプライヤーCSR行動基準」でも木材資源の伐採および取引に際して調達先に順守を要請する事項を明確にし、違法伐採された木材の調達を防ぐための厳格なリスク評価を行っています。地域コミュニティーの発展にも配慮した社会・経済面でも持続可能な森林から産出されるFSC※2などの認証木材の積極的採用、および利用拡大を進めています。特に「タンザニア森林保全プロジェクト」では、地域住民や現地NGOと協力して循環型の森林保全モデルの構築、社会実装に取り組んでいます。効率的な森林育成と資源生産を支援し、流通までをサポートすることで乱伐を防ぎ、安定的な森林保全エコシステムを地域社会に構築することで雇用創出等生活向上の実現までを狙いとしています。

「タンザニア森林保全プロジェクト」の様子
左:現地での生態調査の様子 中:アフリカン・ブラックウッドの苗 右:地域農村に設置した育苗施設
  • ※1 アフリカン・ブラックウッド:東アフリカ地域のタンザニアやモザンビークを主な産地とするマメ科の樹木で、木製のクラリネット、オーボエのほぼすべてはこの樹木を材料としています。成長形質が整い難く、製材歩留まりが約9%程度と低く、近年、その持続性が懸念されています。
  • ※2 FSC認証林:第三者機関による持続可能な森林経営のためのモニタリングが実施されることから、この認証を取得していることが森林経営の持続性を保証していると考えられます。
  • ※このニュースリリースに掲載されている製品情報や問い合わせ先などは、発表日現在の情報です。
    発表日以降に変更される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

最新のニュースリリースはこちらのページをご覧ください。