新聞記事
<大衆音楽月評>大震災チャリティー 今年は絶対=専門編集委員・川崎浩
コロナ禍で、大切な活動や行事を行えなかった例が山のようにある。楽しい催し物が開催されなかった程度なら我慢のしようもあるが、中には「忘れてはならない記憶」を呼び起こすための重要なイベントもある。昨年開催されなかった「全音楽界による音楽会 3・11チャリティコンサート」もその一つ。東日本大震災による孤児・遺児たちを応援するチャリティーコンサートだが、昨年は中止を選択せざるを得なかった。だが、震災から10年の今年は絶対に開催すると関係者は奔走している。
「音楽会」は、クラシック、ポピュラーの壁を越え、趣旨に賛同する音楽家が集結する。観客は、入場料がない代わりに最低1万円の寄付を行う。出演者もノーギャラのうえ寄付を行う。また、会場になっている東京・赤坂のサントリーホールも貸出料を無料にしている。集まった寄付金は全額、公益社団法人「3・11震災孤児遺児文化・スポーツ支援機構」(通称、3・11塾)に託され、200人を超える子供たちの支援に使われる。第1回は震災直後の2011年4月20日に開催。2回目は13年3月11日に実施し、以降、この日に定着した。17年はサントリーホールの改修のため、そして20年はコロナ禍のため休催。今年の3月11日で8回目を数える。フルオーケストラに20組以上の歌手や演奏家が出演する最大級の大震災チャリティーコンサートとして10年も継続しているのだ。
「テレビのニュースに映る親を亡くした子供たちを見て、この子たちを助けなくてどうすると居ても立ってもいられなくなったのがきっかけだね」と思い出すのは発起人の一人、作曲家の三枝成彰。友人のデザイナー、コシノジュンコ、照明デザイナーの石井幹子らから「音楽界はどうするの?」と行動を促す後押しももらい、作詞家の湯川れい子に相談。2人でコンサートのおおまかなスタイルを決め、クラシックとポピュラーの音楽家に出演を求めた。
「第1回は40組以上出演してくれた。ただ、お金が集まっても、渡す先が見つからなかった。作家の林真理子さんらと相談して『3・11塾』を設立し、具体的な支援活動を行うことにした」と三枝は運営の苦労を語る。「子供たちに一番必要なのは教育の機会なのだという。『塾』では、支援する子供たちを塾生と呼び、学習塾や家庭教師を手配したり、音楽レッスンをしたりする。もう社会人になった子もいる」と一定の成果を感じているものの「まだまだ、足りないわけですよ。僕らは20年は続けなきゃいけないと思っている。僕らは親にはなれないけど、親戚のおじさんおばさんになろう、と話しているんです」と、10年後を見つめる。
今年も豪華な出演者が名乗りを上げている。指揮は大友直人と渡辺俊幸。クラシック界からはピアノの横山幸雄やバイオリンの注目株、服部百音、吉村妃鞠ら。演歌界から五木ひろし、氷川きよし、島津亜矢ら。ポップス界からは森山良子、川島ケイジ、クミコ、平原綾香、ミッキー吉野らそうそうたる顔ぶれがそろう。司会は露木茂と永井美奈子。入場は無料だが、全席指定で予約が必要。公式サイトのほか、チケットぴあやサントリーホールでも対応する。
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