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読売新聞│配信日:2020年9月28日│配信テーマ:クラシック  Jポップ  その他  

愛する音楽 詰め込んだ 葉加瀬太郎 デビュー30周年


 ◎ええやん! かんさい
 ■FRI エンターテインメント
 
 ◆公演中止で「気合の新作」 
 バイオリニスト、葉加瀬太郎は今年、デビュー30周年。数年前から計画したオーケストラ公演を春から、夏場にはジャズクラブでの公演を……と意気込んでいたが、コロナ禍ですべて白紙に。でも、転んでもただでは起きない。予定外のオリジナルのフルアルバムの制作に急きょ着手し、完成させた。(清川仁)
 新作のタイトルは「FRONTIERS」(ハッツ)。収録された12曲の大半は4月から作・編曲に取り組み、7月にレコーディングした。「春のツアーができないと判断した時点で、ならば皆さんを元気づける曲を作ろうと思った。『ステイホーム』期間中、家から一歩も出ずに作曲に集中。ユーチューブで配信をする仲間たちもいたけど、そうした誘いも全部断った。気合に満ちた新作を形にするためです」
 音楽を巡る状況は好転しないが、アルバムは節目にふさわしい豪華さ。葉加瀬の人生や愛好する音楽からの影響が詰まった一作となった。
 1980〜90年代の英国のポップやロックの雰囲気やフレーズが、随所に顔をのぞかせる。外出自粛期間に学生時代に集めたCDを整理し、改めて聴き返したからという。いわゆる「打ち込み」を多用したサウンドは、葉加瀬が東京芸大在学中にそのメンバーとしてデビューしたグループ、クライズラー&カンパニーのサウンドも思い起こさせる。「プログラミングではギターの田中義人に助けられた。週1回、自宅へ呼んで打ち合わせを重ねた」と、長年頼りにしているバンドメンバーに感謝。ドラムスの山木秀夫ら多忙な名手も参加。「トッププレーヤーもコロナだから暇なんだよ」と複雑な表情を浮かべる。
 もちろん、クラシックの味付けも。ファンク調の「Victoria〜勝利の女神」のコード進行はヘンデル的といい、癒やしの響きに満ちた「レクイエム」には「イタリアンバロックの要素を入れた」。3歳から思春期まで暮らした大阪府吹田市の市制80周年記念曲を依頼され、書き下ろした「Home Suita Home」は、だんじりのお囃子(はやし)風の音楽もバイオリンで奏でた。意外性に富むエレクトロニック・ダンス・ミュージック(EDM)調の曲は「いつもEDMを爆音で聴いている」という長男からの影響だ。
 恒例の秋から冬にかけての全国ツアーは客席数を減らして決行する。「今年の開催を見送るアーティストが多い中、すごく悩みました。スタッフやバンドとのチームが一体となって力を発揮できるのがコンサート。その力を蓄えるために今は頑張りたい。僕自身にはギャラが入らないけれどね」
 全国40公演以上を予定。関西では、大阪市北区のフェスティバルホール(21〜23日、10月14、15日。(電)0570・200・888)などで。

読売新聞2020年9月18日読売新聞記事(1版)掲載 執筆記者:清川仁

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